第三十九話 エピローグ3 最強の勇者、彼女にアーティファクトを渡す
――アタル視点――
何とかアデルさん用のスマホを契約出来た!
……意外と手続き面倒なんだね。
まさか手続きに一時間近くかかるとは思わなかったよ。
とりあえず渋谷の携帯ショップで契約して、アデルさんは意中の子に会う為に別行動となった。
僕は僕で、由加理ちゃんにアデルさん特製のネックレス型アーティファクトを渡す為、五時限目が終わった休み時間を狙って学校に来ていた。
今ちょうど校門の前で、部外者である僕は気軽に入れない。
なので、メッセージアプリで由加理ちゃんへメッセージを送った。
『今渡したい物があって校門の前にいるんだけど、少し出れる?』
よし、送信完了!
後は来るのを待つだけだなぁ。
このアーティファクトは、アデルさんが一晩寝ずに完成させた物だ。
青い宝石はアデルさんの魔力の結晶であり、複雑な魔術式が刻まれているのだとか。
これを装着してメッセージを送る事で、同じくアーティファクトを身に付けている相手に、次元を越えて受信できるそうだ。
タイムラグとしては約三分程。すぐに返事は返ってこないけど、十分だ!
しっかし、魔術便利過ぎでしょ!
次元を越えて――正確には六千光年離れた別惑星らしいけど――スマホでメッセージのやり取りが出来るし、とんだチートだよ。
まぁ今回ばかりはアデルさんも、好きな子と離れててもやり取りしたいっていう、愛が成した技らしいけど。
でも、今回ばかりはアデルさんのチート魔術に大感謝だなぁ。後で何か御飯を奢ろう!
そんな事を考えていたら、由加理ちゃんが校門に向かって走ってくる姿が見えた。
休み時間は十分と短いからね、相当全速力で走ってきたみたいだ。
「はぁ、はぁ……、お待たせ、あっくん!」
「全然待ってないよ」
「それで、渡したいものって?」
「うん、手を出して」
由加理ちゃんが手を出すと、その小さいけど白くて綺麗な手のひらに、青い宝石が光るネックレス型アーティファクトを置いた。
「えっ、これ何?」
「これ、実はアデルさんが作ったアーティファクト……まぁ魔法具なんだよ」
「それを、どうしてアタシに?」
「うん、それを着けていれば、僕が向こうに帰ってもスマホで連絡取れるんだよ」
「えっ、本当!?」
「本当本当」
由加理ちゃんが嬉しそうな表情を見せてくれた。
やっぱり、この会えない一ヶ月は由加理ちゃんにとっても寂しかったんだろうな。
僕だって、本気で会いたくなってた位だったし。
「あっくん、ありがとう!!」
「僕が作った訳じゃないけど、どういたしまして! ちなみに、お揃いだよ?」
僕の首にぶら下がっているアーティファクトを見せる。
由加理ちゃんと同じ色の宝石が付いている。
それが嬉しかったのか、満面の笑みだ。
あぁ、可愛い!
僕は衝動的に校門の壁に由加理ちゃんを引っ張り、学校には見えないようにして唇にキスをした。
一瞬驚いたようだけど、僕の首に腕を回して受け止めてくれた。
十秒位経った後にお互い、名残惜しそうに唇を離した。
「ごめん、由加理ちゃんがあまりにも可愛くて……」
「ビックリした……。でも、嬉しかった」
由加理ちゃんがふと時計を見る。
そろそろ次の授業が始まるんだろうな。
「じゃあそろそろ行くね! あっくん、またメッセするね!!」
「うん、僕も送るよ!」
「旅行、いってらっしゃい!!」
あぁ、何て可愛らしい笑顔なんだ。
僕はもう由加理ちゃん以外考えられない。
大好きだ!
僕は由加理ちゃんの姿が見えなくなるまで、校門で見送る。
そして見えなくなり、僕は小さな声で「いってきます」と答え、アデルさんとの集合場所に向かった。
――由加理視点――
んふふふ、残りの授業も元気よく乗り越えられそう!
なんたって、あっくんからプレゼントされたし、キスもしてくれたし♪
しかしまぁ、さすが魔王様であるアデルさん。
こんな素敵な魔法具を作っちゃうなんて!
でも突然、何でこんな魔法具を作ったんだろう?
アタシ達の為になのかな?
そしたら、何かお返ししないといけないなぁ。
今度あっくん達が来た時は、何か贈り物しよっと!
アタシは鼻唄混じりで自分の教室に戻ると、多くの女子達が待っていた。
その中には和恵ちゃんもいた。
「えっ、どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ、安藤さん! 彼氏さんに何もらったの!?」
見てたんだ……。
まぁ隠してもしょうがないし、言ってもいっかな?
「えっと、これをもらったんだ」
首に掛けたネックレス型魔法具……アーティファクトって言うんだっけ? これを皆に見せると、感嘆の声が上がる。
「すっごい綺麗……、それに高そう!」
多くの女子の一人がそう言った。
「すごいね、立花君はそんなにお金もってたの?」
和恵ちゃんが私に聞いてきた。
多分この中で、もやしっ子時代のあっくんを見ているのは和恵ちゃんだけだね。
「確か、それなりにあるとは言ってたよ」
「「「「「イケメンで優しくて一途で金持ちとか、完璧かよ!」」」」」
皆の声が綺麗にはもった。
「でも羨ましいなぁ、安藤さん。そんなに彼氏に大事にされて」
「うん、すっごい大事にされてるのわかるよ! えへへへ」
実際本当に大事にしてくれてると思う。
それを素直に言ったら、女子達皆、口から大量の砂糖を吐き出しそうな顔をしていた。
いいじゃん、のろけても!
「でさ、由加理。一瞬校門の壁に隠れたよね。何してたの?」
うっ、和恵ちゃんに鋭い質問された。
どうしよう、マトモに答えるの少し恥ずかしいな。
言葉で言うのは恥ずかしすぎるから、ジェスチャーでいっか!
アタシは人差し指の腹を唇に付けて、そして離した。
これであっくんとキスをしたって伝わったかな?
アタシは上機嫌に席に戻った直後、授業が始まるチャイムが鳴り響いた。
――和恵視点――
私の親友は、自分の魅力をあまり理解していなさすぎる!
何、あの仕草、めっちゃくちゃ可愛かった!!
贔屓目なしで、そこら辺のアイドルよりかも可愛い由加理は、非常にモテる。
彼氏が出来たらさらに可愛さに磨きがかかり、ついには女子生徒まで由加理に惚れ出した。
私と一緒に騒いでいた女子達も、彼女のあの仕草に見とれていたみたいだ。
「あれって、キスしたって事だよね?」
「……多分。でも安藤さんって、本当羨ましいくらい可愛いよね」
「うん、最初ふっくらしてたのに」
「そうそう! 幼馴染みが行方不明になった途端でしょ?」
「そして笑わなくなったのよね」
「でも、彼氏が出来て、よく笑うようになったよね」
どうやら、誰も由加理の彼氏こそ、その幼馴染み君だとは気が付いていないみたい。
「しっかし、あの仕草は反則だよね……」
「うんうん……、あれは可愛すぎるわ」
「私も少しドキッてしちゃった……」
かくいう私もドキッてしたし、皆の気持ちはわかるわぁ。
ああいうのを自然体に出来てしまうのが、親友の恐ろしいところだね。
ちなみに男子共は死屍累々と言った感じだ。
何でかって?
……敢えて言わないでおく。
何か幸せそうな由加理を見てたら、私も彼氏欲しくなってきた!
由加理に頼み込んで、お洒落を教えてもらうとしますか!
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