第7話 平和の缶詰
そんなもん、吸えるか、という身振りをしてエルセンはワイシャツの胸ポケットからラッキーストライクを取り出し、火を点ける。
わたしはデスク上の缶からショートピースを1本抜き取り火を点ける。
女のわたしがタバコを吸うことを咎める者はいない。
ただ、両切りでフィルターが無く、やたらと短いそれを見て、
「なんだそれ」
と皆言う。
「Canned Peace」
と言うと、
「平和の缶詰?なんのこっちゃ」
と呆れられる。
タバコも、いじめを、”無かったことにしたい”、わたしが20歳前後に手を出したアイテムだ。そのためにはライトなものやメンソールでは駄目だった。ショートホープかショートピース。両方とも、彼女・彼らが絶対に吸わないような銘柄だ。わたしはショートピースを選んだ。
唇に少しくっついた紙を舌で舐める。
「エルセン」
「ああ」
「気分悪いよ」
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