第19話 観音様

○翌日 昼すぎ 日本橋の下


  橋桁の数を数える龍之介。哲治郎と、櫻井、竜胆、ハチがそれを見ている。


龍之介「いちにーさん。にのしのご……ここや、ここ。旦さん、ここ、掘ってんか」


  土を掘り始める哲治郎とハチ。土の中から、蒼玉を身に纏った木製の観音像が現れる。

  その像を、ひねる櫻井。中から、白い粉が出てくる。


哲治郎「龍! お前!」

龍之介「知らんかってんよ! その……お父ちゃんに会う前に、綺麗なべべでも買うとかなあかんなと思て。その蒼玉、売ったら高いかと思ったんやけど、ただのギヤマンの珠やて。売れんかったんで、埋めたんや」

櫻井「アヘンについては」

龍之介「観音様が割れることすら、今知った」


  哲治郎と櫻井、観音様を光にかざす。


哲治郎「赤鼠が越後屋から盗んだ観音様に、間違いない」

櫻井「越後屋が否認し続けているアヘンの所持。これで、立件できる!」


  櫻井、龍之介を振り返る。肩をすくめる龍之介。


櫻井「龍之介! これは、がとある御店から盗んだ品物! お前がこの観音像を、盗んだせいで! アヘンの捜査が一年も遅れたのだぞ!!」

龍之介「はい! ごめんなさい!」

櫻井「(急に優しい声で)とはいえ……お前がこの盗品をさらに盗まねば、これは独楽乃助によって闇に葬られ、二度と奉行所の手には戻らなかっただろう。そういう意味では、その方が保管していたとも言える。(ハチを振り返り)ハチ」


  ハチが頷いて、龍之介と竜胆に縄をかける。


櫻井「観音様を隠していた罪は、除外いたそう。しかし、としてのお前達の罪は許しがたし。よって、奉行所で詮議いたす故、大人しゅうしておるがよい」

龍之介「は……はい……」


縄をかけられたまま、うなだれる龍之介と竜胆。


櫻井「哲治郎、火事場の検分じゃ、参れ!」

哲治郎「(逃げ腰気味に)いや、でも、先にりさと華を大黒屋に連れて帰らないと……大黒屋の義父が、心配しておりまして……」

櫻井「やかましい! 哲治郎! ついて参れ!」

哲治郎「は、はい!」


櫻井に引き摺られるように、奉行所に向かう哲治郎。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る