X.アーサー王の想区内事情
想区と呼ばれる物語世界――人は皆、『運命の書』に沿う人生を送り死を迎える。
誰かに命じられた訳でないが、抗う気持ちと反抗心が芽生えないのはなぜだろう。
基本、戦闘以外に興味ない自分が伝える話でもないが何かに操作されているのか。
自身の考えで、思いのままに動いてると意識していたが全部違うのかもしれんな。
想区を含めた世界の謎、それを解明しようと考える人間など果たしているのか?
以前から、誰かに操られ人生自体を動かされている不可解な感情に囚われていた。
全て妄想かもしれないし、逆に現実なのかもしれない。己の剣技について不満など存在するはずもなく魔法に頼らずに、ストイックな鍛錬と訓練に励んだおかげなのか
世界最強で在るための努力は現在も続けている。別に不満があった訳ではないのだが配下の騎士と現在の妻が秘密の関係になろうが、老魔術師が不義の子を立てて反逆を企もうが好きにすれば良いと考え見て見ぬ振りをしていた。自ら寿命なのか終わりが近いと気づいた日、あらゆる現実が煩わしく疎ましくどうにでもなれと考えていた。
後は目指した集大成――鍛えた剣技を受け継ぐ存在――魂が合致する若者に全てを継承して潔くキャメロット城に巣食う蛆虫どもを道連れにして果てるだけが望みだ。
このまま何も行動と準備もせず流れに身を任せ果てるぐらいなら、自らで後継者を探す行為なら『運命の書』に逆らって未来を選択する意味で許されるはずと考えた。
本来、使えないはずの魔法を自身のため知識のために使おうと考えたのが最初だ。
普通なら考えるはずがない行動を選択した結果だろうか、遭いまみえるはずがない『運命の書』を持たずに生まれた『空白の書』を持つ無垢な少年の存在を掴めた――少年の未来予測があまりにも波乱に満ちて――年齢に似あわず興奮したのは秘密だ。
何とか、少年と直接的な面識を持ち内面を確認した後――剣技継承すると決めた。
少年の未来を切り拓く――そのためだけに「アーサー王」想区、キャメロット城とその全体を犠牲にしても構わないだろうとまで考えた理由は一体なぜなんだろうか。
少年と出会いを演出、剣技を全て継承して覚醒させる計画を密かに練りはじめる。
企みが巧く進行して望んだ未来が導けるのか、
考えるだけで興奮しないか? 自分が可能性を見出した人間に、全てを継承する。
自らの血を分けた子供など、所詮は別の考え方を持つ生物で本来無関係な存在だ。
それよりも自身で見て判断した結果、未来を託すに相応しいと考えた若者に全てを継承して次代に繋げる行動。これほど素晴らしい代替行為、あり得ないはずだろう。
少年は、占いと予知で確認する限りは無垢で無知で可能性に溢れた存在だった。
可能ならば、同行して傍から導く
可能性が高い未来軸を見出し、確率を上げる行動で可能性は無限に拡がるはずだ。
純粋無垢で無知な若者は、ほとんど全てが可能性で溢れた存在であるのは確かだ。
少年は三人の仲間と、カオステラー化した想区をストーリーテラー状態に戻すため沈黙の霧を跨いで想区を巡る旅の途中のはずだ。すでに隣接する想区に到着している状況なら数日後には現れるだろうが、巧く少年だけを自然な形で先行させるため何か作為が必要かもしれないな。同行する『調律の巫女』彼女を体調不良にさせるため、ウイルス感染性の小動物か昆虫でも周囲に放つため手を回すのが確実かもしれんな。
悪化させる訳でなく、半日か数時間だけ少年を独断先行させるためだ申し訳ない。
後は、カオステラー化した連中を巧く誘導し少年の正義感を刺激すれば大丈夫か。
少年に受けた恩を返す形を表面上だけ演出すれば、特に問題もなく全て予定通り。
少年が
どの程度、時間が必要になるのか想像もつかないが最低数時間、通常は半日程度で十年から数十年分の集中訓練だろうか。
別に天才でなくて良い。平凡で、普通の若者が飛躍する瞬間を目にしたい気分だ。
何も知らなければ世の中そこそこは楽しめるが、知ってしまうだけでつまらない。
どうせ、天才なんて導く人間の存在だとか、ひたすら耐えるストイックさ次第だ。
少年は、死ぬほどの目に遭うだろうが、怪我も魔法で完治する。全てやる気次第。
諦めなければ大抵の問題は、時間さえあれば何とかなるはずだからな。もちろん
最善の努力と、何があっても継続する忍耐力だけ必要だが資質では問題ないだろう。
これほどまでに新たな出会いを待ち望む日々は、一体いつ以来になるのだろうか。
たまたま誰かに導かれた訳でもないが、若者を導く行動はいつも楽しいものだな。
さて、馬鹿な連中が俺を追い出そうと画策してやがるが後は仕上げを
全ての準備は、完璧なはずだ。ただ結果は、神様だけが知っている事情なんだが。
ふむ。どうやら、巫女は体調を崩して遅れているようだ。少年が沈黙の霧に――
グリムノーツ奇譚『アーサー王』~伝説を受け継いだ少年 神無月ナナメ @ucchii107
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