グループ決め
眠い眠い眠い眠い、やっぱり眠い。
もうすぐ教室に着くってのに眠気は未だに覚めようとはしてくれない。欲求のままにこの場で寝てしまいたい。
誰が掃除しているのか、いつも綺麗な廊下を歩いていると教室から何やら楽しそうな声が聞こえてくる。友達もみんな出来たんだし当たり前って言えば当たり前だな。
それを特に気にとめる事も無くオレは教室に入り自分の席に着く。まだレイアは来てないみたいだ。
「ふぁぁ……」
ハゲジジイが来るのが9時……つまりあと20分もある!
そうと決まればすぐに行動。机は硬いからちょっと寝辛いが、この眠気の力でそんな小さな問題乗り越えてみせよう。
だが早々にそれは邪魔が入った事により中断する事になる。
「おはよう諸君!!今日もいい天気だなー!!」
教室中に響き渡るその声の主はもちろんライト・ブラント。今日もテンションが高い事がそこバカでかい声から伝わってくる。
あまりの
リオ・スタンロイドとアリス・リヴァテインはまだ来ていない。まあ居たら余計に騒がしくなるから居ない方がマシか。
何ともまあ
実際に努力とかしてるのかもしれないが、オレはそんな事知らないからオレにとってはただのバカだ。
睨みつけているのにも疲れ始め眠気によって
その整った容姿のリディアと目が合った事で眠気が吹き飛び目がハッキリと開く。
けれども交わった視線はすぐにリディアの方から解かれてオレの祝福タイムはあっという間に終わりを告げた。
にしても本当可愛いよなぁ。いや、可愛いと言うより綺麗。セシアと似た美しさだ。流石に胸はセシアには及ばないが、それでもこの歳にしては中々の上玉だろう。うん、将来が楽しみで仕方ない。
ちなみにこんな事を考えてるオレは将来が心配で仕方ない。だってただの変態じゃんか。これじゃあ結婚も出来ずに一生独り身なんて事になりかねない……!
あっ、でも最悪セシアにでも引き取ってもらえばいいか。血は繋がってないからオーケーオーケー。
って、いかんいかん。あんな人使いの荒いババアなんかと結婚したら絶対尻にひかれる。もし将来セシアと結婚する人がいたらそいつの死因は絶対過労死。死んだ魚の目をしてあの世に逝っちまうに決まってる。
「おはようルナ」
ハッ!そうだ、オレには天使が居たんだ!
「おはようレイア、オレと結婚しよう」
「え……?」
案の定意味の分からないとでも言いたげな顔のレイアを尻目にオレの上半身は突然机に倒れ込む。
そ、そういえば昨日の朝から何にも食べてない……。別に食う時間は合ったんだが何故か食べずに来てしまった。
「レイア……腹減った」
「朝ご飯食べてないの?」
「ああ……やべぇ」
腹の虫が鳴り次第に体の力が抜けていく。何で今まで我慢出来てたんだか。
食堂もまだ開いてないし、そもそもそんな時間も無い。完全に詰み状態。グループ決めが終わるまで我慢するしかないか……。
心配そうにオレの横まで来てくれたレイアを見上げて視界に救世主の如く飛び込んできたのは、なんと手作りであろうサンドイッチ!ラップに包まれたその美味しそうなサンドイッチを見るだけで更に腹が鳴る。
「これあげるよ、私のお昼ご飯何だけどよかったら食べて」
「いいのか!?」
レイアの昼ご飯という事でちょっと気が引けるがこの際後で何か奢ればいい。
「うん、口に合うか分からないけど」
「あ、あざす!」
レイアの手からサンドイッチをかっさらい、ラップを取って口へと放り込む。
う、美味い!!口の中に広がるタマゴとレタスの究極のマッチングがオレの腹と心を満たしていく。
目の前にいるレイアが天使に見えてきた……。
「レイアはいいお嫁さんになるな」
「サンドイッチだけで言われても嬉しくないよ」
相変わらずその微笑みには癒されます。本当に結婚しちゃいたい!いやむしろレイアを食べちゃいたい。
「ふぅ……ごちそうさま!」
ものの十数秒でサンドイッチを平らげたオレの腹は満足とはいかずとも、昼までの授業を乗り越えるだけの力はついた。
「レイア、昼何か奢るよ」
「え?いいよ、気にしなくて」
オレが食べ終わったのを見届けて席に着いたレイアはそう言うが、流石に貰いっ放しって訳にもいかない。金ならギルドで働いてるから腐る程持ってる。それに何年もこの街に住んでるから美味しい店もいっぱい知ってる。
レイアは寮に住んでるからこの街の出身じゃないだろうし。そりゃオレも寮に住んでるけどそれはオレの家がギルドだからって理由。普通寮を借りるのは他の街から来てる奴だ。
「金ならあるから気にすんな。レイアはこの街の出身じゃないだろ?」
「う、うん」
「ならついでに街も案内するからよ、飯食いに行こうぜ」
「うーん、それじゃあお言葉に甘えて」
よしきた!美少女1人ゲット!
何てのは冗談で、下心は一切ございません。本当です、オレを信じて下さい。
「よーしお前ら席に着けー」
オレがレイアとの昼ご飯の約束を取り付けたすぐ後にご登場したハゲジジイの一声でみんな各自の席に座り始める。
いつの間にかみんな揃ってたんだな、サンドイッチに夢中で気付かなかった。
「さて、今日は昨日言ってた通り実習授業のグループ決めを行う。
実習授業とは文字通り実戦で魔法を使い魔物と戦ってもらう授業の事だ」
これはどうやら毎年恒例のようで、去年も実習授業のグループ決めとやらをやらされた思い出がある。まあグループを決めるだけ決めてその後は参加してないけど。
何で参加しなかったか何て言うまでもないかもしれないが、部屋で寝てたからという毎度お馴染みのパターン。
「グループは2人以上6人未満。好きな奴と組んでいいぞ。それじゃあグループが決まった奴らから俺に伝えに来い」
途端席を立ち上がり仲の良い奴らと集まりだしたクラスメイト。もちろんオレはレイアと組む。
「レイア、組もうぜ」
「うん、私もそのつもり。よろしくね」
よし終わり。それじゃあのハゲジジイの所に行くか。
そう思いすっかり騒がしくなった教室で立ち上がるが、ここでレイアが意外な発言をした。
「他に誰誘う?」
「は?」
まさかレイアが他の奴を誘おう何て言い出すとは思わなかった。こう言っちゃ失礼かもしれないが、人を誘ったりするのは苦手そうなのに。
いや待てよ……?これはまさかオレと2人っきりのグループはイヤだぞって遠回しに言ってるんじゃないのか!?
そ、そりゃいきなり結婚してくれとか言い出す野郎と2人っきり何て普通に考えてちょっと危ないか……。
「けど誘うって言っても誰誘うんだよ?オレはレイア以外に仲良い奴なんて居ないぜ?」
まあ別に他に誰か居てもオレは構わないし、レイアがそんな事思って言ったとも思ってない。
けど誘えるような奴が居ないからなぁ……。
「まあそれもそうだね」
「んじゃハゲジジイに伝えてくるぜ」
反応を見る限りレイアはオレと2人でもオーケーみたいだ。安心安心……。
「よぉハゲジジイ、オレはレイアとチームでよろしく」
「お前なぁ……いい加減その呼び方はやめろ」
「だって名前知らないっすよ」
去年名乗ってた気はするにはするが、
てか今更名乗られてもハゲジジイはハゲジジイ。不動のハゲジジイだ。
「俺の名前はランド・グリスフだ、覚えておけ」
「了解っす。それじゃよろしくー」
ハゲジジイとの会話はてきとうに終わらせてオレは席へと戻ろうとすると、意外な人物からお声がかかった。
「あの、シュヴァル君、よかったら私達と一緒にグループ組みませんか?もちろんルビティアさんもご一緒に」
「リディア・ローティアス……」
あまりにも意外すぎて思わず口から彼女のフルネームが漏れた。近くで見ると余計に綺麗に見える顔立ちと
「名前、覚えていてくれたんですね」
嬉しそうに笑うリディアに軽く見惚れるが、本題の方を思い出し現実に戻る。
つまりリディアが言いたいのは、彼女を含めたアリス、リオ、ライトの4人とオレとレイアの2人を合わせて6人グループを作らないかという事だな。
うん、考えるまでもない。
「悪りぃ、お断りだ」
だって絶対ライトの野郎うるせぇじゃん。それにあんまり戦ってるところ見せたくないし。もし紫電がこの中に居て探られてるとしたら迷惑な事この上ない。だからあんまり輪を広げたくないのが本音。
「な、何でですか?シュヴァル君とルビティアさんを入れたら6人で丁度いいじゃないですか」
むむむ、このお嬢様中々にしつこいぞ。
「いや、オレにも事情があってだな」
こんな美少女の誘いを断るなんて罪な男だぜ。
けれどもそんなオレの言葉を物ともせずに段々と距離も縮めてくるリディア。
「他に誘いたい人が居るんですか?」
リディアとオレとの距離は既に皆無。もう彼女の顔がオレの目の前にある。それこそちょっと前に出ればリディアの唇はオレの物になる。
「そういう訳じゃないけど……」
ここまで押されるといくらオレでも弱気にもなる。
しかしここでオレに差し伸べられる救いの手。
「どうしたの?」
安定のレイア。席からこっちを見てたんだろう、オレのピンチに駆け付けてくれた。
「いや、リディア達が一緒にグループ組もうぜって言ったから断ってたんだ」
「何で?」
え……あ、そうだよな、レイアからしたらオレがリディアの誘いを断る理由が分からない。マジでオレがレイアと2人っきりになりたいんだと思われちまう。
けど言い訳の言葉も見つからない……どうしよう。
「えーと……一緒のグループでお願いします」
「ありがとうございます!
実はライトがシュヴァル君に謝りたいと言ってて……」
その言葉と同時にリディアの後ろからバツの悪そうな顔をして出てきたライト。
「えーと、昨日は悪かった!怒らせたみたいだったから謝りたかったんだ、すまん」
「ああ……別にいい。ってかそれが理由でオレ達を誘ったのか?」
わざわざグループを一緒にする程の事でもなかっただろうに。まあキッカケ作りには丁度いいのかもしれないが。
ライトも悪い奴じゃなさそうだし、とりあえずいいか。
でもリディアに誘われてちょっと舞い上がってた自分が恥ずかしい……。罪な男何て事は無かった。
「それもありますが、やっぱり人数が多い方が楽しそうじゃないですか」
何とも楽観的なお嬢様だ。多ければいいって事でもないだろうに。
けどレイアにもこれで同性の友達が出来るだろうし悪い事ばかりじゃないのは確かか。
「そうだな、よろしく」
「こちらこそ」
「って事でハゲジジイー、この4人もオレと同じグループに入れといてくれ」
すぐそこで様子を見ていたであろうハゲジジイに頼み、オレ達はリオの席にいるリオとアリスの元へ向かう。
ちなみにハゲジジイと呼ばれてため息をついてたおっさんは視界から弾き出しておいた。
「あ、ルナとレイアだよね!私はアリス・リヴァテイン、よろしく!」
着くや否やアリスが元気よく挨拶をして両手を差し出してきた。握手をしようって事か。
「ああ、よろしく」
「よろしくお願いします」
それをオレとレイアは握り返して次にリオの方へと視線を向ける。
「俺はリオ・スタンロイド、よろしく」
「よろしくな」
「レイア・ルビティアです、よろしくお願いします」
にしてもレイアは丁重だな。向こうはオレとレイアの名前覚えてたみたいだし名乗る必要も無いだろう。
こんな考え方しか出来ないオレがおかしいのか?
「敬語なんか使わなくてもいいよ。ねっ!」
「うん、俺達クラスメイトだし」
この2人は随分優しそうで常識がありそうな感じだ。もちろんレイアとリディアもそうだが。ライトに関してはいい奴そうだが常識はあんまり無さそう。
「う、うん!よろしく」
上手くやれてて何より。って、これじゃあ娘を見守る親父みてぇじゃんか。まだ16歳だってのに。
「シュヴァル君とルビティアさんは前から知り合いだったんですか?」
「いや、このクラスで知り合っただけだ。それとオレの事はルナでいい」
「私もレイアでいいよ」
「ではそう呼ばせてもらいます。
それにしても2人共仲が良さそうですね」
そうかそうか、まるでカップルの様か。嬉しい事言ってくれるじゃないか。
もちろんリディアはそんな事一言も言ってないが、オレにはそう聞こえる。
「ありがとよ」
「リディア達も仲良さそうに見えるよ」
「ありがとうございます。
特にこの2人はそう見えるかもしれませんね」
リディアがそう言い見たのはリオとアリス。確かにリディアがグループに誘ってきた時もこの2人だけは席で一緒に話してたしな。
「2人は前からの知り合いなのか?」
「知り合いって言うより、恋人だよ」
「恋人!?」
リオが言った、恋人という単語に大きく反応したのはレイア。レイアはこういうのには興味無いかと思ってた。
「そうそう、俺達を放って自分達の世界に入り込んじまうんだぜ?ったく、本当バカップルだよなぁ」
ライトが
「私とリオは幼馴染みだからね。一緒にこの学園に入ったの」
幼馴染みか、それはまたベタなパターン。
「そうなのか。まあお幸せにな」
「ありがと!」
幸せそうに見つめ合う2人に思わず苦笑い。ひとまずリオとアリスは放置しておこう。ライトが言ってた自分達の世界とやらにもう入り込んでるみたいだし。
「ライトとリディアまで恋人って展開はないよな?」
「私とライトは恋人じゃありませんよ」
「俺には春はまだ来ないみたいなんだ……」
まずその騒がしい性格を直したらすぐに訪れそうだけどな。顔はいいんだから、顔は。
リオとアリスみたいな美男美女カップルはそう多くないにしろ、ライトやリディアがその気になればすぐに恋人何て出来るだろう。
もちろんオレだってその気になれば!
「地道に頑張る事だな」
「よしみんな席に着け!」
オレが励ましの言葉をライトにかけるとハゲジジイが再度指令を出し、オレ達は席に着く。
励ましだけにハゲジジイってか?やかましい。
「グループ決めが終わったから今日のやる事はもう無い。では解散だ」
「よしレイア、行こうぜ」
「うん」
教室を出て行く途中リディアとライトも誘ったが何やら用事があるみたいで、リオとアリスもこの後デートだとかで予定通りレイアとオレのみで街に行く事になった。
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