Pert.17 戦え! 我ら探偵部

「ちょっとでも、そこから動いたら電流のスイッチを入れるぞ!」

 手に持ったスイッチを見せて、俺たちを威嚇いかくする。

「おまえたちはここからは出られない」

「コラ―――ッ! 逃げるなっ!」

「バカな探偵ごっこをした反省会でもやってろ。あははっ」

 笑いながら根岸先生は梯子段を上がっていく。

 もしも、あの梯子を外されたら、俺たちはここから永遠に出られなくなってしまう。

 その時、壁に立て掛けてあった赤い自転車を草太が片手で持ち上げた。梯子段を登り切ろうとしていた根岸先生に向けて、その自転車を投げつけたのだ。すごい怪力だ!

 ガンガラガチャ―――ンと、けたたましい騒音と共に根岸先生が落ちてきた。

 俺たちは、ソレ―――と、ばかりに根岸先生に飛びつき、逃げないように縛り上げた。その上、教師面して俺たちに説教たれないよう猿轡さるぐつわも噛ませて置いた。

「高校生を舐めんなよ。警察に通報してやる!」

 携帯を取り出したが、あれ? ここは圏外だった。 

 そうか四方をコンクリートで囲われているんもんなあ。これじゃあ、電波が届かないや。――待てよ。だったら葛西先輩へのメールを千夏さんはどこから送信したんだろう?

 草太は気を失っている先輩を担いでベッドに寝かせると、

「僕が外へ出て、警察と救急車を呼ぶよ」

 そう言って、ひとりで梯子段を上がっていった。


 犯人と、死人と、気を失っている人と、真美と、俺が地下室に残された。

 草太のサーチライトがないのでとても暗い、とにかく真美の元へ行った。

「真美、大丈夫か? ケガないか? 変態教師に何もされなかったか?」

 オロオロしながら、俺は矢継ぎ早に質問を浴びせた。

「絶対に死ぬなよ! おまえだけは失いたくないんだ。いなくなったら……なあ、俺はどうしたらいいんだ?」

「――大丈夫よ。ヒロシこそ血迷ちまよってる感じじゃない」

「そ、そ、そんなことない!」

 たしかに気が動顛どうてんしてるけど、こんな状況だし、誰だって血迷うだろうが……。

「スタンガンで気絶させられて朦朧もうろうとしている時に、誰かの声が聴こえた『アシモトニ、ワナヲ、シカケテルカラ、ウゴカナイデ……』そういって、私に教えてくれたのよ」

「へぇ? 声がしたって……」

「うん。まだ若い女の声だったよ」

「いったい誰だろう?」

「ぼんやり影が映ったけど、ツインテールみたい」

「ツ、ツ、ツインテール!?」

 葛西先輩が千夏さんのヘヤースタイルはツインテールだったと言ったよなぁー。

 草太が見た女子高生もツインテールだった。まさか、本当に出るのか、ここには、本物の幽霊が……。

 

 その時、白い影がコンクリートの壁に映った。

 倒れている葛西先輩に寄り添うように、ツインテールのセーラー服の女生徒がそこに居たのだ。――茫然ぼうぜんと俺も真美もそれを見ていた。

『タクミ……』

 葛西拓巳かさい たくみ――タクミって、先輩の名前か。

『ジケンニアッタノハ、タクミノセイジャナイト、ツタエテホシイ……』

 ツインテールの女生徒はそう告げると、スーッと姿がぼやけて消えいった。

「い、今見えたのは……?」

「ツインテールの女子高生だった」

「もしかして彼女が千夏さんか?」

「亡くなっていても……葛西先輩を心配して出てきたのね」

「罠を教えてくれた」

「守ろうとしてた」

「美しい愛の力だ!!」

 俺と真美が手を握り合って感動していた――ら。

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