第6話 かまちょな彼女とレビュー

 俺はライトノベル作家だ。

 別に売れっ子とかじゃない。

 しかし好きなことをやってそれなりに生活出来ているので別にいい、と前に紹介したはずだ。

 なぜそんな俺のパーソナルデータを繰り返したかと言うと、俺の書いた新刊が発売されて数日が経ったからだ。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 俺は目の前の光景に堪らず悲鳴をあげてしまう。

 その理由はというと、

「ア○ゾンレビューに☆1の評価が付いてるうううううううううううううううううう」

 こういうことだ。

 そう、俺は今、新刊の評価が気になりまくってネットを徘徊しまくっているのだ!

 売れっ子ではないが現状に満足している、と俺が言ったな。

 あれは嘘だ!

 俺だって売れたい!

 アニメ化されたい!

 自分の生んだキャラがヌルヌル動くところを見てみたい!

 実写化はまあ……いいや。

 と、達観した態度を取っていたものの本当は煩悩まみれだった。

「くっ……。こいつどんなコメント付けてやがるんだ……」

“詳細”を連打。

「なになに“異世界ファンタジーもの読みたかったのにラブコメでした。がっかりです。”だとぉ!? ちょ、おま、それって俺のせいじゃないだろ! タイトルもあらすじも表紙も内容もまったく異世界要素ないよ!?」

 今度は“参考にならない”を高速連打する。

「ち、ちくしょう……こんなんで評価が下がるとか理不尽すぎるだろうがっ。スーパーの激安弁当のご飯だって無から生まれるわけじゃない。その背景には精魂込めて米を作る農家さんがいるんだっ。ものを作るのは大変なことなんだぞ。少しでも思いやる気持ちがあれば軽々に低評価を付けれないはずだっ。これが人間のやることかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 本日、二回目の絶叫だ。

「シゲくん。どーどー」

 そんな俺を見かねたのか、後ろで漫画を読んでいた千寿がなだめてくる。

 そして、無言で正座に直って手招きしてくる。

 俺は亡者のようにふらふらと近づき、彼女の太ももに頭を預ける。

 いわゆるひとつの膝枕というやつだ。

 ひと回りも年下の少女に慰められる大人の図。

 この日、俺はもう考えるのをやめた。

 結論、ア○ゾンのレビューでは☆5を付けよう。

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