Pert.9 徘徊するセーラー服の少女

 こんなネタばかりのクダラナイ真相では、学校新聞の記事には到底できそうもない。俺は完全に嫌気が差していた。

「なあ、こんな取材は止めてもう帰ろうぜ」

「ダメよ、ヒロシ。ちゃんと取材しないと葛西先輩に叱られるわ」

「……けどさ、どうして先輩も一緒に取材しないんだよ。俺たちにばっかりにさせて、葛西先輩かさいせんぱいはズルイと思う!」

 俺は葛西先輩とは会ったことがない。

 一応、新聞部部長だが学校には来ないし、部活の指示や活動資金などについては、全て真美とメールで遣り取りしているのだ。――自分は何もしないで、高みの見物を決め込んでいる葛西先輩に対する不満が沸々と……俺の中で沸点に近づいていた。

 しかも、さっき見た醜悪な教師たちの姿が脳裏に浮かんで、俺は吐きそうな気分だった。正直、早く帰りたかった――。

「葛西先輩は付き合っていた彼女が、行方不明になってから登校拒否になったのよ」

「えっ、行方不明? それは初耳だ」

「詳しいことは知らないけど、他校の女生徒だったらしいの。一年前、デートの帰りに校内のこの辺りで別れた後、忽然こつぜんと消えたんだって……」

「マジ? それこそ怪談じゃん」

 その話は俺の興味を惹いた。

「先輩は今でも、彼女のことを捜しているらしいよ」

「――そうか、忽然と消えたとか、何があったんだろう?」

 深夜の学校に秘密が隠されているような気がする。


「うわっ!」

 突然、草太が大声を出した。

「ど、どうした!?」

 俺と真美は驚いて草太の方を見た。

「今、渡り廊下を誰かが通った!」

 体育館から校舎につながる廊下を、こんな時間に誰かが通ったという。

「まさか? 深夜の管理人さんじゃないのか」

「違う。セーラー服を着た女の子だった……」

「マジ?」

 草太は渡り廊下を指差し、力強く頷いた。

 それって、今回の取材のテーマ『真夜中の学校を徘徊するセーラー服の少女』のことじゃないのか。まさか、実在する話だったとは……。

「よっしゃあ! そいつを捕まえよう!」

 俺たちは懐中電灯を手に持って、謎のセーラー服の少女を追いかけた。

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