異世界人が集まる街エルドラドのようです
真下
第1話 さすがにそれは犯罪だよ……
※カクヨムのフォントはゴシックがおすすめです。
余裕がある人はctrl+a→ctrl+cでコピーし、メモ帳に貼り付けてフォントをMS Pゴシック、サイズを12にして閲覧するとより一層楽しめます。
私の名前は鬱田乃々って言います。
エルドラドの片隅で小さな菜屋をお兄ちゃんと一緒に営んでいます。
お兄ちゃんが朝早くから材料の仕込みをして調理、それを私が日中販売するような形で経営しています。
儲けは……ギリギリ赤字を回避出来たり出来なかったりです。
お店を畳むということも考えたのですが、お兄ちゃんが「就職先を探すのが面倒臭い」と駄々をゴネるので今のところは考えていません。
そんなお兄ちゃんなのですが、1つ心配な事があるのです。
それは、今までに一度も彼女が出来たことが無い事なのです。
確かに顔はいいとは言えませんが、何より明るく面倒見はいいのです。
今日だって多分、公園に行って他の少年達と仲良く遊んでいると思います。確か今年で26歳になってますけど……。
正直、私だって心配ですよ。26歳の大人が10歳にも満たない少年達と楽しく公園で砂遊びとかしてるんですよ。
明らかに異質ですよ、異質。不審者としてご近所さんに通報されても文句は言えないと思います。
でも、お兄ちゃんはただ単に子供が好きなだけなんです。下心なんて絶対無いはずなんです。絶対に……。
え? でもちょっと待って? 下心って本当に無いのかな……。もしかして彼女が出来ないのってお兄ちゃんがロリコンだから? 小さい子しか愛せないから同年代の彼女が出来ないの? いやでもそれは流石に無いと……。
「ただいまー」
あ、噂をすればなんとやら。お兄ちゃんが帰ってみたいです。ちょっと聞いてみましょうか。
私は休憩室から出て行きながらお兄ちゃんに声をかけます。
「あ、お兄ちゃんおかえ……」
そこにいたのはもう見慣れてしまった情けない程不細工な顔をしたお兄ちゃんと、この辺りでは見ないような小汚い茶色の服を着た、4歳位の小さな女の子が店の入口にお兄ちゃんと手を繋いで立っていました。
「……」
「ドシタ?」
お兄ちゃん、流石にそれは犯罪だよ……。
***
(;*゚A゚)「誰……? その子?」
('A`)「さぁ……?」
(;*゚A゚)「さぁ? じゃないやろ!? 見知らん子を連れて帰るって……あぁ……」
(;'A`)「いや、ちょっと放っておけなくて……」
(;*゚A゚)「放っておけないって……野良犬とかや無いんやしさ……。犯罪になるんやないん?」
(;'A`)「いや、違うんだよ。まずは話を聞いて? ね?」
(;*゚A゚)「まさか……その子と結婚するとか馬鹿げた冗談は言わんといてぇね?」
(;'∀`)「そうそう、責任を取る為にこの子と結婚する事にしたんだけど……」
( * A )「あぁ……、そういう事やったんか……」
どうやら当初の予想は正しかったんだなと、その一言で乃々は悟った。
(;'∀`)「おーい、もしもーし。こっちの世界に戻ってくださーい」
(;*゚A゚)「ねぇ……親御さんに謝りに行こ?」
(;'∀`)「へ?」
(;*゚A゚)「ウチも一緒に行ったげるから……」
(;'A`)「いやいや、今の発言は冗談だから! 冗談!」
⌒*リ´・-・リ「あの……」
('A`)「おおっとそうだそうだ。乃々、何か食べるものを出してくれないか? 2人分。なんなら売り物の惣菜でも構わない」
('A`)+「責任は俺が取る」(キリッ
( *゚A゚)「2人分って……。その子の分は分かるとして、後1人分は誰なん? お兄ちゃんが食べるん? 夕食にはまだ少し早いと思うんやけど……」
('A`)「いや、俺じゃない。店の近くに1人この子の父親がいるんだ。そいつとこの子に分けてあげたいんだ。聞いた所によると、父親の方はもう何日も何も食べていないらしい」
(;*゚A゚)「何日も食べてないって……そもそもお兄ちゃん今日釣り行くとか言ってなかった? なんで魚釣らずに人釣って帰ってきとん?」
(;'A`)「いや、俺だって川釣りする予定だったんだけど、人が倒れてたら見捨てれないじゃん?」
( *゚A゚)「因みに川のどの辺なん?」
('A`)「ちょっと探検がしたかったので、街の西にある川のずーっと上流の方」
(;*゚A゚)「その辺りって殆ど人は入らんよね?」
('A`)「あぁ、河童がいるとか天狗がいるとか変な噂ばっか立ってるから、この辺りの人で好き好んで入る奴なんて皆無だろうな」
(#*゚A゚)「ちょっとお兄ちゃん! 危険な事はもうせぇへんってちょっと前に約束したばかりなのに何でそんなとこ行くん!」
(;'A`)「いや、常識的に考えているわけ無いじゃん……。現に俺、何十回も行ってるけど、河童は一度も会ったこと無いし……」
(#*゚A゚)「むー……」
(;'A`)「とにかくだ。こんな人が好き好んで入らないような場所に餓死寸前で倒れていたって事は……」
('A`)+「こことは違う異世界から迷い込んだと考えるのが妥当だろうな」
***
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「いやぁ、この度は食べ物まで恵んで頂いて本当に助かりました」
( '∀`)「いえいえ、俺も困っている人は放っていけない性分なんで……」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「え? でも最初に私が声をかけた時、無視して行こうとしましたよね?」
(;'∀`)「いやいや……そんな事は……ないですよ?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「でも娘の梨里が声をかけたらすぐに色々と話を聞いて、ここまで運んでくれたんで感謝はしているんですよ?」
(;'∀`)「ハハハ……」
( *゚A゚)「そういえば御二方の名前をまだお聞きしていませんでしたけど、お名前は何ていうんです?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「あ、これは失礼。私の名前は榊原舞鈴惇、そしてこちらは娘の梨里です」
⌒*リ´・-・リ「……よろしくお願いします」
( *゚A゚)「あ、こちらこそよろしくお願いします。あ、あと、彼が私の兄の鬱田毒男で私が乃々と申しますー」
(;'∀`)「ハハハ……今更だけどよろしくー」
( *゚A゚)「えーっと、お腹も満たされて落ち着いたと思うんですが、ちょっと聞きたい事があるんですけどよろしいですか?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「はい、全然構いませんよ。私が答えられる範囲であるなら何でも答えます」
( '∀`)「え? 今何でもって……」
(#*゚A゚)「ちょっとお兄ちゃんは黙ってて!!」
(;'A`)「ア……ハイ……」
( *゚A゚)「早速なんですけど、どうしてあんな所に倒れていらっしゃったんですか?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「えーっと……話すと少々長くなるんですが、私が住んでいた小さな村が山賊に襲われまして、娘と一緒に必死に逃げ、気がついたら道が分からなくなって……」
( *゚A゚)「川岸に倒れていた所を兄が助けたと」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「そうですそうです」
( *゚A゚)「うーん……」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「どうかしましたか?」
(;*゚A゚)「いえいえ、特にどうもしませんよ? じゃあ、そのかばんの中に何が入っているか教えて貰ってもよろしいですか?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「かばん? これですか?」
と舞凛惇は自分の後ろに置いてあるかばんに手を伸ばした。
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「と言っても、今は何も入ってませんよ。逃げる途中に全部食べちゃったんで……」
( *゚A゚)「食べた?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「えぇ、村に火をつけられたのを確認したんで、しばらくは村に戻れないと思い、家の中にある食べられる物をこのかばんに詰めて逃げたので……」
( *゚A゚)「あー、もう全部食べちゃったと」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「はい」
('A`)「なぁ……。娘がいるって事は母親もいると思うんだが、母親はどこにいるんだ?」
(;*゚A゚)「ちょっ……お兄ちゃん! 察して!」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「いやいや、別にいいんですよ。妻は梨里が生まれてすぐに病気で他界しました。なので、乃々さんが思っているような事では無いですよ」
(;*゚A゚)「いや……、えーっと何かすみません……」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ところで……。ここは何処なんでしょうか? 周りの建物や貴方達の着ている服を見る限り、私の知っている生活様式とは随分違う事は分かるのですけど……」
(;*゚A゚)「あー、えーっと……。そのー……」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「それに先程頂いた食べ物なんかは今まで食べたことの無いような味がしていましたし……一体どんな食材を用いたのかも気になります」
(;*゚A゚)「えーっと、そんな諸々全ての疑問は兄がお話しますので……」
(;'A`)「はぁ!? 俺!?」
(;*゚A゚)「だってウチ、外の人の対応するの初めてやし……。お兄ちゃんなら何回か対応したことあるんやろ?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……?」
(;'A`)「っつってもなぁ……どこから話したらいいのやら……」
(;'A`)「……」
(;*゚A゚)「……」
('A`)「まずはここは何処か、だな……。この街はエルドラドって言うんだ。規模は……。大きくもなく小さくも無くってところだな。北東の方にはもっと大きな街がある。そんな所だ」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「エルドラド……? 聞いたことが無いですね……。私達は一体どれだけの距離を移動したのでしょうか?」
( *゚A゚)「ちなみに山賊に襲われたという村の名前は……」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「コダイラと呼ばれてました」
( *゚A゚)「お兄ちゃん知ってる? コダイラってとこ?」
('A`)「いや、聞いた事が無いな……」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「じゃあ結構遠くまで来たんですね……」
( *゚A゚)「ちなみに村を出てどれくらい日数が経過してるんです?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「えーっと……多分10日は経ってるかと……」
('A`)「10日か……」
(;'A`)「なぁ……ぶっちゃけて聞くが、前の村に戻る気はあるのか?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「そうですねぇ……。戻れたら嬉しいですが、殆ど山賊に焼き払われているでしょうから、戻っても生活出来ないと思いますので、どこか新しい村を探そうかと思っています」
('A`)「そうか……。じゃあ、この村に住めばいいんじゃねーか?」
(;*゚A゚)「ちょっとお兄ちゃん!?」
('A`)「なんだよ。俺だって決まりは知ってるさ。それを知った上で提案してるんだ」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「あの……その決まりっていうのは……」
('A`)「あー、決まりっていうのはこの村に来たら、まず憲兵がいる詰め所のとこに行かなきゃいけないんだわ。今回はアンタが腹減って動けなさそうだったから、一旦ここに連れて来て飯を食わせたけど、今回は例外な」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「詰め所に行ったら何をされるんですか?」
(;'A`)「何って……。多分質問とかだと思うぜ。どこから来たーだとか、どうしてそんな色々変な格好してるんだーとかさ……」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「変な格好って……。私から見れば貴方の格好の方が充分におかしいですけどね」
('A`)「そうかも知れねぇな」
と言って舞凛惇と毒男は少し笑う。
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「じゃあ行きましょうか。憲兵さんがいる詰め所に。毒男さん案内してくれますか?」
('A`)「いや、多分その必要は無いと思うぞ」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「それはどうしてです?」
('A`)「ほら、俺がお前をおぶって歩いてた時、俺が他の人と話してただろ? そん時に俺の家に来るようにお願いしておいたから、そろそろ来るんじゃねーのか?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ。「じゃあそれまで待機ですかね?」
('A`)「そうだな……。っと噂をすればなんとやらだ。どうやら来たっぽいぞ」
( <●><●>)「えーっと……外の方がいるという通報があったのですが、こちらでしょうか?」
('∀`)「おう、若! ひっさしぶりー」
( <●><●>)「えーっと……そこの帽子を被っている方と、そこの少女でよろしいですか?」
(#'A`)「何だよ若~。無視すんなよ~」
(#<●><●>)「結婚して苗字変わったんですから、前の苗字で呼ぶのはやめろって言ってるでしょうが!!」
('A`)「知らねーよー。お前が何の苗字に変わったか知らねーけど、俺にとってのお前の苗字はずっと若松なんだよー」
( <●><●>)「そんなんだから貴方には彼女が出来ないということは20年位前からワカッテマス」
(;'A`)「うるせーな。そんなつれねー事言うなよな……」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「えーっと、この方が憲兵さんですか?」
('A`)「あぁ、幼なじみの若松で憲兵だ」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「あ、私は榊原舞凛惇と申します。こちらは娘の梨里。訳あって、こんな汚い格好で申し訳ないです」
⌒*リ´・-・リ「……よろしくお願いします」
( <●><●>)「あ、こちらこそどうも……」
( <●><●>)「では、一緒に来ていただいてよろしいですか?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「あ……。最後に1つだけ……。毒男さん。食べ物を恵んで頂いて本当にありがとうございました。……ほら、梨里もきちんとお礼を言いなさい」
⌒*リ´・-・リ「……ありがとうございました。それと……乃々さん?」
( *゚A゚)「はい?」
⌒*リ´・◡・リ「今度……宜しければ、料理を教えて貰えませんか? あの料理とっても美味しかったです」
(;*゚A゚)「えーっと、それは別にええんやけど……。あの料理作ったのはウチのお兄ちゃんなんよ……」
リ・-・`リ*⌒「……」
('A`)「……」
リ・-・`リ*⌒「……」
('∀`)「……」
⌒*リ´・-・リ「いえ、乃々さん。よろしくお願いします」
(;*゚A゚)「え? はい? 喜んで!」
(;'A`)「……」
( <●><●>)「もういいですか?」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「はい、大丈夫です。行くよ、梨里」
⌒*リ´・-・リ「はい」
('A`)「おい、若」
( <●><●>)「何です?」
('∀`)「こんど飲みに行こうぜ! もちろんお前のおごりでな!」
( <●><●>)「毒男のおごりなら考えないこともないですかね」
(;'∀`)「つれねーな、高給取りの癖によー……」
( <●><●>)「貴方と違って色々忙しいんでね。じゃあ舞凛惇さん、梨里さん、行きますよ」
;;;;| ,'っノVi ,ココつ「はい、よろしくお願いします」
***
時は流れて、私が榊原家族と初めて会ってから2週間が経とうとしていました。
けれども榊原家族がこの町に住み始めたいう情報は聞きません。
最初は言葉が通じるから何とかなると余裕ぶっていたお兄ちゃんも、時が経つに連れて少し心配しているように感じます。
このエルドラドと云う土地は、昔から異世界から来る人が多い地域でした。当然、私は今回初めてでしたが、兄は何人かの異世界人を発見して憲兵さんに報告したことがあるそうです。
その後、その人達は憲兵さんに連れて行かれるそうなのですが、エルドラドに定住する事になった人はほんの数名しか知りません。
では、定住出来なかった人達は何処に行ったのか? という話になりますが、正直な所わかりません。ただ、噂として、言語が通じない人や、暴力的な人はすぐさま殺し、それ以外の人は遠くの土地に捨てて帰っているのではないか、と言われています。
なんの根拠もない噂ですが、それがもし本当だとしたら、彼らは見知らぬ土地に捨てられたのでしょうか?
せっかく餓死から救ってあげたのに、どこか知らない遠くの土地で死んでしまったのでしょうか?
もしもそうだとしたら、保存食などをいっぱい持たせてあげて、別の村に行ける地図を渡して逃がして上げたほうが良かったのでは無いかと考えます。
駄目ですね。こうもお客さんが来ないと、変なことばかり考えてしまいます。
さて、今から夕方のピークを迎えるので、気合をいれようと意気込んだ直後、「ごめんくださーい」という声が聞こえてきました。
お店の入り口には誰もいないので……恐らくですが、玄関の方に誰か来ているのでしょう。
知り合いですとこちらのお店の方に顔を出すのですが……。
「はーい、今行きまーす」
と返事をし、少しモヤモヤした気持ちを抱えながら店の入口から少し離れた玄関の方に私は向かいます。
玄関につくと、どうやら先にお兄ちゃんが出ていたようで、大きい男性の来客者と談笑しています。
小さい少女の来訪者は私の存在に気がつくと、満面の笑みを浮かべてこう言いました。
「乃々さん! 料理を教わりに来ました!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます