第2話-4

「おまえ、渋谷迎撃戦の本当の立案者のウワサくらい聞いてるだろう」

 戦車ネタを振った小隊長に副隊長が聞いた。

「あ、やっぱり。あのウワサって本当だったんだ。で、てすよねぇ・・・」

 抜刀兵が、あははと少し力なく笑った。紫音には、彼女たちの会話の意味が全く分からなかった。

 話がそれたところで副隊長はまわりを見回した。

「なぁ、もっと、まともな作戦は無いのか?」

 話し終えた彼女の視線が紫音と交差した。

 まともな作戦は思いつかなかったが、試しても良さそうな案があった。

「地下からの接触はできないものでしょうか? 下水道を通ってビルもしくは近くまで行ければ、救出のチャンスは高いと思います」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 紫音の発言に、その場の全員が見合わせた顔をしかめた。

「あなたは、やはりまだ学生なのね・・・・」

 少しあきれた感じで中隊長の柏木が言った。

「誰も下水道なんかに入ったりしないわ。戦場のゾンビネタの中でも、下水道ネタは多いのよ」

 そう副隊長が言ったところで、紫音もハッとして思い出した。

 大都市の下水道には、ゾンビとその残骸が埋め立てる手間を省く意味もあって大量に押し込まれていると伝えられている。

 そして、不死のゾンビが今も地下深く蠢いていると考えられていた。

 そのため、大抵のマンホールはコンクリートで完全に埋められているのだ。

 自分の思いつきが、全く的外れで使えなかったことに紫音は少し落ち込み、そして焦る気持ちで胸が痛くなった。

 だが、そこで、紫音の後ろにいた抜刀兵が彼女の肩に手を置いた。

「なあ、おい。お前、所属はどこなんだ?」

 いきなりの問い掛けに、同僚の抜刀兵が横から割り込んで答えた。

「何だ、いきなり? うちらの後方予備抜刀隊だろうが」

「いや、そういう意味じゃないんだわ。どこの兵学校だったかなと思って」

「は、はい。ワンガン兵学校3年次抜刀隊です」

 二人の掛け合いを納めるように、紫音は振り向いて彼女に答えた。

「そうか、やっぱワンガンだよな・・・確かワンガンって言ってたよなぁ・・・あいつも」

「何の話だよ?」

 横槍を入れた抜刀兵がしつこく問いただした。

「てことは、あの魔法技能科か技術科?がある兵学校だよな?」

「まさか、魔法使いを使ってとか、下らないことを言ったら殴るぞ」

 全員の視線が、かなり冷たい。

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