初夏の気まぐれ

 無邪気な風が雲と戯れて それをじっと見ているヒゲのあの娘

 じっとずっと眺めているよ 時間を忘れて座っているよ

 邪魔しちゃ悪いよね そっとしておかなくちゃね


 峠を駆け抜けるとツバメ達がお出迎え

 おおっと、恋多き彼らに僕の声は届かないや

 新しい時代を繋ぐドキドキの旅はまだ始まったばかり


 もうスッカリ緑の中で初めての道を探しに行こふ

 碧の風に導かれて それは懐かしい童話のように

 ただ好奇心に満たされて まだ見た事のない景色を求めて


 開けてくる視界 聞き覚えのある音 感じる開放感

 そこはかつて記憶の底で干からびていた思ひ出の残り香

 空と海が溶け合った青い青い世界が広がっていた


 そう、確かここにみんなで来てた

 お弁当食べたり遊んだり

 あの頃と違うのは多分季節だけ


 もうあれから随分と経った筈なのに

 まるでそこだけ切り取られたかのようにここはあの頃のまんまで 

 不思議な感覚にちょっと惑わされてしまいそう


 暑くなったらここも賑やかな声が響くだろ

 幼い頃の僕がきっとまた遊んでる


 帰り道、ヒゲのあの娘はもういなかった

 無機質な風景だけが続いてる

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