Pert.14 俺たち探偵部

 俺たちは誰もいない真っ暗な図書室へと入っていった。

 古い紙のカビ臭いと印刷インクの匂いが漂っていた。図書室ってなんか湿っぽい空気が流れている。

「窓のカーテンを全部閉め切ってくれ!」

 葛西先輩の指示で俺と草太は手分けしてカーテンを下ろして周った。図書館のカーテンはスライド観賞用に、遮光のかなり厚めの生地が使われている。

「よし! 電気を付けよう」

 ずっと暗闇に居たせいで、スイッチを入れた瞬間、眩しいほどの明るさだった。

「ここで何かさがす気ですか?」

「そうだ。以前、僕は測ったことがあるんだ。外からひもで測った広さと、中で測った図書館の広さが約1.5mほど誤差があるんだ。奥の書庫の更に奥に……もしかしたら隠し部屋があるかも知れないんだ」

 葛西先輩の意見に、俺も草太も驚いて声も出なかった。

 ――ゴクリと思わず生唾なまつばを飲んだ。

「……というのもね。僕が新聞部で活動していた頃に、一度、図書室の床の工事とやらがあったんだよ。その時に棚や本を移動させたんだが……なんか、書庫が前より狭く感じたんだ。まあ、レイアウトが変ったせいなんだと、その時は気にしてなかったけど……最近、ふとそのことが気になって測ってみたら、案の定、そういうことだった」

「二年前くらいですか? 俺が新聞部に入れられる前だ。真美に初めて新聞部の部室に連れて来られた時には今と同じだった。部室の奥に、根岸ねぎし先生のカメラの機材とかゴチャゴチャ置かれいて、狭い部室だなあーって感想だったから」

「書庫の奥が怪しいんだ。根岸先生の機材を置いてある、大きな棚の奥に何かありそうだ」

 そして俺たちは部室のある書庫へと入っていった。ここは元々窓のない行燈部屋あんどんべやなのだ。

 部室の電気のスイッチを入れようとしたら、

「ストーップ!」

 いきなり葛西先輩が静止した。

「はぁ~?」

「見てみろ。奥の棚から微かに灯りが漏れてる」

「……本当だ」

「やっぱり、この棚の奥には何かあるぞ」

 俺たちは棚の前で押したり引いたりしたが、ビクとも動かない。仕方なく灯りを付けて調べてみることにした。

「あっ! あったこれだ」

 草太が何か見つけたようだ。

「葛西先輩、これ! スイッチがある」

 機材で隠された棚の内側にレバーみたいなものがあった。たぶんこれを引くと――。

 ビンゴ! 電動式で大きな棚が自動ドアのように開いて入口を作った。

 勇み足で俺たちは中に飛び込んだが、そこは壁と本棚の間の空間といった感じで特に何もなかった。――だが、それでは終わらない。

「見ろ! 床の隙間からも灯りが漏れてる。もしかして地下室か?」

羽目板はめいたみたいだ」

 俺と草太で床を探っていると、取っ手のような物に手が触れて持ち上げたら、地下室の入口がポッカリ開いて、そこから梯子段はしごだんが見えた。

「降りてみよう」

 一番体重の重い草太から下りいった。

 俺が入口の所で下を覗き込みビビっていたら……草太が「僕が先に行くよ」とアンパンマンのような笑顔でさっさっと下りていった。

 こういう時の草太って……元、イジメられっ子とは思えないほどきもわっている。

 草太はライト付きのヘルメットを被っているので街灯のように明るい。無事、草太が下りたのを確認してから、俺、葛西先輩の順番に下りていく。まさか校舎の下に、こんな謎の地下室があるなんて……いったい誰が想像しただろう。

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