Pert.13 失踪した女子高生

「本人から連絡があったので、千夏の失踪は警察では家出人扱いになった。あれから一年経ったが、あれっきり連絡もないし、家にも帰って来ないんだ」

「千夏さんの失踪を葛西先輩は家出ではないと思ってるわけ?」

「――そうだ。千夏が乗っていた自転車も無くなっていたけど、僕は見つけたんだ千秋の自転車のキーを。何か手掛かりはないかと図書館で調べていたら、あの日、千夏が読んでいた参考書のページの間に自転車の鍵が挟まっていた」

「じゃあ、千夏さんは自分の自転車でどこかへ行ったんじゃないってこと?」

「千夏の自転車は買ってひと月にもならない新車で、お気に入りのカーマインレッドだった。それを置いて徒歩で消えるなんて……僕にはに落ちない。なのに自転車置き場から千夏の自転車が消えている。鍵を壊して、誰かが移動させたんだ」

「なんか事件に巻き込まれたって感じがしますね」

 その問いかけに葛西先輩は黙って頷いていた。

 真美のことも気になるが、思わずこの事件に俺は聴き入っていた。

「――車で連れ去られたのかも知れない。もしかしたら……この学校のどこかに千夏は居るんじゃないだろうか」

「ま、まさか!?」

「僕は半年前から2ちゃんの掲示板に『俺たちの学校のうわさ話』というスレを立てた。何か情報が拾えるかも知れないと思ってね。そしたら、この学校にもチャネラーが多いとみえて、匿名だから気軽に書き込んでいく奴らが結構いたんだよ。その中で気になったことを、新聞部に取材をして貰った。三つのうわさ話の真実を確かめるために」

「まあ、最初の二つは分かりましたけど……最後のは調査中だ」

「みんなで急に走り出したのは何か見たのかい?」

「ああ、俺は見てないけど……草太が何か見たんだよ」

 俺がそう言うと、葛西先輩は草太の方を向いて訊ねた。

「小西君、何を見たのか詳しく聞かせてくれないか」

「僕が見たのは渡り廊下を歩いて行く、セーラー服の女子高生の姿でした」

 その言葉に葛西先輩は目を輝かせた。

「どんな格好? 体型とか? ヘヤースタイルは?」

 矢継やつばやに草太へ質問した。

「えっと……わりと細身で、髪型はツインテールだったような……」

「ツインテール!?」

 そう訊き返して、葛西先輩の顔色が変わった。――その後、しばらく茫然としていた。そして、やおら口を開くと、

「千夏かも知れない……」

「えっ? ええ―――!?」

 俺と草太は同時に大声を出した。

「彼女の姿をどこまで追いかけたんだ?」

「本館の理科室の辺りで見失った。その奥は図書館だ」

「もう一度、そこまで行ってみよう。そこに中西さんも居るかも知れない」

 そうだ! 真美だ。

 そっちの方が俺にとっては重大な問題だし、こんな所で話し合っている場合ではないのだ。

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