Pert.16 ついに真犯人登場か?

「彼女なら君たちの足元で眠っている」

 いつから、そこに居たのか、いきなり根岸先生の声がした。

「何だと!? どういうことだっ!」

 語気も荒く、葛西先輩が噛みついた。

「死んでしまったんだよ。いや、殺す気はなかったけど……」

 まるで他人事のように、根岸先生は平然と殺人の告白をした。

「なぜ? どうして? 千夏を殺したんだ!?」

「わたし副業として、海外向けのAVを制作して売っているんだ」

 AVって? エロビデオ、それが教師の副業か!? 信じられない糞野郎だぜ。

「あの日、奥の部屋へ入ろうとしていたところに彼女が戻って来てね。書庫の奥の小部屋の存在を知られてしまったんだよ」

「やっぱり、千夏は図書館に戻っていたのか」

「そうなんだ。見られたらマズイんで口止めにAVのモデルにしようと、この部屋に連れ込んだんが、あんまり暴れるんでスタンガンを強めに当てたら、心臓麻痺を起して……あっ気なく死んでしまった。まさか死ぬとは思わなかったので、わたしも驚いたよ。あはは……」

「千夏は小さい時から軽い心臓疾患があったんだ……そ、それを……おまえは……チクショ……」

 最後の言葉は涙で絶句した葛西先輩――。

「事件が発覚すると困るんで彼女の遺体をコンクリートの床下に埋めさせて貰った」

「この糞野郎! 千夏を返せ―――!!」

 激昂げっこうした葛西先輩が飛びかかろうとした瞬間!


『ダメ―――! そこを動いちゃダメ!!』

 突然、真美が大声で叫んだ。気を失っているとばかり思っていたのに……。

 その言葉に慌てて飛び退いた葛西先輩だったが、足元を見て驚いた。水で濡れたマットが敷かれ、その下に裸の電線が何本も通っていたのだ。この上に乗ったら確実に感電死させられる。

「チッ!」

 悔しそうな顔で根岸先生が舌打したうちをした。

「田村教頭を殺したのもあんたか?」

 今度は俺が質問した。

「ああ、そいつは、わたしの副業のAVの儲けを半分よこせとか言ってきたからね。しかも女子高生とやらせろとか、奈津子先生みたいなビッチは飽きたとか贅沢いうんで、もうウンザリだ。さっき実験がてら、そこで感電させたら死んだよ」

 なんて乱れた教師たちだ! 俺は心底こいつらに嫌悪感を抱いた。

「こんな地下室まで造って何をするつもりだ?」

「ああ、この地下室は偶然見つけたんだ。以前、図書室の床工事をやった時に発見した。戦時中に防空壕ぼうくうごうとして使われていたみたいだった。わたしは学校に内緒で工事をして、秘密の小部屋として使えるように、ここを改造したんだ」

「変態教師! 女生徒を連れ込んでイタズラするつもりだったんだな?」

「冗談じゃない! わたしは女には興味ないんだ。AVの撮影はしても触る気はさらさらない。男子生徒ならそそられるが……ね」

 ニヤリとわらったヒゲ面が気持ち悪くて鳥肌が立った。

「根岸はゲイだよ! 2ちゃんの書き込みにもそう書いていった奴が何人もいたし、ここを見てみろと教えて貰ったURLに飛んだら、ゲイ専門の出会い系サイトだった。そこの掲示板に根岸ねぎしと思われる人物が『セフレ募集中』と書いているのを僕は見た」

「おや、葛西君ずいぶん詳しいね。いや、正直に告白するとあんな小娘より、わたしは葛西君に興味があったんだよ。だから他校の女生徒と図書館を利用しても何も言わなかった。こっそり、君を見ていたかったからさ」

「ぶっ殺す!!」

 怒り心頭で、真っ赤に紅潮こうちょうした葛西先輩が飛びかかろうしたら、ビカッと光って床に倒れた。


「先輩! 大丈夫ですか!?」

 電気ショックで気を失ったようだ。

「ここは電気が流れるって知ってたくせにトラップに引っ掛かるんだから……おまえたちには学習能力ってものがないのかね?」

「あんたは教師だろう? こんな酷いことを……なぜ生徒にするんだ」

「低能な生徒を相手に勉強を教えている、このわたしの苦労が分かるか?」

「それが教師の仕事じゃないか」

「わたしは毎日々、おまえらの馬鹿面を見るのがウンザリなんだ」

「うるせいっ! この人殺し変態オカマ教師!!」

「大西君、今の教師に対する暴言は内申書に響くから……」

 チクショウ! ここから早く逃げ出したいが、足元にそんな危険なトラップが仕掛けられているとなると、動くに動けない。――どうすりゃあいいんだ!

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