第3話 かまちょな彼女とホラーゲーム

「……ただいま」

 この日もいつも通りの時間に千寿が俺の家へとやってくる。

「おー。お帰り」

「いたんだ。なんで部屋の電気付けてないの?」

「雰囲気作り。ホラーゲーやってるからさ」

 そう、俺は今、最近ネットで超絶怖いと阿鼻叫喚を呼んでいる話題の新作をプレイ中なのだ。

 なるほど、たしかにこれは怖い。

 夜におトイレいけなくなったらどうしよ……。

「ホラー……」

 テレビの青白い光に照らされた千寿が一瞬だけ眉をひそめた。

「なんだ? 苦手なのか?」

 へぇ、意外だな。

 千寿にも苦手なものがあるとはね。

 俺がまじまじと千寿の顔を眺めていると、居心地悪そうにそっぽを向いてしまう。

「別に怖いのなんて平気」

 千寿はぷくっと頬を膨らませて続ける。

「ただ、見ると鳥肌立ったり、夜思い出して眠れなくなっちゃったり、お金まで出して怖い思いをしたい人たちの気持ちが理解できないだけ」

「人はそれを苦手と言うのだぞ」

「ホントに平気。続けてもいいってば」

 彼女がベッドから掛け布団を引ったくり、近づいてくる。

 そして、それをおもむろに頭から被り、俺に背中を預けながらちょこんと体育座りをする。

「ゲーム止めたら肩トントンってして」

 そう告げてから両手で耳を塞いだ。

防護完了。

 やっぱり苦手じゃないですか、千寿さんよ。

 と言うか、ずっとそうしてるつもりか?

 それならこの部屋にいないほうがいいんじゃ……。

 まあいいけど。

「やれやれ……」

 俺は肩を竦めてから、ゲームの電源を落とす。

 今度からホラーゲームは千寿のいないところでやるようにしよう。

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