授業開始
「ーーであるからして、不足の事態にはひとまず身体強化をするのが鉄則である」
「…………」
紫電と遭遇した次の日である今日、ついに始まった、始まってしまった授業。1時間目はクソ暇でつまらない魔法基礎学。メガネをかけた真面目そうなスーツ姿の男の先生が横長の長方形の黒板に文字をどんどんと書いていく。
正直このへんの授業内容は真剣に聞かなくても分かる。身体強化、魔法、魔力、属性とは何かという基礎中の基礎。もはや常識レベルの事を話している。
「ふぁぁ」
この授業が始まってから何度目かのあくびをしと時、俺が待ち望んでいた授業の終わりを知らせる重々しい鐘の音が学園に鳴り響く。
「終わったぁ」
「まだ1時間目だよ?」
今日も麗しいレイアがそう言うが、今日はこの後模擬戦をやって終了。模擬戦なんてほとんど見てるだけだし、つまらない授業を聞かされるよりかは何倍もマシだ。
「魔法学は嫌いだからな」
「逆に好きな教科はあるの?」
「うーん、無いな」
強いて言うなら戦闘学は得意。得意と言うだけで決して好きにはなれない。結局は授業だからな!
って、次は模擬戦だから移動しないとな。
「ルナ、行こうぜ!」
オレの思考は筒抜けなのか、思い立った瞬間に現れたライトとリディア。リオとアリスは居ないが、どうせ2人っきりで闘技場に向かったんだろう。
羨ましい……。リオがアリスみたいな美少女と毎日イチャコラしてると思うと正義の鉄槌ならぬ、
けど美男美女カップルだからそんな気も起きてこないし、クラスメイトをいきなりぶっ飛ばす程の気性の荒さは持ち合わせていない。
そして闘技場に到着すると、どうやらオレ達が最後だったみたいでみんなは既にハゲジジイの前に座っている。
オレ達は後ろの方に座って手を繋いでいるバカップルの元へ。
「熱いねー!ヒューヒュー!」
こうやって冷やかすバカはそのうち痛い目にあうからみんなよく覚えておこうね。
そんなライトの騒がしくもどこか男の虚しさを感じさせるコールの中、リオとアリスは特に気にした様子もなくこちらに上半身を反転させる。
「遅かったね」
「寝てたからな」
こんな事言うまでもない。オレが寝るのなんて今に始まった事でもないしな。けど去年のオレを知らないこいつらはこれから知る事になる。
「ルナはもう少し真面目にしたらいいと思いますよ」
もう、リディアまでレイアみたいな事を言い出すんだから。止めてくれよ、こう見えても影ではXランカーだっての。
ハッキリ言って忙しい。だから授業中くらい寝かせてくれ。
こんな事をセシアに言ったらぶっ殺されるんだろうなぁ……。
もしあの世逝きの片道切符を渡されるならどうやってだろう?
一気に脳みそぶち抜かれて?それとも身体を真っ二つ?考えるだけで夜逃げしたくなりそうだ。
「まあ出来るだけ頑張るよ、出来るだけ」
あくまで出来るだけだからな。人には必ず限界がある。
限界とは他人が決める場合もあれば自分自身で決める場合もある。そしてオレは他人に指図されるのが嫌いだ。つまりオレの限界はオレが決める。
結果進歩というものをここ最近全く見せていないオレになるんだが……その辺りはどこかの廃棄場の隅にでも置いておけばいい。
「という事で初戦はルナとライト」
「よっしゃ!手加減はしねぇぜ?」
??
なんのお話?
「ほら早くしろ」
背筋を伸ばしながら舞台に上がっていくライトを見て、疑問詞を浮かべながらオレもその場を立つ。
「なにすればいいんだっけ?」
「もぉ、模擬戦やるって言ってたじゃん」
そーでしたー。
レイアに気付かされてようやく意味を理解したオレは意気揚々とその場でカンガルーの様に飛び跳ねているライトとは反対側から舞台に上がる。
「手加減はしないぜ?」
ライトはそう言うが、オレは否が応でも手加減をせざるを得ない。そうでもしないと学生なんて簡単に殺す事になるからだ。
「まあ頑張れよ」
まるで他人事の様にやる気の無い声で呟き、舞台の隅に何本も立てられている剣の1つを手に取る。
けどBランクって言った手前Dランクのライトになんか負けてはいられない。負けたら悔しいってのもあるが、流石に2つも下のランクに負けたらおかしい。
「ほら、早く剣持てよ」
一向に剣を持とうとしないライトに促すが、ライトはそれを嫌らしい笑みで返してきた。
そして唇を震わせる。
「悪いなルナ、俺はそんなの必要ない!」
自信満々と言ったご様子のライトの手に魔力が集中されていくのを感じる。
まさか……。
光り輝き始めたライトの手元に段々と剣の様な形の物が作られていく。そして光は弾け飛び、ライトの手には1本の剣が握られている。
にしても驚いた、1年生にして魔力を具現化させるとはな。ランクに似合わず洒落た真似してくれるじゃねぇか。
ならオレもあのドヤ顔野郎に見せつけてやるか。
魔力を手に集めそれを少しずつ放出。イメージするのは奴のと同じ剣。だがそれはライトのよりも素早く、そして強く輝いていき具現化を完了する。
騒めく闘技場。当たり前のように行ったこの行為は普通なら3年生で習う事だ。更に習ったからと言ってみんながみんな使える訳じゃない。精々2割程度の奴しか扱いきれないだろう。
つまりオレは天才でイケメンな優等生。うーん、カッコいいぜ。
「流石だぜ、そう来なくっちゃな!」
「格の違いってものを見せてやるよ」
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