閻魔の餓鬼

新庄直行

DIE0話 生き地獄

 私がアルバイトの帰り道に浜寺交差点の歩道橋上で暴漢に襲われるなんて、数分前の自分は、全く思っていないだろう。いや、信じたくもないだろうな…。無抵抗のまま、はだけた制服を貪られながら、私は、現実逃避をするように思った。このまま、私の初めても、この暴漢によって奪われてしまうのだろうか?私の人生は一体、何だったんだろう…。そう、自問自答を繰り返している時だった。

『オイ、そこのオッサン。』

 こっち側に誰かが話し掛けているように聞こえる。

『聞いてんのか、オッサン。お前だよ、お前!』

 私を貪る暴漢が後ろを振り向いた次の瞬間、その暴漢は、勢いよく遠くの方へと吹き飛ばされた。自分の身体も、一瞬くらっとしたけれど、なにが何だか分からなかった。私は、状況が飲み込めずに無言のままだった。

『そこの君は、大丈夫かい?』

「…」

 宵闇の月明かりが雲のはざから照らし出される中、暗闇から現れたのは、黒い礼服を着た少年だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る