第2話-5
ゾンビの大量発生からその後バンパイアの存在が確認され、そしてさらに20年の時がたって魔法を使える人間の存在が確認された。
ただし、その能力は微々たるもので、簡易的な超能力とも考えられていたのだが、近年魔法使い育成プログラムによる効果から戦力になる可能性が高まっていた。
「ん? いや、さっきのガナフ戦車中隊で思い出したんだけどさあ、魔法使いじゃないが、もしかしたら魔女なら呼べる可能性があるんじゃないかと思ったんだ」
「はぁ? ふざけてんのかぁ」
ほぼ全員が小首を傾げたが、柏木中隊長と副隊長だけは顔をあげて彼女を見た。
「魔女かよ・・・・」
「魔女か・・・詳しく話してくれない」
中隊長と副隊長の声は、あきらかにトーンが高くなっていた。
何かを期待した視線が、紫音の後ろに立った抜刀兵に向けられている。
「うーん。それが、ちょっと、話していいのかどうなのかも、よくわからないんだけど」
小首を傾げた口元に少し困った笑みが浮かんでいた。
「この腐りきった要塞都市に機密なんてあってないようなものだし、それにみんな口は堅いわ」
中隊長は少し身を乗り出して強い口調で言った。
「まあ、ここまで言っちゃったら話すしかないけど」
紫音の後ろに立っていた兵士は、一歩前に出て彼女の横に立った。
「わたしぃ、鬼月ルナと友達なんだぁ」
「はぁ。何だそれぇ! 自慢かぁ?」
ちょっと誇らしげに話したかどうかは別にして、誰かがすぐに突っ込んだ。
しかし、鬼月ルナという名前を聞き紫音の中で希望の炎が再び灯った。
「渋谷迎撃戦の本当の英雄、あの鬼月ルナ准尉ですか?」
紫音は見開いた瞳に希望の炎を燃やして彼女に尋ねた。
10万のゾンビに包囲され孤立した渋谷方面軍本部を救った真の英雄。
たった一ヶ月前の戦闘だったが、そのウワサが最前線で戦う若い兵士達、特に女性兵士達の希望と憧れの存在になりつつあった。
特に鬼月ルナという名前は、首都圏で生まれた若者なら知らない者はいないだろう。
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