第14話 妹
○数日後 午後 大黒屋 庭先
大黒屋の前の大通りに、二台の籠がとまる。後ろに、哲治郎の実家のじいや(70)が付き従っている。
前の籠から、りさが出てきて、もう一台の籠を開ける。中から、哲治郎の妹、華(14)が顔を出す。りさ、華の手を取り、引っ張るように店の中に入っていく。
○同日 同刻 庭
哲治郎が薪割りをしている。
りさ「テツジさん! ただいま」
哲治郎「おかえり、りさ。(りさの後ろのお華に気付いて)お華?」
華「……兄上」
哲治郎の胸に顔を埋める華。
哲治郎も、優しく華を抱きしめる。
りさ「お正月までは退院してウチで過ごしてもいいっていうから、療養所の先生達の気が変わらないうちに連れて帰ってきたの」
哲治郎「おまえはいつでも思い立ったら即行動だな」
龍之介が、母屋の廊下を通りがかる。
哲治郎「(龍之介に気付いて)ああ、龍。この薪、風呂場に持って行け」
龍之介「へい。承知しました」
龍之介が、前掛けで手を拭きながら、庭先に降りる。
華の姿を見て、動きを止める。
華、龍之介の赤い髪の毛の色に一瞬、ぎょっとする。
哲治郎「りさの母違いの弟で、龍之介だ」
華、哲治郎の後ろに隠れる。
華「哲治郎の妹の華です。初めまして」
龍之介「旦さんの妹? いっこも似てませんやん。えらい可愛らしいなあ」
哲治郎「俺と違ってお華は病弱で、身体が小さいからな。これでも、もう十四歳だ」
龍之介「へえ。十歳くらいかとおもうた」
華が、龍之介を睨む。
哲治郎「お華、じい、小石川からご苦労だったな。疲れただろう? ゆるりと休んでくれ」
華とじいやがりさに案内され、離れに入る。
華の行く先を、ぼんやりと眺める龍之介。
哲治郎「龍、その薪、風呂場の方に運んでおいてくれ。俺は配達に行ってくるから」
龍之介「(華の方を見つめたまま)……へい、承知しました」
ぼんやりとしたまま、龍之介は頷く。
× × ×
○数日後 午前中 大黒屋 裏庭
裏庭の塀には、たくさんの少年達が華をひと目見ようと群がっている。
龍之介が箒を持って、塀にへばりつく少年達をたたき落とす。
龍之介「おらあ、お前ら、何しとんじゃ」
少年A「お華様を見に……」
一斉に頷く少年達。
少年B「龍ちゃん、あの子、大黒屋の展示会にはでないの?」
龍之介「仕事の邪魔じゃ、散れ!」
箒を振り回す龍之介。逃げ惑う少年達。
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