顔
顔①
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顔♪
顔♪
優しい顔♪
笑顔が可愛い顔♪
お人形さんみたいに白い顔♪
こっちを見て笑って♪
ねぇ♪
こっちを見てよ♪
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「すまんな、山下…」
「いいえ、これも委員長の仕事ですし…アタシも石川さんの事が心配ですから」
アタシは、高島先生から渡された封筒に入ったプリントの束を自分のトートバッグに入れた。
「あんな事続きだ、こんなことを頼んでおいてなんだがくれぐれも帰り道には気を付けるように」
高島先生はそれだけ言い残すと、いつものジャージ姿とは違うカッチリとしたスーツの背中を向けて足早に廊下を歩き去っていく。
『あんな事』
その言葉にアタシは少し身震いする。
あんな事とは、このところ頻発している小学生失踪事件の事でありアタシのいるこのクラスこそその事件の舞台だった。
『だった』というのは、今回ついに隣のクラスにも行方不明者が出たからだ。
「…なんで休校となになんないんだろ…?」
もう、ウチのクラスからは殿城ゆう・月島友華・仲吉友彦・友近勉の四人がいなくなっているし隣のクラスのハーフの子とか…5人!
5人だよ?!
5人もいなくなってるのに学校来いとか酷くない?!
しかも、こんな物騒な時に休んでる奴の家までプリント届けろとかばっかじゃねーの?!
「もう! マジふざけんなし! めんどっつ!!!」
アタシは靴箱で悪態をつく!
つか、アタシって暇じゃないのよ?
さっきまで頼まれ事してたし、これからピアノだし、終わったらカテキョだし____嗚呼…イライラすんなぁ。
「と~もこ!」
突然、ぽんと肩を叩かれてアタシはビックっとする!
「ぁ、もう~脅かさないでよ春奈~」
「えへへ~、委員長さんはお疲れさんだねぇ? 驚いた?」
振り向いたそこには、春奈。
いつも、アタシにコバンザメみたいにくっついてくる同じクラスのうざい女。
「ともこ、今帰り?」
「そうなんだけど、コレを石川さんの所に持ってかないといけなくて…」
「え? 石川んちってともこの所からは反対方向じゃん? 大変だね~委員長て…」
「う、うん。 そうなんだけど…ほら、石川さんって行方不明になっちゃった月島さんとほら隣のクラスの男子と友達だから今回の事がショックだったらしくてもう5日も学校に来てないんだよね」
「ふぅん…それで委員長の出番って訳なんだ」
春奈は、自分の髪の毛の先を指でいじりながらつまんなそうにしてる…。
こ、コイツ…自分で話を振った癖に!
「それさぁ、石川んとこまで持っていくだけでいいんでしょ?」
つまんなそうにしていた春奈が、ちらっとアタシのトートバッグを指さす。
「うん、そうなんだけど…」
「じゃあさ、だれか他の奴にやらせりゃいいじゃん? 例えばほら…アイツとかぁ?」
春奈の指がトートバッグからそれて、廊下の方を指さす。
「ぁ」
急に指をさされ、すっとろく歩いていた脂肪の塊は小さな声をあげた。
「かして~♪」
春奈は、アタシのトートバッグからプリントのびっしり入った封筒を取り出してそいつに押し付ける。
「これさ、石川んちまで持ってってくんない?」
「ぇ?」
「出来るよなぁ? つか、やれよ」
「でも…私、石川さんの家しらな…」
「は? 冷た~…友達が二人とも行方不明で今すげー傷つてる石川の事心配じゃねーの? ひどぉお! つか、家くらい自分で調べれば?」
また、いつものように俯いて黙り込んだ脂肪の塊の脚を春奈がこつんのつま先でこずつように蹴る。
「あ"? てめぇ、話聞いて______」
「ブツブツ…石川さん…石川ミカ…ブツブツ…」
なに?
俯く口元が、ブツブツ動く。
「んだよ? だから___」
俯いていた顔がぱっと上がって、春奈に視線を合わせる。
「分かった、私が届けるね」
いつもの蚊の鳴くような声とは違う高くてしっかりとした声が、はっきりとした言葉で言う。
そして、浮かべているのは笑み。
笑ってる?
「あ…ああ、わかりゃいいんだ______え?」
アタシは、そのぶくぶくに太った腕に抱えられた封筒を奪い取った!
「…やっぱ、アタシが持ってく、帰れデブ」
「…」
脂肪は、何故か残念そうな顔をしてのそのそとアタシの隣の自分の靴箱から靴を取り出して外に出て行く。
「ええ? なんでだよ? そんなめんどいのアイツにやらせりゃ良かったじゃん!」
「うざい、黙れ…」
「げ? なに? 機嫌わるぅ~…」
「…」
黙り込むアタシに、春奈は居心地が悪くなったのか『先帰るわ~また明日~』と言ってぶらぶらと帰って行った。
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