DIE3話 親知らず

 俺は、元人間ヒトだった。それぐらいは、俺自身でも分かっている。当然、その理由も…。社会が不条理で出来ていると知ったのは、物心がついた頃からだった。

 俺の家族は、経済的にも家庭的にもたんしていた。我が家という言葉もマボロシのように尽き果てていた。毎日のように繰り返される両親の喧騒けんそうと幼少の自分自身に対する非人道的な虐待。誰も俺を守ってくれなかった。それは、そうだろう。守ってくれるはずの親が、その元凶なのだから。この頃の俺は、世界中や日本中の家庭内でも、それが当たり前だと錯覚さっかくしていた。

 それから月日は流れ、小学校にも行けずに約10歳になった。なぜ約かというと、俺は自分自身の誕生日を知らなかったからだ。そんなある日、転機は突然としておとずれる。

 久しぶりに両親が二人そろって外出する事になった。二人揃ってとは言っても、時間はバラバラだった。そして俺は、二人が外出している合間に人生で初めてテレビを点けて観た。テレビのリモコンの使い方に手こずるも、"観たい"という一心で、何とか操作した。そして、人生で初めて観た番組は、過去の映画の再放送だった。その内容は、とある理髪店の理髪師が常連客をあやめるというものだった。そして、俺は映画の劇中で、ある決心をした。

 その日の夜、酔っ払って酔いつぶれた両親を劇中と同じ手段で殺害した。当時の俺は、110番すら知らず、一夜明けて、家庭の様子を定期的にに来ていた児相職員の通報により事件は発覚。世の中に事件が明るみになると共に俺は、生き地獄から解放された。そして俺は、警察に拘束され逮捕された。刑事裁判になるも、少年法と事件背景から情状酌量ジョウジョウシャクリョウの余地になり、地裁一審で家裁に逆送となった。判決の結果、被告が成人するまでの十年間は、少年院での措置拘留と社会更生になった。

 しかし、急激な環境の変化のためか、原因不明の病気を発症。下級少年院から児童医療施設へ移った矢先に息を引き取る。カミシノ ユウスケ、キョウジュ10歳。これが俺の人間としての生き様だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る