Pert.7 学校食堂の怪談
最初の取材は『
まず草太は取材の前にコンビニで買ってきた食糧を食べるつもりらしい。レジ袋二つに入ったものを食堂のテーブルの上に並べた。おにぎり十個とパスタ二つ、唐揚げ三つ、コロッケ、サラダ、プリン、シュークリーム、ポテチ、数種類の飲みもの……いったい、どんだけ食べる気だぁー!?
俺と真美はおにぎり一個づつとパスタと唐揚げを食べたが、後は、草太がほとんど全部食べた。やっぱり身体がデカイと胃袋も大きいんだなあーとつくづく感心した。
お食事タイムが終わったら、我が新聞部も気合を入れて取材に取りかかる。
真美が食堂のおばさんに借りて来たという、鍵で厨房の中に入った。思ったより広い厨房には大きな鍋や調理器具が置いてある。電気製品から発する僅かな灯りと非常灯が室内をぼんやり照らしている。
深夜の厨房というのは、静まりかえって不気味なものだと思った。――深夜に食材を盗りに来るという謎の生物が現れるのを厨房の片隅に待つことにした。
息を殺して調理台の下に隠れていたが、かれこれ小一時間経っただろうか? お腹も満腹だし
天井の換気口辺りから、微かな音が聴こえて来た。停止しているファンの羽根をスルリと抜けて何かが入ってきた。音もなく床に着地すると、大きな棚に置かれていた段ボールの箱をガサガサと漁っている様子だ。
「よし! 今だ」
俺たちはそいつを懐中電灯で照らすと、驚いた眼が赤く光っていた!
そこに居たのは真っ黒な猫だった。
口にはソーセージを咥えて、こちらに向かって
人間に驚いた猫は調理台の隙間に入り込んで隠れた。
「この猫を捕まえて、食堂のおばさんに引き渡す?」
「毎晩、こんな悪さをするようなら捕まえた方がいいかも知れん」
ここは密室だし、猫はどこにも逃げられない。
俺は追いかけ回して、ジリジリと猫を追い詰め、そして持っていたザルを奴に被せて、やっと捕獲したのだ。
「やったー! いたずら猫を捕まえたったぁー」
ここまで何もしないで見ていた草太がいきなり声を上げた。
「ヒロシ君、その猫を許してあげて!」
「えっ?」
「
そう言えば、ミャーミャーと微かに仔猫の声が聴こえた。
「その猫はお母さん猫なんだ。もし捕まったら……仔猫がお乳を貰えなくて、飢え死にしてしまう」
よく見ると、猫のオッパイが膨らんでいるし、子育て中の母猫のようだ。
草太は残っていた、おかかのおにぎりと唐揚げを猫に食べさせた。しょうがない、今日は見逃してやろう。おまえ仔猫が居るんだから、もう捕まるんじゃないぞ!
黒猫を厨房から外へ放してやった。
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