第2話 〜迷子の吸血鬼〜

ナレーション:

     カーミラの後をぞろぞろと着いてきた、

     数だけがやたら多いヴィランを蹴散らし、

     僕達はカーミラを保護することにした。

     流石に放っておく訳にも行かないので……


 レイナ:「ねぇカーミラ、どうしてこんなところに居るの?」


カーミラ:「あら、ワタシのことを知ってるの?

      この姿では出歩かないようにしてるのに驚きだわ」


 レイナ:「まぁ色々とね……」


カーミラ:「実はワタシ、お友達を探していたの」


 エクス:「それがローラさん?」


カーミラ:「ええ、とてもチャーミングで素敵な娘なの〜♡

      ワタシの運命の人よ♡♡」


  タオ:「間違ってもここにゃいねーがな……」


シェイン:「お友達なら家に行けばいいのでは?」


カーミラ:「それがね、ひどいのよ!?

      いつもみたいに夜食を取りに人里まで降りたのに、

      カワイイ娘が一人も残ってなかったのよ。

      ちょっとつまみ食いしすぎちゃったのかしら……?

      仕方ないからローラの部屋に行こうとしたんだけどね、

      気がついたら周り中霧だらけで道が分からなくなっちゃって、

      ローラには会えないしお腹は減るしベッドが恋しいしで、

      途方に暮れていたらアナタ達に会えたって訳」


  タオ:「夜食ねぇ……」


シェイン:「ベッドってやっぱり棺桶ですかね?」


カーミラ:「それでお願いがあるんだけど、いいかしら?」


 レイナ:「安心して、私達がちゃんと送り届けてあげるから」


カーミラ:「嫌だわ、そんなことじゃなくって……、

      アナタの血を少しだけ──」


 レイナ:「ダメに決まってるでしょーが!」


ナレーション:

     レイナの空手チョップが見事カーミラのおでこに命中。

     カーミラはおでこをさすりながらも食い下がる。


カーミラ:「あ〜〜〜ん、い・じ・わ・る♡」


 レイナ:「言っとくけどチョコレートもないからね」


シェイン:「アメちゃんで良ければあげますよ?」


カーミラ:「も〜〜〜〜! お腹が減って元気が出ないよ〜〜。

      魔力が戻ればあっという間に帰れるのにぃ!」


 ファム:「あー、それね〜……多分無理だと思うな〜」


カーミラ:「なんで? どうして!?」


 ファム:「ここ、あなたの住んでる世界と違うから……アハハ」


ナレーション:

     あまり教えたくはなかったんだけど、

     状況がまったく分かっていないカーミラを納得させるために、

     ここがどこなのか説明して聞かせた。

     あちこち端折ったけど。

     かなりショックだったようで、青ざめながら崩折れてしまった。


  タオ:「とりあえず飯食おうぜ。パスタが伸びちまうよ」


 レイナ:「そうね、せっかくの料理がもったいないわ」


 エクス:「ねえ、カーミラも一緒にどう?」


ナレーション:

     僕が器によそってあげると、

     シェインから貰った飴としばらく見比べてから、

     おずおずと席に着いた。


 レイナ:「食べ終わったらどこへでも連れてってあげるから。

      それじゃ改めて、いただきま〜す!」


カーミラ:「……いただきます。

      人間の食べ物なんて、何百年ぶりかしらね……?

      もぐ……あら?……もぐもぐ……これは結構……

      もぐもぐもぐ……イケるわね……もぐもぐゴックン」


 ファム:「ん〜〜〜エクスくんの味付けは、毎度のことながら流石だね〜」


  タオ:「だな! 少ない調味料で食材の持ち味を最大限に引き出す!

      ク〜〜、今日の隠し味はなんだ?」


 エクス:「そんな隠し味ってほどじゃないよ。チーズとにんにくを……」


シェイン:「あ、やば……カーミラさん大丈夫ですか?」


カーミラ:「ふえ?……もぐもぐ……なには言っは?」


 ファム:「ニハハハハハ、全然大丈夫みたいだね〜」


ナレーション:

     カーミラが言うには、吸血鬼がにんにくに弱いと言うのは迷信だそうだ。

     多分貴族が使う香水とにんにくは匂いの相性が良くないため、

     吸血鬼=貴族=にんにくは合わない=にんにくが苦手

     となったんだろうと。

     他にも日光に当たると、全身から火を吹き出して燃え尽きるとか、

     銀の武器で致命傷を負う何ていうのは「後輩」たちにしか無いそうだ。

     教会や神聖な物には弱いらしいけどね。

     しかし銀のアクセサリーを身に着けて、

     日光浴する吸血鬼というのもなかなかシュールで想像し難い。


ナレーション:

     こうして、カーミラを交えての僕達のささやかな晩餐の時間は、

     賑やかに過ぎていった。

     いつもよりちょっと多めに作っていたのに、

     カーミラが想像以上にたくさん食べるものだから、

     僕は追加でオードブルまで作る羽目になったけど。

     全ての料理をみんな平らげると、後に残っているのは洗い物の山。

     久々に他人を交えた食事の楽しさと、

     みんなの満足した顔を思えば、大して苦にはならないけどね。

     僕が後片付けに取り掛かろうとすると、タオに止められた。


  タオ:「坊主、片付けは後回しだ。

      どうやらお招きしてないお客さん達のお出ましだぜ!」


シェイン:「夕食会は終わりましたよ。

      時間を守らないなんて伯爵夫人に失礼です」


カーミラ:「どれ、腹ごなしに少しばかりお相手しましょうか♡」


ナレーション:

     にんにくパワーか、

     はたまた同じ釜の飯を食った者同士の絆でも芽生えたのか、

     並み居る敵を千切っては投げ千切っては投げと、

     まるで獅子奮迅の如き活躍で、

     あっという間にヴィランの群れを片付けてしまった。


  タオ:「あんた、なかなかやるなー!」


カーミラ:「あら、そういうアナタもなかなかのものじゃない?」


シェイン:「ムフフ……バッチリ決まりましたね」


 ファム:「さてと。それじゃエクスくん、後の片付けはよろしくね〜」


 レイナ:「……片付け、私も手伝おっか……?」


 エクス:「……うん、お願い……」

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