団体戦2

Aチームの人達が集まり始めていた頃、私達Bチーム25人は早々にグリスフ先生によって転移させられ森の反対側へと飛ばされていた。


みんな初めて体験した転移なのか騒つきが起こってる。


「ところで誰がリーダーをやるんだ?」


好青年と言った第一印象のリオがみんなに向けて言葉を放ったけどみんな互いの顔を見合わせるだけで名乗り上げる人は出てこない。


与えられた時間は15分だしそんなに悠長に話し合ってる暇もない。早いとこ決めないとね。


「はいはーい!それじゃあ私がやるねー」


気まずい空気を一掃してくれたのはリオの彼女アリス。


「リーダーは狙われると思うけど大丈夫?」


名乗り出なかった私が言うのもあれだけどね。


「うん。リオが守ってくれると思うし」


そう言われたリオは苦笑いを浮かべつつ、もちろんと言ったご様子。


グリスフ先生から渡された黒の腕章。それをアリスが付けたところで再度リオが声を上げた。


「それじゃあ作戦だけど何か案はあるかな?」


多分これもみんな考えてなさそうだし私なりの意見を言ってみよう。


「えーと、多分ライトとルナは正面から来ると思うから私達は両サイドから攻めるってのはどう?」


勝手なイメージだけど2人共猪突猛進って感じだし、学生にしてはかなりの実力者だから無理に当たる必要もない。


上手いことかわせるに越した事はないはず。


「うん、私もそう思う」


「だよな。ならリーダーを含めて15人が両サイドから攻める。残りの10人のうち5人はここで待機してライトとルナを迎え撃つ、もう5人は念の為に正面から攻める。どうかな?」


そっか、ライトとルナが来るって予想をするならわざわざリーダーを残しておくのは得策じゃない。ならあえて攻めさせて向こうの裏をかくって戦法。


中々リオは策士かもしれないね。


「それで誰が残るの?」


「う〜ん、やっぱりここはリオ?」


彼女直々のご指名。


恐らく向こうのリーダーはリディア。Cランカーだから私とアリスでやるって事だね。


けどアリスを守る役目はリオじゃなかったの?私的にはどっちでもいいけど。


「まあそうなるよな。じゃあ後は役割分担だけだな。それじゃあ君達がーー」







「あれが合図なのかな?」


「みたいだな。よし、みんな行くぞ!」


「リオは待機組だから行かないじゃん。レイア行こっ!」


的確なツッコミに肩を落とすリオに少しばかり同情しながらアリスの後を付いて行く。


「うん」


小さな花火が打ち上がってから十数秒後には作戦通りに森の中へと入って行く。


真ん中からは5人、左側は8人、右側は私とアリスを含めた7人で攻める。このうちの何人が相手のリーダーの所に辿り着けるかは分からないけど順調にいけば私もアリスがリーダーとぶつかれれば勝てる。


しかしおぼつかない足場、太陽光を遮断する木々。薄暗くて少し気味が悪い。


でも視界が悪くて更に歩きにくいのは向こうのチームも同じだから文句は言えない。


そのまま歩く事10分程。ようやく反対側から人が走ってくるのが見えてきた。


「来たよ!どうする?」


「アリスはここで待ってて。私達で倒してくる」


こんな所でリーダーのアリスの体力と魔力を消費させるわけにもいかないしね。万が一って事もあるし。


アリスを除く私達6人がまずは手始めに魔法を唱えようとしていると、まさかの正面からではなく横から火の玉が飛んでくる。


「なんだ!?」


私の隣の男子が声を荒げながら慌てて魔法が飛んできた方に顔を動かす。


私も当然そちらを確認。どうやら横側からも3人のAチームの人達が攻めてきてるみたい。


こっちは6人が固まって少し後方にはアリスが居る。対して相手は3人が前方、もう3人が横側に陣を取ってる。


地の利的にはこっちは不利って事だね。


「みんなは前の3人をお願い。私はあの人達をやる」


それだけ言い残して返事を待つ前に私は駆け出した。


いくつも飛んでくる火の玉や、突然盛り上がった地面から飛び出す土の腕を最小限の動作で避けつつ手をかざす。


「サンダーカーテン」


3人と私との間に出現した黄金の薄い膜。それによって彼らが飛ばしてきていた魔法を防ぐ。


すると魔法での迎撃を諦めた様子の3人は剣で膜を斬り裂いてこちら側にやって来た。


サンダーカーテンは魔法に対しては見た目以上の防御力だけど物理攻撃に対しての防御力は見た目通りでいとも簡単に破られる。


でもこの間に私と3人の距離は大分縮まった。残りは10メートルもない、一気に詰める!


近距離戦は得意じゃないけど苦手でもない。それに言い方は悪くなるけど学生相手に遅れはとらない。


流石に昨日の模擬戦はやり過ぎちゃった感はあるけど……つい身体が反応してしまった。


でも紫電って事はバレてないし、そもそも紫色の電撃自体使ってないんだからバレるはずもないからね。


「サンダー」


まずは目くらまし。走って来ていた彼らの足を止める雷撃を一撃放って、怖気付いているところに斬りかかる。


まずは1人目、無防備に上半身を晒しているところに剣を横に一閃。


「サンダーストーム」


そして倒れていく彼を確認して残りの2人に魔法を撃つ。流石に1人には魔法で防がれたけどもう1人には見事に命中、これで2人目。


「バーニングキャノン!」


ここで私の魔法を防いだ残りの1人が火属性の中級魔法を詠唱。


でもその魔法はマスターがよく使ってたから知ってる。威力は中級魔法の中でも上位クラスだけど発動までに時間がかかるし近距離戦向けじゃない。


これなら私の剣が届く方が速い!


そう確信した私は数歩踏み込んでこちらに向けられている手に斬撃を加えて追撃として胸に刺突。


予定通りに魔法が撃たれる前に方を付けることが出来た。


みんなの方も確認してみたらどうやら戦闘は終わったみたい。ただ仕方ない事だけどこっちの人数も1人減ってる。


でも6人倒した訳だし十分勝ちって言えるレベルだ。


「お疲れレイア!大丈夫だった?」


「大丈夫だよ。アリスは平気?」


「うん。私は平気だけど1人やられちゃったね」


申し訳なさそうに言っているアリスはやっぱり優しい人なんだろうな。そう思わされる表情。


「仕方ないね。その人の分まで私達が頑張ろう」


「もちろん!」

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