ゴブリンの少数部隊

歩き始めて10分だろうか。

まるで先が見えない。


歩いても歩いても更地。

何も変わらない景色。

…もう帰りたい。


復讐するって言ったけど、やっぱ帰りてぇ。


あっゴブリン発見。


背を低くして、背後に回る。

剣を構えて…


「チェストォォォ!!」

「ケケっ!?」


至近距離からぶった斬る。


このゴブリンの持ち物…ボスと同じ装飾だ。

近くにあるのか…?


地図によると着いてるのに…あれ?

この地図…


「オモチャじゃねーかぁぁぁ!!」


叫んでしまった。

酔っ払いから貰ったのが間違いか…!


「ケケ?」

「ちょっ」


叫んだら、ゴブリンの大群が。


「多いな…」


ざっと50。多いわ。


「もう知らない! こいやぁぁ!!

「ケケケー!」

「いや、なんか喋れよ…」

「お前ら、コイツを血祭りにしてやるゴブよ」

「喋るのかよぉぉ!!」


地味にイケボとかパネェ。


しかし、喋れるわけで指揮も神がかり。


「お前達は背後に!オレは正面から牽制するゴブ!」


「一撃だよ!」


背後から飛びかかるゴブリンを一撃でテイクダウンしていく。


「こんなスキルまで使えるんだからなぁ…『焱の加護ファイアシフト』!」

「剣先から炎が…!? 危ない!岩とかに隠れろ!」


隊長はわかってるみたいだな、この加護(シフト)の恐ろしさを。


「『神速エアロビート神のグミ撃ち』!」

「お前ら…マジで隠れてるよな…?」


音速の斬撃から出されていくのは炎の刃。

1秒に10くらい出てる感じだ…。


「収まった!今だぞ!」

「ケケー!」

「指揮官め…」


また10匹ずつ波状攻撃してくる。いい指揮官だ。


「そんな攻撃、効かないぞ…?」

「離れろ!これはマズイ!」


「『精霊の暴走エレメントブレイカー』!」


瞬く間に四属性混合した大爆発が起こる。


「だから避難しろと言ったんだ…! 全滅かよ…」

「ケケェ…」

「こら、隠れていたのは良いが、参加はするな息子よ!」

「ケケ…ケケケ!!」


あたしの身長の4分の1くらいのゴブリンが走って、

槍で突き刺してきた。


「なんなんだ…?」

「ケケ…ぇ…」


子供ゴブリンを掴む。


「おい!やめてくれ!それは…オレの…オレの…」

「なんだ?」

「息子なんだ…そいつだけは見逃してやってくれ…」

「ふむ…」


片手でゴブリンの持ってる小さい槍を折る。危ないからね。


「コイツは殺さないし、くれてやる。代わりに」

「代わりに…?」

仲間友達になれ」


ゴブリンから考えたらありえないことだった。

人間から何度も略奪していた。心と命と物を。

なのに、そんな目の敵にされてる敵から友達などと…。


「仲間…?友達…?」

「なれないなら、仕方ないな…」

「まて!」

「ん?」

「わかった、仲間になるから…息子を返してくれ…」

「どうぞ」


息子をぶん投げる。


「ありがとう…しかし、何をすればいいんだ?」

「ゴブリンの組織を消す」

「なんだって!? オレは手伝えないぞ…?」

「そんなのわかってる」

「じゃあ何すれば…?」


「これからする事には一切手を出すな、ゴブリンを敵に回したくなかったらな…」

「もちろんだ」

「息子も妻に渡しとけ」

「妻は殺すなよ…?」


「そうならないようにしとけ」


「あたしは朝霧カラス、あんたは?」

「グラディだ、息子はゼウだ」

「そうか、ゼウよろしくな」


グラディは不思議と人間に対しての違和感は無かった。

それは必然とも言える。


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