Pert.3 俺たちスリーサイズ

 ついに観念した俺は、真美に引っ張られて『新聞部』の部室へ連れて来られた。

 新聞部の部室は図書室の奥の書庫の片隅である。ここならコピー機やパソコンがいつでも使えるという利点からだったが、こんな窓もない、埃臭ほこりくさい部室は居るだけで気が滅入る。

 何しろ新聞部は俺を含めて、たった三人の部員しかいない超弱小クラブである。

 顧問は図書室の管理を任されている、英語の根岸ねぎし先生だが、こいつは眼鏡で髭を生やした神経質で陰気な人物なのだ。全然、俺たちの世話を焼いてくれないし、それどころか新聞部の部室がここにあること自体、とても迷惑そうなのである。

 書庫の中には、根岸先生の趣味と思われるカメラや画像編集するための機械が置いてあって、触ろうものなら、すごい剣幕で怒鳴られた――。

 顧問のくせにそれはないだろうと言いたいけれど、四十二歳、独身、女っ気なし、いわゆる、そいつは教師なのだ。


 それでも『新聞部』が存続できているのは、部長の葛西かさい先輩のお陰だろう。

 葛西先輩は三年生だが去年から不登校が続いて、ついに留年してしまった。彼は本来、もの凄く頭が良くて、ずーっと学年トップの成績だったが、一昨年の暮れから、急に不登校になってしまったのだ。――それで、家で何をしているかというと、ネットで起業してアフィリエイトやオークションで、月に二十、三十万は稼いでいるという噂である。

 何しろネットはパソコンさえ扱えれば、高校生だろうが、ニートだろうがお金を稼ぐことができる世界なのだ。

 そして葛西先輩が、新聞部のスポンサーとなって部費や活動資金などカンパしてくれている。現在、活動しているメンバーは俺たち三人だけだが、廃部されないように帰宅部の奴らに、お金をバラ蒔いて幽霊部員ゆうれいぶいんになって貰っているのだ。

 なぜ、そこまでして葛西先輩が新聞部に執着しているのか知らないけど――俺的には、こんなクラブは無くなってくれた方が助かるのだが……。


「あっ、ヒロシ君おヒサ!」

 俺の姿を見つけて、新聞部の三人目の部員である小西草太こにし そうたが嬉しそうに手を振っていた。


 ここまで読んだら、もう分かってくれたかなぁー? 

 俺は大西おおにし、真美は中西なかにし、草太が小西こにし。三人揃って大・中・小の西なのだ。

 三つのサイズの西、西はウエスト(腰回り)、だからスリーサイズである。

 その後に付く『探偵部』は、俺たちスリーサイズの活躍次第だから、お楽しみなのだ。

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