DIE1話 救済者

 あれから数分がち、私は、静寂に包まれた歩道橋上から辺りを見渡す。すると、さっきまで、私を襲っていた暴漢は、忽然こつぜんと姿を消していた。対岸にきらめき立つ無数の工場夜景を眺めていた黒い礼服姿の少年に私は問いかけた。

「あの暴漢は、どうなったの?」

嗚呼ああ、あの暴漢は地獄にちたよ』

「えっ。今、なんて?」

『だからさぁ、地獄に堕ちたって言ったじゃん。』

「そうだよ地獄に??」

『そうだよ』

 私は、悪夢でも見ているのだろうか?そもそも、あの暴漢に出くわしたことや黒い礼服姿の少年に助けられたことも、全て夢ではないか。きっと、悪い夢でも見ているんだ。私は、そう思った。

『ちなみに夢ではないよ。これは、現実だよ』

 唐突とうとつにその夢も、くだかれる。

「あなたは一体、何者なの?」

 私は、問いかけるしかなかった。

『うーん…そうだなあ。しいて言うなら、救済者ってところかな』

 その少年の言葉に私は、本当に助けられたんだと自覚した。

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