割れた仮面

 その人はとても優しくて

 すごく周りに気を使っていて

 驚くほど腰が低くて


 静かにいつも微笑んでいた

 不平不満は耳にしなかった

 それは少し不自然なほどに


 いつの間にか甘えてしまっていた

 知らずにイヤな事を押し付けていた

 でも彼は何も言わなかった


 その笑顔の本当の意味を

 もっと早くに気付ければ良かった

 あの早朝より早くに


 別れが近付いた日

 彼の中のもう一人が目を覚ました

 壁越しに本当を語り続ける

 荒々しい怒りの声で


 次の日 またいつもの彼

 だけど知ってしまった僕は

 どことなくぎこちない顔


 とても優し過ぎて

 とても繊細だから

 この世界は息苦しいよね


 僕は何も出来なかったけど

 君の事は忘れないからね

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