コント メンバー募集

ジャンボ尾崎手配犯

第1話

舞台の真ん中に置いてあるテーブルと二つの椅子。

椅子の一つに太田が座っている。

時計を見る太田。

上手より長髪で全身黒づくめの三島が入ってくる。

周りを見渡す三島。

太田と目が合う三島。

太田「あのー、もしかしてメンバー募集で来た三島さんですか?」

三島「あんたが、リーダーの太田?」

太田「ええ、まあそうですけど……」

椅子に座る三島

三島「悪いな、遅れて。道がちょっと混んでて」

太田「え、どっから来たんですか?」

三島「島根」

太田「え、島根から来たんですか? 東京とかじゃないんですか?」

三島「この日のために上京してきた」

太田「本当ですか。いや、それはどうも……」

三島「それだけ本気なんだ、俺は。命をかけてるといっても過言ではない」

太田「(小声で)なんか面倒くさいの来ちゃったなー。あの失礼ですけど、今回ジャズバンドのギター募集ということだったんですけど、三島さん、恰好を見る限りではあまりジャズっぽくないというか、どちらかというとメタル系というか……」

三島「お前は着ている服で人を判断するのか」

太田「あ、すいません。あの、じゃあ、ジャズはどれぐらい……」

三島「二年間聞いている」

太田「聞いてる。弾いてるじゃなくて、聞いてる」

三島「弾くことはできない。俺はメタル専門だからな」

太田「やっぱメタルじゃないですか! つーか、弾けないのに応募したんですか?」

三島「いけないか?」

太田「いや、それはさすがにダメでしょ」

三島「だが、ちょっと待て。よく考えろ、紅白を目指すにはジャズじゃ無理がないか?」

太田「ジャズやってる人で紅白目指してる人、そんなにいないと思いますけどね」

三島「だからここはメタルで紅白を目指す」

太田「うーん、メタルで紅白出た人もそんなにいないんじゃないですかね?」

三島「聖飢魔IIが89年に出場している」

太田「聖飢魔IIを目指すんですか!?」

三島「いけないか?」

太田「いや、もうジャズの要素ゼロじゃないですか」

三島「わかった。じゃあ、間をとってジャズ・メタルをやろう」

太田「それで紅白ですか?」

三島「そうだ」

太田「というか、僕らのバンド、ヴォーカルがいないですからね。ドラム、ベース、サックスで、普通のインストバンドですから、歌物はちょっとできないですよ」

三島「それも新しく入れよう」

太田「入れようって、つーか、なんかもうメンバーっぽい感じになってますけど、まだ加入を認めたわけではないですよ」

三島「それは俺が決めることだ。お前は黙ってろ」

太田「な、なんなんですか、あんたは」

三島「もういい、解散だ! 俺は脱退する!」

太田「脱退って、まずあなた加入してないですよ、まだ」

三島「音楽性の違いだな」

太田「どちらかというと人間性の問題ですけどね」

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