勇者との出会いと別れ

モンスターを切り刻む男

…うなだれても仕方がない。

地上に出るか…実は、ポケットにピストル仕込んでたんだよな。


とりあえず、構えてエレベーターに向かう。


なんで、こんなに体がだるいのか…。

まさか…数時間の眠りではない…?

とか考えていると、エレベーターの前に来た。


ここか…このボタンを押してみよ…。


「緊急バッテリー作動しました。エレベーターに乗ってください…」


よし乗るかーー


「ウォォォォ!!!!」


なんだ!?糞が…!


エレベーターが空いた直後、変なモンスター的なやつが

降ってきた。


「人間よぉ…!!」

「なんだ?」

「お前は…弱い! そして…今ここで」

「……」

「死ぬというわけだ!!」

「糞がぁ!!」


なんだよ、こんな体長2mくらいあるモンスターが何故ここに…!


今すぐ、この銃で倒さなければ…!

標準アイアンサイトを敵に合わせて、引き金を引く。


「なに!?」

「どうした人間よ!!」


なぜだ…銃が…撃てない!!


「フハハハ!死ねばいいのだ!」


クソでかい手からパンチが振りかかる。


「いたっ…い」


あぁ、吹き飛ばされた衝撃で気絶しそうになる。

死ぬのか…な…。


「まだ生きていたか!! これで止めというわけだな!」


今、あたしは死んだ…。

…あれ?生きてるわ。なんでだろ。


「なんだこいつぁ…人間の癖に! 死ねよぉ!」

「…止まって見える」


ん?戦士か?

途端に男はこのデカイモンスターを剣で切り刻む。


「痛い…痛いぞぉ!! この感じを待っていたぞ!」

「早く消えろ…幻の剣技ファントムダンス!」


なんなんだ、これは…。男は残像が出てしまうほど早く切りさばいていく。

モンスターからは血が吹き出ているようなものだ。


「くそ…オレが…オレが死ぬだとぅ!!」

「そうだ、死ぬんだ、わかったか?

…でもな、オレは……死ねないんだよ」


哀しそうに呟くと倒れているモンスターに男は剣を突き刺して止めを刺した。


「…大丈夫か?」

「うん、とりあえず」

「そうか…今ここは核の脅威に晒されている、早めに街に行ったほうがいいぞ」

「すいません、街までお願いします」

「わかった、それとその銃は使い物にならない、捨てておけ」

「なんでわかるの?」


「弾がもう使い物にならないからだ」

「…数時間程度しか寝ていないのに…!!」

「おい、何を言っている?」

「へ?」

「このシェルターは2023年に作られたんだぞ?今は2083年だ」

「凄い時間が違うんですけど」

「…こんなところで寝るヤツなんて聞いたことがない…」


「だが、一つだけ聞いたことがある」

「なにそれ気になる」

「…ここで人間が冷凍されていたらしいな」


なんだって?冷凍…

あの時、冷凍シーケンスと言っていた…!


「あたし、冷凍されてた…それで、多くの同じシェルターの人は凍死したけど、あたしだけ何故か出れた」

「ふむ…? だが見た目も変わっていないし、寝ている人なんているわけがない、冷凍かもな本当に」


「ところで、名前を教えて」

「俺か?クラナドだ」

「あたしはカラス、暫くよろしく頼む」

「…そうだな、話はここまでにして向かう方がよさげだな」



今、ようやくエレベーターに乗ったのだった。

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