第5話 さすがにそれは嘘だと分かるよ……。
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子供達を中心に起こった怪奇現象の日から、約2ヶ月が経ちました。
賑やかに染まっていた山の葉も、今では落ち着いた白色一色に染まることの方が多いです。
しかし、山がいくら落ち着いた色に染まろうとも、私達住民は、2ヶ月経った今でもまだざわついています。
最初は何かの呪いや病気では無いのか? といった発言が強く、これ以上感染者を増やさない為に、発症した子供を隔離しようとする動きがありました。しかし、そんな事を話し合っている間に次から次へと発症者が増えて、確か住民の3割前後が発症し、そんな大人数を隔離する場所が無いとの事で有耶無耶に。
この時、発症者から殺害していくという流れにならなくて本当によかったと思います。
その後、子供だけでは無く大人も発症するようになり、気がついたら住民の半分位が発症者となっています。
私とお兄ちゃんはまだ発症していませんが、お兄ちゃんに至っては、発症した時のイメージトレーニングに明け暮れて毎日が楽しそうです。
お兄ちゃんは発症するのを楽しみにしています、私はどうもそんな楽しみには思えません。なぜなら、どういう特性になるか分からないからです。
だって、もしも私が口から火を出す能力だったとしましょう。もしも寝ぼけて夜中にうっかり火を出してしまったら、あっという間に家が火事になります。そんな事を気にして生きるくらいなら、今のままでいいかなーと考えてしまうのです。
「うぃーす、ただいまー。お客さん連れて来たぞー」
とお兄ちゃんが帰ってきました。お客さんを連れて帰るなんてお兄ちゃんにしては珍しい……。外で広報活動でも行っていたのでしょうか?
「はーい、今行きまーす」
と休憩室から顔を出します。ちなみに今日、梨里ちゃんはチカちゃんの家に遊びに行っているので、ここにはいません。
「ご注文は……」
ここから先は言葉が続きませんでした。お兄ちゃんの隣に立っている女性。えぇ、今私と目があって微笑んだ女性です。そう、この女性、私は何度か絵などで見たことがあります。私の記憶に違いが無いのなら……この人はこの国の宰相です。
「あ、あと、この人、俺の彼女だから」
お兄ちゃん……流石にそれは嘘だと分かるよ……。
***
(;'A`)「いや……先程は宰相様とあろう人物を巻き込んだ本当につまらない嘘をついてすみませんでした」
川 ゚ -゚)「いや、いいんだ。突然訪問した私にも非がある」
(;*゚A゚)(それにしても、外で待機しとる警護の人の圧が凄くて迂闊に動けんわぁ……。ちょっとでも疑われる行動をしたら殺されそうや……)
(;'∀`)「えへへ……それにしても、こんな辺鄙な店に宰相様がなんの用ですかい?」
(;*-A-)(そのセリフ、完全に小悪党のセリフやな……)
(;*゚A゚)(それにしても、この威圧感の中、普通に会話出来るお兄ちゃんはすごいわ……)
川 ゚ -゚)「いや、別に毒男さんだけの家に来ている訳では無いんだ。この近辺全ての家に回っている」
(;'∀`)「あ、そうなんすか」
川 ゚ -゚)「そして、ここに来た理由なんだが……。ちょっと説得をな」
('A`)「説得……ですか?」
川 ゚ -゚)「そうだ。最近、『能力』と呼ばれる物が発症しているのは知っていると思うが……その能力を悪用して犯罪行為を行っている者が増えているのは知っているか?」
('A`)「いえ、知らないっす……。そうなんすか? この辺は平和ですけど……」
川 ゚ -゚)「この辺は確かにそういう話は聞かないな。ただ、北東の方にあるカビダートという街では、そういう犯罪が多くなっている」
('A`)「んで、何を俺に説得するんすか?」
川 ゚ -゚)「じゃあ、簡潔に言おう。この街の北の森を開拓して、能力者だけの街を作りたい」
('A`)「へぇ……。そんなの俺らに許可取らずに勝手に作ればいいと思うんですが、なんでわざわざ宰相様直々に許可を取りに来るんです?」
川;゚ -゚)「そうだな……。理由としては後々の問題を避けるためだ」
('A`)「問題? どういう問題が起きると想定してるんです?」
川;゚ -゚)「まずは、治安の問題だ。森を開拓して街を作るとなると、人材も多数投入しなければならない。となると、この街には様々な人が足を運ぶ事になるだろう。その時に乗じて、能力を用いた犯罪行為が行われるとも限らない。また、この辺りの地域は異世界から人が来やすい土地だと聞く。そういう人を保護するという活動を行っているらしいな」
('A`)「やってますね」
川;゚ -゚)「この街以外の住人が多く押し寄せると云うことで、その活動が行いにくくなる可能性がある。こちらとしても、工事者全員に名札を配布したりして、対策はするが不便を押し付ける事になると思う」
('A`)「それだけっすか?」
川;゚ -゚)「また、森を開拓する事で景観が変わったり、その森で山菜を取ったりして生計を立てている人などに何か不都合な事が起きる事もあるだろう」
('A`)「それだけっすか?」
川;゚ -゚)「私が認識しているのはそれだけだ」
('A`)「ふーん……」
('A`)「じゃあまずお答えしますね。まず1つ目。知らない人がたくさん来るのは別に構いません。店の売上が上がるかもしれませんし。異世界から来た人の対応については少し困りますが、しょうがないと割り切ります」
('A`)「また、犯罪行為については、俺がとやかくいう必要は無いかと思いますが、恐らく憲兵団の方から、増員をしてくれと言われると思います」
('A`)「次に2つ目。森を開拓されるのは俺にとって別に不都合な事はないです」
川 ゚ -゚)「では、能力者だけの街を作るのは特に問題無いということでよろしいか?」
('A`)「あぁそうです。作るのに関しては特に問題は無い。作ることに関しては、だ」
川;゚ -゚)「と、言うと?」
(#'A`)「作った後の対応についてさっきから一言も喋って無いんですが、その対応はどうなってるのかお聞かせ願いませんか?」
川;゚ -゚)「作った後の……対応は……」
(#'A`)「じゃあまず1つ目。能力者の街を作るって事だったが、そこには、まだ発症していない俺らみたいな人は入れるのか?」
川;゚ -゚)「それに関しては、入れるようにするつもりは無い。なぜなら、能力者の犯罪というのは比較的反抗しにくい発症していない人物に対して行われているからだ。その為、能力者と発症していない人物を同じスペースに併住させるという気は無い」
('A`)「なるほど……なるほど……」
(#'A`)「ってそれじゃあ、血気盛んな能力者がこの能力者が居なくなったこの街で犯罪を働くって事じゃねーか!」
川;゚ -゚)「その辺は街の入退場を理由が無ければ行えないようにしたりして、無意味な外出は控えて貰うようにしようと思っている」
(#'A`)「そうか……。あんまり役に立ちそうもねーけど無いよかマシか……」
('A`)「次に2つ目だ。能力者の力で発展した技術は俺らにも還元して貰えるのか?」
川;゚ -゚)「……というと?」
(#'A`)「さっきから分かっててとぼけてるのかは知らねーが、例えば料理するのなら、かまどに火をつけて、ようやく調理が開始出来る。だが、そこに能力者の能力を通じて、好きな時に火を出すことの出来る機械が出来たとしよう。すると、一番面倒くさいかまどに火をつけるという工程を短縮、また、火の始末なんかもしなくて良くなるわけだ」
(;*゚A゚)(それってお兄ちゃんが山田さんのお子さんの能力を用いてやろうとしていることなんじゃあ……)
('A`)「俺は能力者についてそこまで詳しくしらねーけど、そういう感じで能力者を用いて生まれた技術発展を、能力者の街だけで自己完結するのでは無く、俺らにも提供してくれる事を約束して欲しいって事だ」
川;゚ -゚)「うーん……分かった。善処しよう」
(#'A`)「善処じゃ無くてやるの! 分かった!?」
(#'A`)「そして3つ目ッ!」
「宰相様。お時間過ぎておりますが……」ガラガラ
川 ゚ -゚)「分かった。今行こう」
(#'A`)「おい、まだ俺の話は……」
川 ゚ -゚)「すまない。まだ他にも色々回らなくてはいけないのだ。また後日、話を聞かせて貰うよ」
(#'A`)「後日っていつだよ」
川 ゚ -゚)「そればっかりは私の予定と相談だ。それと……」
川 - )「会話をするときは、人の目を見て会話するのが礼儀だと思うぞ」
(;'A`)「な……」
(#'A`)「うるっせぇ! 俺は女性と会話するのが苦手なんだよ! ここまで話せただけでも奇跡だ奇跡!!」
***
宰相様が帰ってからも、お兄ちゃんはかなり怒っていました。
私にとっては何でそこまでお兄ちゃんが怒るのか理解できません。宰相様の事ですから、きっと私達の事を一番に考えて行動しているはずです。なのでお兄ちゃんの発言を全て汲み取って素晴らしい街を作ってくれ……。いや違いますね。お兄ちゃんの意見を全部無下にして……あれ? え? ちょっと頭が痛くなってきました。視界がちょっぴりグルグルします。
「おい! 乃々! 大丈夫か!?」
え? 何? 何かおかしな事でもある? 宰相さまの意見に反対したお兄ちゃん? あれ? 違うっけ……宰相様と共に素晴らしい街を作ってくれるお兄ちゃんだっけ? あれ? 何か意識が遠のいて――。
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