胴⑦
「どうしてこんな事するの…!」
折角、包帯さんがくれたのに!
「キモイ! キモイ! なにその目! 怖い!」
ゆうちゃんは、体中をバリバリ掻きながら叫ぶ!
「おかしいよ! アンタ頭おかしい! なにこれ! なんでこんなに家臭いの! シロアリ? いるだけで体が痒い! 蚤とか?! あり得ない!」
もう、叫ぶみたいにゆうちゃんは言う。
「なんなの?! こんな家に連れこんでさ! 仕返しのつもり?? 虐められるの根もってキモイ! こんなのやられて当然じゃん! もう、ウチを巻き込まないで!」
ひ…ひどいよ…!
どうして…ゆうちゃん…私、はじめてゆうちゃんが私を呼びに来てくれて一緒に登校したとき嬉しかったのに、一緒に給食を食べたの楽しかったのに…!
ゆうちゃんだけは、こんな事言わないと思ったのに…!
「…謝って…!」
「はぁ!? やっぱ、仕返しだったの??」
「違う…お人形…割ったの謝って…!」
今までの事は、感謝してる…少しの間でもトモダチでいてくれたそれは嬉しかったから…でも、ソレとコレは違うもん!
私は、お人形をゆうちゃんに差し出した。
「お人形に謝って!」
「…いや…もう嫌…! ウチに近づくな!!」
ゆうちゃんはン人形をはたき落として、玄関まで走った!
「待って!」
そんなに急に走ったら!
バキン!
ガタン!
「ゆうちゃん!!」
私が叫んだ時には遅かった…!
「かふっ…あ"っ…??」
「ゆう…ちゃん…?」
私が見たときにはゆうちゃんは、シロアリが食べた脆い床を踏んずけて転んだのだ…ころんで…ころんで…顔を、割れた床から飛び出た木が刺さってる…口から刺さって後頭部まで突き抜けて…!
そのまま私にの方に振り向いて、すごく怖い顔で睨んでからガクンって動かなくなった。
「ゆうちゃん? ゆうちゃん…?」
お人形を床に置いて揺するけど、ゆうちゃんは怖い顔のまま動かない。
「ぁ ああああああああああ!!」
死んでる!!
ゆうちゃんが死んじゃった!!
どうしよう!
救急車?
お巡りさん?
でも、でも…カシャン…。
後ろの方で座らせて置いたはずのお人形が倒れて、割れた首が転がる。
「ぁ…」
お人形のドレスが緩んで、中の白くてぽってりとしたお腹が見えて、足も手もみんな散らばって…。
「アは…あははあはははっはははははは…」
そうだ、そうしよう!
私は動かなくなったゆうちゃんだったものを引きずって、お風呂場にもっていく。
「今日、アナタがここに来たことは誰も知らない…」
だって。
ゆうちゃんのママは看護婦で夜勤で、ゆうちゃんのパパは今日も朝早くからお仕事だったからさっき家にいたのはゆうちゃんだけ。
ここに来るまでだって誰にも会わなかった。
だから、ゆうちゃんがここにいる事は私以外誰も知らない。
「ゆうちゃん…ゆうちゃん…」
お風呂場で私は血まみれのゆうちゃんをぎゅーってする…でも…。
「どうしてそんなに怖い顔をしているの?」
死んだゆうちゃんの顔は、今にも私に噛みつきそうなくらい怖い。
それに、左足がへんな方向に曲がっちゃって両手の指も引っ掻くみたいにぎってなって形が悪くなってる…。
『新しい友人を作られては?』
包帯さんの言葉が頭の中に浮かぶ。
「そうだ…作ればいい…」
私は、お風呂場を飛び出してお爺ちゃんの部屋に行く!
お爺ちゃん。
お爺ちゃんが元気だったころは、よく、縁側の修理をしたりしてたからある筈!
「あった!」
工具箱。
私はそれと台所からハサミをもって、お風呂場に走ってく!
「…ゆうちゃん」
びりっつ!
ハサミでゆうちゃんの服を切る。
びり。
びり。
サクサク。
すっかり肌かんぼ。
「~♪ ~♪」
カタン。
お爺ちゃんの工具箱からのこぎりを取り出して、ゆうちゃんだったものの首にあてる。
ごりっ。
ごりっ。
ごりっ。
血がいっぱい出て、お風呂場が真っ赤だけどやめない。
ゴトン。
すっごく時間がかかっちゃたけど首がとれた。
次に右手、左手、右足と左足も付け根から。
お肉が多くて、刃が上手く滑らなくなってきたから全部切るのに土曜日から日曜日までかかっちゃた。
「綺麗になったね…」
形の悪い頭と腕と足を取って、お風呂に入れたらその子はとても綺麗になって嬉しくって私はぎゅってする!
真っ白の肌とぽよぽよのお腹…これは私のもの。
私のトモダチ。
でも早くしなきゃ…腐っちゃう。
「まっててね…アナタに似合う頭と手足…すぐに探してくるからね!」
ああ、早く見つけなきゃ!
トモダチ♪
トモダチ♪
私のトモダチ♪
足りない所は♪
集めて♪
つなげて作りましょう♪
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