Pert.5 葛西先輩の課題

 毎回、学校新聞のテーマを葛西先輩から出される。取材のための費用も貰える。いつも真美のパソコンにメールで送って来るらしい。

 そして今回のテーマだが、『学校の怪談』なのだ。

 なにそれ? いまいちベタなテーマだなぁー。

 前回は『徹底検証! 牛丼食べ比べ』だった。新聞部のメンバーで吉野家、すき家、松屋など牛丼チェーンを食べ歩いた。

 この企画を一番喜んだのは草太だった。

 全店で牛丼二杯づつ完食していったので、牛丼食べ比べの記事を草太に頼んだら……、「どの店も比べられないくらい美味しい!」ときたもんだ。

 これじゃあ、ただの食いしん坊バンザイ! の感想じゃないか。それじゃあ、取材する意味ないじゃん!

 まあ、そんなダメっぽ新聞部の次の取材テーマが『学校の怪談』なんて、滑りそうで怖い。だけど、スポンサーである葛西先輩の意見は絶対なので逆らえない。


『学校の怪談』で取材するのは、校内で話題になっているのは三つの噂だ。

 一つ目が『施錠された食堂から消える食材』なんじゃそりゃあ? 深夜に誰かつまいか?

 二つ目は『深夜の体育倉庫から女の呻き声』ちょっと怖そうだ。

 三つ目の最後が『真夜中の学校を徘徊するセーラー服の少女』うちの高校はブレザーだから、他校の女生徒の侵入か? ちょっと捕まえてみたいような……。可愛い幽霊だったら、welcomeだぁー。などと俺が妄想していると、

「ヒロシ、あんた聴いてるの?」

 いきなり俺の妄想を遮断しゃだんして、現実の真美が怖い顔で睨んでいた。

「はい、はい。聴いてますよぉー」

「もう! ヤル気ないんだから」

「そんなことない! いつも俺はクールなだけさ」

 突っ込むのもアホらしいという顔で、真美は話を続けた。

「――で、今週の日曜日に取材をします。午後十時に学校の通用門の前に集合ね!」

「そんな時間からだと腹が減っちゃう」

 大食漢の草太は一日五回の食事が必要なのだ。

「じゃあ、コンビニで何か買っていこうか」

 葛西先輩から取材費が出ているので、我が新聞部は財政的にはリッチなのだ。

「はーい、質問! おやつは500円までですか?」

「……ヒロシ、いつまでも子供染みたギャグを言ってんじゃないわよ」

 冷ややかな真美の一瞥に、俺はシュンとなった。

 よくよく考えると――物心ついてから、ずっと俺は目下扱めしたあついだったなぁー、いい加減、真美とは縁を切りたい。新聞部なんか潰れちまえっ!

 

 ……てか、なんで葛西先輩は自分でやらないで、俺たちにばっかやらせているんだろう?

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