第8話 わたしらでやる

 わたしは電話をかける。

 メールばかりだったので本社へかけるのは久しぶりだ。


「黒田部長おられますか?」


 わたしの上司を呼び出すと5秒ほどでつながった。


「井咲です」


「おお。電話なんて久しぶりだな。どうした」


「黒田さん、熊岸海運に来月頭着予定の青果、3隻頼んでましたよね」


「ああ、そうだな」


「今月下旬に早めてください。それで、熊岸に言って、日華とTransとEVERの船を分捕ってこっちにまわさせてください」


「ん?できるかな・・・・」


「何のために高いチャーター料払ってるんですか。わたしが熊岸に電話しましょうか」


「いや、いい。俺がやっとく。でも何のために?」


「嫌がらせです」


 電話を切る傍からエルセンがぼやく。日本語なのに雰囲気で内容が分かったようだ。


「仕返しはいいが、今日の荷役はどうするんだ。下手したら客から賠償請求されるぞ」


「荷役はできる」


「誰にさせるんだ」


「わたしらでやる」


「マジかよ」

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