第2話 さすがの私もドン引きです
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暑くも無く、寒くも無く。非常に過ごしやすい天気です。風が吹くとちょっと寒いですが、動いていれば特に問題はありません。
榊原家が私の家の近くに引っ越してきてから1ヶ月が経ちました。
2週間榊原家から連絡が無かった理由は、どうやら憲兵さんにこの村の常識や食べ物、文字などを教わっていた為のようでした。
舞凛惇さんと梨里ちゃんは喋れはしたものの、文字を書くことは出来なかったようなので、一緒に文字を学んでいたそうです。
その結果、2週間という空白期間が生まれ連絡することが出来ずに申し訳なかった。との事でした。
ちなみに文字はまだ覚えられておらず、今でも詰め所で学んでいるそうです。
さて、私ですが、ただいま気分転換に買い物に行く途中です。
え? お店ですか? お店は梨里ちゃんが店番をしてくれているので問題ありません。
料理を教わるお返しとして、お店を手伝いたいと梨里ちゃん立っての希望もあり、ここ数日は来客が少ないこの時間帯は全て店番を任せています。
そして何より彼女は物覚えも良いのが凄い所です。これはお兄ちゃんから聞いた話なんですが、父親の舞凛惇さんよりも、早く文字を覚えたとの事。確かにお店の説明をしたら全て一度で覚えていたため、その話も納得出来る気がします。
まるで出来のいい妹が出来た感覚です。
そんな可愛い妹が出来た私はなんて幸せものなんでしょうか。
思わず、道の端っこにうずくまっている太った男性にも声をかけちゃいます。
「あのー、大丈夫ですか? 歩けますか?」
「エ……イヤ……ハイ……」
と返事こそするものの、一向にうずくまったまま動きません。
「本当に大丈夫ですか? 助けを呼びましょうか?」
「イヤ……ホントニ……ダイジョウ……」
と言いながら、顔を上げて私の顔を見た後に、彼はこう呟きました。
「天使だお」
いや……初対面でそんな言葉をかけられると……、さすがの私もドン引きです。
***
( ^ω^)「おっおっおっ! 天使だお。天使が僕の前に現れたお!」
(;*゚A゚)「天使って……ウチの事?」
( ^ω^)「そうだお! 君以外いないお!」
(;*゚A゚)「えー……」
( ^ω^)「ブヒー!! いきなり分けわかんない所に飛ばされて絶望している所に超天使ちゃんから話しかけられる展開キタコレwwwwwwwソレナンテ・エ・ロゲ? どころがどっこい現実です。テラワロスwwwwww」
(;*゚A゚)(あかん……、所々何言ってるか分からへん……)
(;*゚A゚)「あの……。もう大丈夫そうですね……。ではこの辺で……」
( ;ω;)「待ってお! 行かないでくれお! 僕この世界に知り合いなんて居ないんだお! 見捨てないでくれお! このままじゃ野垂れ死ぬお!!!」
(;*゚A゚)「えー……」
( ;ω;)「できれば天使ちゃんの家に一緒に住まわせて欲しいお。そこで手とり足とりこの世界について教えて欲しいお!!」
( ^ω^)「うwwwwはwwwwwwwwwひとつ屋根の下展開キタコレwwwwwwwwwwここから始まる禁断の愛とレボリューションwwwwwwwwwそして俺には類い稀な能力を持っていてそこから世界を救う旅にwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
(;*゚A゚)「あのー、ウチの名前天使ちゃんじゃなくて、乃々って言うんやけど……」
( ^ω^)「うほー!!! 乃々ちゃん! のーちゃん! 可愛いお! 名前可愛いお! のーちゃんは僕にとってのエンジェルだお!! どうだお? 将来優秀な僕と結婚して見る気はないかお?」
(;*゚A゚)(駄目や……このテンションの高さについていけんわ……。というかさっきこの世界に知り合いがおらんって言っとったけど、この人、別の世界から来たんやろか……)
(;*゚A゚)「えーっと、質問してもいいですか?」
( ^ω^)「いいおwwwwwwwいいおwwwwwwww何でも聞いておwwwwwwwwwwwwww結婚相手の事を知りたいと思うのは普通だおwwwwwwwww当然僕も知りたいおwwwwwwwwwwwwのーちゃんが質問し終わったら今度は僕の番だおwwwwwwwwwww」
(;*゚A゚)「この世界に知り合いが居ないって言ってましたけど、えーっと……貴方は別の世界から来たんですか?」
( ^ω^)「そうだおwwwwwwwwそうだおwwwwwwwwwww僕の住んでる所は道はきちんと舗装されていたおwwwwwwwwこんな土まみれの道なんて初めて見たおwwwwwだからここはきっと異世界だおwwwwwそれと僕の名前は内藤だおwwwwwwよろTI☆KU☆BI!!」
(;*゚A゚)「……。とりあえず、移動しながら話しません?」
( ^ω^)「いいおっ! いいおっ!! お家に案内してくれるんだおね!!!」
(;*゚A゚)「えぇ……まぁ……はい」
( ^ω^)「おほー!! 照れるのーちゃんテラカwワwユwスwwwwwwwwwwww」
(;*゚A゚)「えーっと、ちなみに何であそこにうずくまっていたんです?」
( ^ω^)「聞きたいお? 聞きたいお?」
(;*゚A゚)「えぇ……。一応……」
( ^ω^)「……」
( 'ω`)「……」
( 'ω`)「実は僕、引き篭もりなんだお。でも最初は頑張ったんだお。社会の歯車になろうとしたんだお。けれども他の人の視線が怖くて結局引きこもりに戻ったんだお……」
( 'ω`)「そして毎日変わらない日常を過ごしてたんだけど、気がついたらこの道端にいたんだお……」
(;*゚A゚)(あかん……何て声かけていいか分からへん……)
( 'ω`)「最初は異世界召喚来たー! って思ったお。けれども道行く人、皆が僕のことを笑っているような気がしてその場でうずくまって動けなくなっちゃったんだお……」
( ^ω^)「でも、のーちゃんが助けてくれたから安心だおwwwwwwこれから何とか生きていけそうだおwwwwww!!」
(;*゚A゚)「はぁ……どういたしまして……」
( ^ω^)「じゃあおっ! じゃあおっ! 次は僕が質問する番だお!!」
(;*゚A゚)「はぁ……」
( ^ω^)「のーちゃんはっ!! のーちゃんはっ!! 彼氏とかいた事あるのかおっwwwwwwww?」
(;*゚A゚)「いや……いないですけど……」
( ^ω^)「やったお!! やったお!! 道理で処女膜から声が出てると思ったお!!! おかげで僕のマイSUNも元気だおっ!!」
(;*゚A゚)「はぁ……」
( ^ω^)「じゃあっ! 次はっ! 次――」
(;*゚A゚)「あっ、付きましたよー」
( ^ω^)「おー、凄い大きな家だおねー。見るからに立派な石壁だお……。はっ!! もしかしてのーちゃんは王女様かおっ!? うはwwwwwww逆玉の輿キタコレwwwwwwwwwwwwww」
(;*゚A゚)「あっ! 若さーん」
( ^ω^)「若さん?」
( <●><●>)「だから、旧姓でよぶのは止めろっつってるだろ」
(#^ω^)「なんだお! お前のーちゃんの彼氏かお? やんのかコラ? お?」
(;*゚A゚)「ここの内藤さん、どうやら異世界からやって来たそうなんで、保護をお願いできますか?」
( <●><●>)「えーっと内藤さん? 異世界からやって来たとの事ですが本当ですか?」
(#^ω^)「そうだお! 異世界からやってきたお! 言っとくけど、お前らなんて俺の隠された能力を使えば3秒で壊滅させる事もできるんだお!!」
( <●><●>)「それは本当ですか?」
(#^ω^)「本当だお!! なんならやるかお!!」
( <●><●>)「確保ー!!!」
*
そこからは、もう芸術的に素晴らしい連携でした。
若さんの掛け声と共に5人位の人が一気に飛び出して来て、瞬時に内藤さんを拘束し、詰め所の中へ連れて行きました。
連れて行かれる途中に、
「嘘だお! 僕は能力なんてない3秒で壊滅させられる只のデブだお! いや、本当だお! だから痛いのはやめてお! あーー!!」
と叫んでいたのがとても印象的に残りました。
***
「あ、のーちゃんおかえりなさい」
と帰宅と同時に梨里ちゃんが声をかけてくれます。先程の事件で荒んでいた心を一瞬で癒やしてくれます。梨里ちゃんは本当に天使です。
「どうかしましたか? すっごく疲れたような顔をしていますけど……」
「いや……ちょっと異世界から来た人の対応につかれただけやから……」
と適当に言葉を濁します。全部教えるのは梨里ちゃんの教育に悪い気がするので……。
「ちなみにどんな人でした?」
恐らく同じ異世界から来たという共通点に惹かれたのでしょうか? 全く濁りの無い、キラキラした目で見つめられると辛いものもあります。
「うーんと……。とにかく明るい人やったかなぁ……」
といいところだけ抜き出して教えます。正直明るすぎてうるさかったですが、そこまで伝えなくてもいいでしょう。
「そうですか! でしたら、詰め所から出てきてこの街に一緒に住めるといいですね!」
「ハハハ……そうやね」
本当はそうは思わなくても、そんな希望に満ち溢れた目で見られたら、こう言うしか無いですよね……。
ちなみに異世界から来た人についての黒い噂は全くのデマだという事が判明しました。
デマだと判明した理由は舞凛惇さんと梨里ちゃんです。
まず、エルドラドに定住する人が少ない理由は、殆どの人が前の世界の知識を生かして、技術者として他の町に行くことが多いからだそうです。遠くの土地に捨てられるという噂は、他の町に送迎をしている所を見られた時に出たようです。
次に言語が通じない人や暴力的な人はすぐさま殺す。ですが、これは全くの嘘で、言語が通じない人にはきちんとこちらの言語を教えるそうです。暴力的な人は、反省するまでオリに入れる事はあるそうですが、殺す事はないそうです。
こういう誘いがありながらも、舞凛惇さんと梨里ちゃんは本人の強い希望もあり、エルドラドに定住する事にしたそうです。舞凛惇さん曰く、こちらの世界の方が技術が進歩しているので、私が教えられる事は何も無いから。とのこと。
舞凛惇さんはお兄ちゃんと一緒によく遊びに出かけていますが、一体何をしているのやら……。まぁいつも10歳以上年下の子と遊ぶより、同年代の友達が出来たことは妹の私としても嬉しいです。この勢いで彼女も出来てくれればいう事無しなんですが……。
「のーちゃん!! 僕もエルドラドに定住する事にしたお!! だから結婚するお!!」
という先程まで一緒にいた彼の声が聞こえた気がして店の入り口を見ますが、誰もいません。どうやら空耳だったようです。
「どうかしましたか?」
と梨里ちゃんが心配そうに私に声をかけますが、空耳が聞こえた気がして……と正直にいうのもなんだか馬鹿らしく感じます。
「いーや、何でも無いよ。さて、そろそろ交代しよか」
と言い、店番を変わります。今日出会った内藤さんはできれば技術者として別の町に行ってほしいなぁと思います。
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