第4話 〜吸血鬼の秘密〜

 レイナ:「どう? 少しは落ち着いた?」


カーミラ:「ふぁい、おくぁげすぁはへ……」


  タオ:「舐めるか喋るかどっちかにしろって。

      何言ってんだか分かんねぇよ」


シェイン:「たくさんあるので遠慮しないで下さい。

      次はハッカ味なんてどうですか?」


 ファム:「にんにく料理をペロリと平らげたり、

      飴で飢えをしのぐ吸血鬼ってのも前代未聞だよね〜」


カーミラ:「んぐ……大変お見苦しいところをお見せしてしまい、

      貴族として恥ずかしい限りですわ……。

      斯くなる上は死して汚辱をそそぐのみ!」


  タオ:「だから死なねぇって……」


 レイナ:「あなたがしっかりしないと、

      愛しのローラにも会えなくなっちゃうんだからね?」


カーミラ:「それは大丈夫!

      ワタシたちはもう永遠の愛を誓い合ったんだもの♡

      どんなに離れていたって心は繋がっているんだから♡」


  タオ:「その割にローラの家には辿り着けなかったんだな……」


カーミラ:「ワタシだってたまには調子が良くない時もあるわ」


  タオ:「はいはい、そういうことにしといてやるよ」


 エクス:「あはは……カーミラはローラのことが大好きなんだね」


カーミラ:「ええ、ワタシとローラの出会いは運命的だったの」


 レイナ:「そりゃ、まぁねぇ……」


カーミラ:「ひと目会ったその日から、二人は惹かれ合っていったわ♡」


 ファム:「ありゃ、語りはじめちゃった」


カーミラ:「そして美しい月夜の晩に、

      ローラのベッドでついに二人は結ばれたの……。

      組んず解れず激しく絡み合いながら、

      ローラの陶器のような透き通る白い肌に指を這わせ、

      鎖骨から乳房へと舌でなぞると──」


 エクス:「ワ〜〜〜ワ〜〜〜〜〜〜!」


 レイナ:「ちょっと、カーミラ!? ストップ、ストーップ!!」


カーミラ:「んもう、なによ! いいとこだったのに!」


 レイナ:「えっちぃのは禁止!

      いきなり何を言い出すのよ、もう……」


シェイン:「ちょっとドキドキしちゃいました」


  タオ:「オレも……」


 ファム:「ニハハハハ……

      青少年にはちょ〜っと刺激が強すぎたかもね〜」


カーミラ:「愛し合ってれば睦みあうのは当たり前のことでしょ?

      何がいけないっていうのよ、おかしな人たちね……。

      あーあ、せっかく少しでも

      ローラ成分補給しとこうと思ったのに……」


エクス:「そんなことで補給できちゃうんだ……」


シェイン:「どうやらカーミラさんの話を聞いて固まっちゃったのは、

      シェインたちだけじゃないみたいですよ」


 ファム:「うわ〜〜、ヴィラン達までドン引きさせるって……」


 レイナ:「今のうちにさっさと片付けちゃいましょう!」


ナレーション:

     心なしか動きの鈍いヴィランの集団をサクッと片付ける。

     色々とアホらしくなるけどまぁ仕方ないか。

     カーミラは一人楽しそうに、

     まるでダンスでも踊るように戦場を縦横無尽に駆け巡った。

     妄想パワー、恐るべし……。


 レイナ:「それはそうと、カーミラは戻ったらどうするの?」


カーミラ:「シュタイアーマルクに?」


 レイナ:「ええ」


カーミラ:「まずは満月の夜にたらふくご馳走を頂いて、

      それからカルンスタイン城の礼拝堂に帰って寝て待つだけよ?

      ローラのお日様のような温もりと、

      新緑の季節のそよ風のような残り香を抱きしめながら……」


  タオ:「何だかオレ、

      吸血鬼目線の話聞いてても違和感なくなってきた……」


 エクス:「カーミラは誰かと待ち合わせでもしてるの?」


カーミラ:「いいえ?

      モラヴィアのヴォルデンベルグ男爵から私のアジトを聞き出した

      スピエルドルフ将軍に退治されるだけよ?」



 エクス:「それってローラを残して死んじゃうってことじゃ……」


カーミラ:「やーね♪ 代々ワタシ達カーミラは、

      夜な夜なカワイイ娘をつまみ食いしながら真実の愛を探し求めるのよ。

      そして運命の伴侶と出会ったら、永遠の契りを結ぶの。

      そうすることで、たとえ肉体が滅んでも魂は永遠に繋がったまま、

      本当の意味で一つになれるのよ。

      どう? 素敵じゃない?

      魂が一つになる時、それはもう、

      睦みあって肌を重ね合うより気持ちいいんだから♡」


 レイナ:「ん、んんっ……えーつまり、

      その……儀式で魂を移すってことかしら?」


カーミラ:「ちょっと違うわね。

      ワタシはローラに種を残すだけ。

      それは、ワタシが死んだだけじゃ決して芽吹かない種……。

      愛するワタシの死を嘆き、

      ローラが自ら命を断つことで新たなカーミラに生まれ変わるのよ」


シェイン:「それがトワのチギリですか」


 エクス:「随分とロマンチックな運命なんだね」


 ファム:「少〜し悲しいけどね〜」


カーミラ:「気にしない気にしない!

      大方熱病の尻拭いをさせてる罪悪感で、

      罪滅ぼしの意味でもあったんじゃないかしらね?

      ワタシとしては役得な上に、お釣りまで来るようなものかしら♪」


  タオ:「なるほど。

      まるっきり救いが無いよりはマシかもしれねぇな」


シェイン:「でもいったいどんな感じなんですかね?

      シェインにはまったく想像もつきません」


カーミラ:「そうね〜……。

      さっきからあなた達があの黒いのと戦うときにしてるみたいに、

      記憶とか感覚を共有する感じかしらね。

      変身して記憶と感覚を共有したまま次の変身をするようなものよ」


 レイナ:「へぇ……」


 ファム:「だから誰でもいいって訳じゃないと」


 エクス:「上手く出来てるんだね、って言うのも変だけど」


カーミラ:「でもちょっと気がかりなことがあるのよね……」


 レイナ:「なにかしら?」


カーミラ:「暦だとそろそろ満月なのよ。

      先日スピエルドルフ将軍から手紙が届いてたから、

      今度の満月を逃すとどうなっちゃうのかしらね?」


 エクス:「それってどういうこと?」


カーミラ:「だからね、

      満月のお散歩からカルンスタイン城に帰る時に見つかっちゃって、

      その場は何とか逃げ切れるんだけど、

      次の日礼拝堂で寝てる間に退治されなくちゃいけないのよ。

      もしかして、このままじゃすっぽかしちゃわない?」


 レイナ:「……なんですって〜!? みんな、走るわよ!」


カーミラ:「え〜、走るの〜?」


シェイン:「シェイン取って置きの、

      抹茶味のアメちゃんあげるので頑張ってください」


  タオ:「あと頭ん中でローラのこと妄想でもしててくれ!」

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