DIE5話 閻魔邂逅(カイコウ)

 暗闇くらやみの診察室にいたのは、能面のうめんを被った看護婦さんらしき人と誰のモノかも分からないレントゲン写真図を前に背を向けままの白衣を着る大柄な医者だった。すると、図面前の医者がレントゲンを眺めながら、ドスの利いた渋い声で自分に話し掛けてきた。

「どうするかのう?カミシノユウスケ君。このままじゃと、お主は、三途川辺にある賽の河原を通り越して、そのまま、げん地獄にまっしぐらじゃよ」

「オレって、死んだんですか?」

「そうじゃよ。それなら、試しに死亡宣告書でも見るかのお?」

「はい‥」

「レイナ君、これを彼に渡してくれ」

「分カリマシタ、医院長。」

 すると突然、レントゲン横につるされていた尺のようなモノが独りでに動き出し、どこからともなく、勝手に現れた紙を上に乗っけて、能面を被っている看護婦さんへ渡した。

「ちなみにレイナ君は、ワシの尺じゃなくて、そこで能面を被っとろう看護婦の戒名じゃよ」

「ドウゾ」

 そう言うと、能面を被ったレイナと呼ばれる看護婦さんが、自分に一枚の紙を手渡してきた。

「これが死亡宣告書?」

「そうじゃよ」

 その死亡宣告書には、生年月日と死年月日が書かれており、その横に自分の名前と享受きょうじゅが書かれている。一通り目を通した後、次に書かれていた死因名に驚愕きょうがくした。


"死因インガオウホウ"


「死因がイン応報オウホウって、どういうことですか?」

「因果は応報じゃよ」

「意味が分からないんですがそれは‥」

「そこでワシからの提案じゃが、ワシのガキとなるがよい」

 

 その医師は、自分の方に身体ごと振り向いた。その瞬間、白衣がふく姿に変わり、薄暗い部屋も明るくなった。振り向いたその顔は、まさしく伝聞でんぶん通りの閻魔大王様だった。


「後継者よ。ようこそ、ワシのしもべじょうえん殿てんへ」

 

 自分は驚きのあまり、室内の窓から外を眺めた。

 おうが時、目の前にある夕刻ゆうこくの丘には、えん天楼テンロウがそびえ立っている。

「これが本当の地獄…」

 そこには、正夢や悪夢とも似つかぬ、壮大な光景が広がっていた。

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