第20話 死ぬ時、良かったと、思えるように

 私と瑛にぃのキスは、数分にも及んだ。

 唇を重ねていると、瑛にぃが舌を私の口の中に入れてきて、私の舌と絡める。

 それだけで、体に電気が走ったような衝撃が、私を襲う。背中がゾクゾクとして、何か得体のしれないモノが、後頭部から首の裏側をモゾモゾと動いているような、感覚がする。

 なんだろう、これ……なんだろう。初めて味わう感覚だ。

「はぁっ……」

 私も瑛にぃの舌を、舐める。侵入してきた舌を押し返すように力を込め、口の外で、瑛にぃの舌を何度も、何度も、舐めた。

 気持ちが良い……凄く凄く、気持ちが良い……。

 私はたまらず瑛にぃの唇に自分の唇を押し当て、今度は私がえいにぃの口の中に、舌を侵入させた。

 瑛にぃの口の中の全てを、私の舌が舐め回す。頬の内側も、舌の奥も、歯の一本一本も、舐める。

「ぷはっ……はぁっ……は……」

 私は口を離し、長かったキスを終わらせ、瑛にぃの顔を見る。

「あ……あは……」

「はは……」

 瑛にぃの瞳は潤んでトロンとしており、口からヨダレを垂らして、顔を赤くしていた。

 凄く、凄く可愛い。

 私は思わず瑛にぃの胸に自分の頭を押し付け、瑛にぃの体を抱きしめる。

 不思議と心臓は落ち着いていて、脳だけが興奮しており、今ならどんな事でも、出来そうな気がする。

 お酒を飲むと酔って万能感が沸き、普段しないような行動を取ると言うが、今まさに私は、瑛にぃに酔っている状態なのだろう。

 なんでも出来る。出来る。出来る。

 私はそっと、瑛にぃの下半身へと手を伸ばした。するとそこには、明らかに膨張している突起物がある。

 私はそれを、ゆっくり、ゆっくり、優しく、ズボンの上から撫でる。

「……千香……」

 瑛にぃは声を漏らし、私の頭を掴んで、ギュッと抱き寄せた。

「気持ちいい……?」

「あぁ……」

 瑛にぃは小さくかすれた声でそう言い、更に私の頭を抱きしめる。

 瑛にぃの声が、行動が、私の気持ちをより高ぶらせた。

 私は少し力を込めて、瑛にぃの突起物を撫でる。ギュッギュッと、上から下まで、全てを包み込むようにして、愛情を込める。

「千香……好きだ……」

 その声を聞いた途端、再び私の背中に電気が走り、力が抜けてしまう感覚が私を襲う。

「あぅぅっ……私も、好きだよ、瑛にぃ」

 私がそう言うと、瑛にぃは私のオチチへと、手を伸ばす。

 瑛にぃの体と私の体に挟まれているオチチは、グニュッと変形しているので、私は瑛にぃの手を受け入れるように、少しだけ体を浮かす。

 すると瑛にぃは、ブラウスのボタンを器用に片手であけ、そして、私のタンクトップのさらに奥の、ブラジャーの中へと、手を入れた。

 温かい瑛にぃの手が、私の胸の突起に当たり、そこを中心に私の体全体が、しびれてしまう。

「ひっ……ひぁああっ!」

 あまりの快感に、私はつい、大きな声を上げてしまう。

 まさか、好きな人に触れられる事が、こんなに気持ちのいいものだったとは、思っても見なかった。

 こんなの……声を出さずにはいられない……。

「あっ……ああぅぅ~っ……!」

「……凄い、柔らかいな……」

 瑛にぃは優しく、しかし力強く、胸を揉んでいる。

 突起物を指で挟み、そこを指先でクリクリと動かし、手の平全体で上下に動かす。

「瑛にぃっ……触り方……えっちぃよ……」

「嫌……だったか……?」

 瑛にぃは手を止め、私の胸から手を引き抜こうとする。

 私は焦り、首を横に振った。

「ううん、ううん……違う……わ……私、こういうの、初めてで……変な声出ちゃうし……恥ずかしい……」

 私がそう言うと、瑛にぃはやはり手を引き抜いてしまい、そのまま私の頭をポンと叩き、撫でた。

 ……なんだろう、胸が、とても寂しい……寂しいと感じる……。

「そうだよな……すまん」

 瑛にぃは私の体を床へと優しく寝転がせ、そのまま立ち上がり、布団を敷く。そして電気を消して、布団の上へと、座った。

「おいで、千香……」

 私は薄暗くて良く見えない視界の中、瑛にぃの輪郭と声を頼りに、瑛にぃへと近づく。

 私の指先が瑛にぃの体に当たると、瑛にぃが私の腕を掴み、優しく引っ張る。

 そのまま瑛にぃの膝の上に乗り、瑛にぃの体を足で挟むような形で、体全体で瑛にぃにもたれ掛かり、両手で抱きしめた。

「これで、恥ずかしくないだろ?」

 瑛にぃは私を抱きしめたまま布団に横に倒れこむ。

「うん……さっきよりは」

 瑛にぃは私の顔に自分の顔を近づけた。

 そして私がかけている眼鏡をスッと取り、布団の外へと置き、ジィッと私の顔を、見つめる。

「……可愛い」

「あああぅぅっ……可愛くないよ」

「いや……千香は可愛い」

 瑛にぃは残りのブラウスのボタンを、片手で開けている。指先は器用なようで、直ぐに全てのボタンを開けられ、私の体からブラウスを脱がそうと、肩に手をかけた。

 私は瑛にぃの力に呼応するように、体を動かしブラウスを脱ぐ。暖房は入っているのだが、夜という事もあって、少し肌寒く感じる。

 瑛にぃはそれを察してか、グッと布団を引っ張り、私の体と瑛にぃの体に、布団をかけた。

 そしてそのまま、私の背中に手を回し、ブラジャーのホックを片手で外す。胸の閉塞感が開放され、なんだか裸になってしまったような感じがする。

「あぅっ……」

 私が口から思わず声を漏らすのと同時に、瑛にぃは私のタンクトップをまくりあげて、再び私のオチチを掴み、優しく揉みあげた。

「はっ……あっ……」

 再び背中に電気が走り、体がピクンピクンと、勝手に動く。

「感じてるのか……?」

 瑛にぃが、真面目な表情で恥ずかしい事を聞いてくる……素直に答えるべきだろうか……。

「ん……うん」

 私はコクンと頷き、瑛にぃの体にからめている足をギュッとしめた。

 すると瑛にぃの、男性器が、私の股間に当たり……なんだか、モヤモヤとした感覚が、私の恥部を襲う。

「……もっと、して……瑛にぃ……」

 私がそう言うと、瑛にぃは「ふっ」と笑い、先程より強く、私のオチチを揉む。胸の突起物を親指と人差し指で挟み、クリクリといじる。

「あっ……あっ……!」

 気持ちがいい……気持ちがいい……とろけてしまう。

 なんだろう……腰が勝手に、動いてしまう……これが人間の、生物の、本能なのだろうか。

「うぁぁっ……」

 私が動くと瑛にぃも、気持ちよさそうな声をあげた。どうやら私の股間と自分の股間がこすれあい、瑛にぃも、気持よくなっているようだ。

 嬉しい……一緒に気持よくなれているこの感じが、凄く、嬉しい……。

「はっ……あぁっ……」

「千香……好きだ……好きだ……愛してる」

「私も……瑛にぃ大好き……」

 瑛にぃも腰を動かし、私の股間にグッグッと、自分の股間を押し付ける。

「瑛にぃも、気持ちいいの……? 興奮、してる……? 私に……私に……」

「あぁ……すげぇ興奮してる……」

 嬉しいな……嬉しい……。

 その言葉が聞けただけで、なんだか凄く、満足だ……。

「瑛にぃ……私の体、好きにしていいよ……瑛にぃがしたいように、して……私の、ハジメテ……貰って……」

 きっと今はもう、年が変わってしまっている。

 カウントダウンは出来なかったけれど、それでも私は、満足だ。

 今こうして、瑛にぃと一緒にいる。瑛にぃと、ひとつになれる。

 それだけで私は、幸せでいられる。

 この時を忘れないように、一番思い出しやすい記憶の引き出しに、入れておこう。

 そしてずっと、ずっと、大切にして生きていこう。

 辛い時や苦しい時、この時を思い出して、元気を貰えるように。笑顔になれるように。

 そして、こういった記憶を積み重ねて、積み重ねて、死ぬ間際、良い人生だったと、口に出来るように、生きよう。

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やってくるトラウマ ナガス @nagasu18

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