第3話 さすがに暴走はやめようよ……

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 暑い日差しが降り注ぐ季節になりました。

 世間では夏を満喫するために、海へ行ったりする人がいますが、私はお店で店番です。

 お兄ちゃんは今日は1人でカブトムシを取りに行くと言って出かけて行きました。どうやら子供に売りつけて小遣い稼ぎをするようです。

 全く……。私個人の意見としてはカブトムシを捕まえるより先に、お嫁さんを捕まえて欲しいのですが……。

 お嫁さんといえば、2ヶ月程前に出会った内藤さん。彼の情報は全く入ってきません。他の町に技術者として行ったのでしょうか?

 恐らくですけど、彼は女性との接点がほぼ無い人生を送ってきたのでしょう。故に女性との距離感が分からず、あんな態度を取ってしまったのでは無いでしょうか? 女性との接点が無いって、お兄ちゃんと一緒ですね。……ということはお兄ちゃんも暴走してしまう危険があるのでしょうか? 少し心配です。私は他人に暴力を働いたりはしませんけど、短気な人ですと同じような態度を取られると殴ったりしてしまうのではないのでしょうか? となるとお兄ちゃんはもしかしたら、顔がボコボコにされて帰ってくることがあるのでは? と考えますが、流石にお兄ちゃんにも常識はあるはずです。そんな事はしないでしょう。と楽観的に考えますが、どこか不安な私が居ます。

「ただいまー」

聞き慣れた声と共に、お店の扉が開かれます。私はすぐさまお店の休憩室から顔を出し「おかえりー」と返そうとしましたが、出そうと思った言葉は口から発せられる事は無く、小さなうめき声として消えていきました。なぜなら、お兄ちゃんの顔は不細工を乗算するように腫れあがっており、その後ろには3歳位の子供を抱きかかえた大人の女性が立っていたからです。

 お兄ちゃん……いい年してるんだら、さすがに暴走はやめようよ……。



***


<(' _'<人ノ「あの! この度は――」


(;*゚A゚)「あの! ウチの兄がご迷惑をかけたみたいで本当に申し訳ありません! 恐らく悪気は無かったんです! ただ、ちょっと興奮してしまったというかなんというか……」


((メ)A`)「おい乃々、何か勘違いしていないか?」


(;*゚A゚)「勘……違い?」


((メ)A`)「お前、俺のこの顔を見て、この方に殴られたんじゃ無いかとか予想しているかもしれないが、違うからな、断じて違うから!!」


(;*゚A゚)「じゃあその傷は……」


<(' _'<人ノ「そこから先は私が説明させて頂きます」


(;*゚A゚)「ハイ、オネガイシマス……」


<(' _'<人ノ「本当に今でも信じられないんですけど、公園で私の娘が遊んでいたのですよね。そうすると、突然私の娘が宙に浮き始めたのです」


(;*゚A゚)「ちょっと待って下さい? 宙に浮くって空を飛んだって事ですか? 流石にそれは信用出来ないというかなんというか……。本当なの? お兄ちゃん?」


((メ)A`)「あぁ、俺も目を疑ったが、確かに浮いていた。宙に浮かすために必要な紐とかも見えなかったな」


<(' _'<人ノ「そして手も届かない位高いところまで上がってしまって、どうしようかと思っていた所、カブトムシを販売していたこの方が、近くの木にものすごい勢いで登って、救出してくださったというわけです」


(;*゚A゚)「はぁ……。じゃあお兄ちゃんのその傷は……」


((メ)A`)「子供を捕まえて油断してたら木から落ちた時に出来た」


<(' _'<人ノ「えぇ……。落ちる時も私の娘を上にしながら落ちて頂けたおかげで、私の娘が無傷だったので本当に感謝しています」


((メ)A`)「いやー、俺もお礼はいらないって言ったんだけど、どうしてもって言われたんで、せっかくだからウチの店で何か買ってってくれってお願いしてみたんだわ」


(;*゚A゚)「…………」


( *-A-)「…………」


(;*゚A゚)「あのー、お兄ちゃん。一つ聞きたいんやけど、ウチの事騙そうとか考えてへんよね?」


(;(メ)A`)「はぁ!? いや、全部真実だから! 真実! 大体お前を騙しても俺に何の特もないし!」


(;*-A-)「いや、でもどー考えても人が空を飛ぶとか考えられんのや」


(;(メ)A`)「いや、まぁ確かにそうだけどなぁ……。第一、俺も目を疑ったし……」


<(' _'<人ノ「じゃあ実際にご覧になりますか? チカ? 出来る?」


*(‘‘)*「やってみる」


 と、チカと呼ばれた少女を母親が離した瞬間にその場に浮き、微量ずつではあるが着実に上昇していった。

 その状況を目撃した乃々は自分の目を疑った。暑さで脳がやられてしまったのでは無いか? 本当の自分は寝ていてこれは夢を見ているのでは無いか。

 その現実を直視したくなく、乃々はお店の休憩室に目を向けるが、そこにはお昼寝中の梨里がいるだけであり、先程までウトウトとしていた自分はきちんと起きて今この場にいる事を痛感させられた。


<(' _'<人ノ「あの……もういいでしょうか?」


( * A )「ア、ハイ……。シンジマス……」


((メ)A`)「いやー。俺も正直目を疑ったからなー……で、チカちゃんだっけ? どうして急に体が浮くようになったんだい?」


*(‘‘)*「分かんない。何かお空が綺麗だなーって思ったら勝手に飛んでた」


((メ)A`)「そうか……じゃあ地面が綺麗だなーって思ったら下りて来れるのかな?」


*(‘‘)*「いや、それは無理だった。だけどこうやって体に力を入れると……」


*(‘‘)*「地面に着地できるようになったよ」


((メ)A`)「おぉー」パチパチ


((メ)A`)「あれ? でもそれ最初っからやってくれたら俺は怪我せずに済んだんじゃあ……」


*(‘‘)*「これはさっきお母さんに抱っこしてもらってる時に練習したからできるようになったの」


((メ)A`)「あぁ~そっか~」


<(' _'<人ノ「それにしても……これはなんかの病気なんでしょうか? お医者さんとかに相談した方が……」


((メ)A`)「そうですねー。いいかもしれないですね。と言っても治療とかは難しいかもしれませんが……」


<(' _'<人ノ「やっぱりそうですよね……」


((メ)A`)「それにさっきの感じだと娘さんも制御出来てるみたいですし、そのまま様子を見てみるっていうのも1つの手段かもしれませんね」


<(' _'<人ノ「うーん……そこら辺もちょっと主人と相談してみます」


((メ)A`)「そうですね。それがいいですよ」


<(' _'<人ノ「それにしても本日は娘を助けて頂いてありがとうございました。この御恩は一生忘れません」


((メ)A`)「いやいやいや、そんなに畏まらなくても……」


<(' _'<人ノ「後日、主人とまた改めてお礼を申し上げに来ますので、その時はよろしくお願いします」


((メ)A`)「あ、はい、そんなに気を使わなくても……」


<(' _'<人ノ「では、失礼します」


ガラガラ ピシャッ


((メ)A`)「あ……結局ウチの惣菜買ってくれてないじゃん……」


((メ)A`)「つーか、乃々? お前大丈夫か?」


( * A )「……」


((メ)A`)ノシ「おーい」


((メ)∀`)「駄目だこりゃ」



***



 その日から1週間後。例の家族がお礼と言って、菓子折りを持ってきて下さいました。

 人が空を飛ぶ。その時は何か悪い夢でも見たと思い込んでいたのですが、もう一度目の前で見せられたら、もう信じる他にありませんでした。

 それにしても子供の順応性って凄いですね。記憶が確かならば、浮くだけが精一杯だった彼女が、1週間後には空中浮遊しながら動けるようになってたんですよ。

 私もそんな力があったらなー。なんて考えます。なんたって、私の小さい時の夢は空を飛ぶ事だったんですから。

 でも、どうしてあの子はいきなり空を飛ぶことが出来るようになったのでしょうか? そもそも、鳥のように翼が無いのに、なぜ飛ぶことが出来るのでしょうか? もしかして、あの子をきっかけに全人類が飛ぶことができるようになったりして……? いや、そんな事は無いですよね。でも私も空、飛びたいなぁ……。

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