残り27日 /1
「なぁ、神よ。一ついいか」
「———僕の事を呼び捨てなことは不問にするけど
突然どうしたんだいココノセ君?」
ここは白い空間
神の住む場所だ
ちなみに俺たちは一緒に紅茶を飲んでいる
ティータイムというやつだ
「————恋って何だと思う?」
「何か変なものでも食べた?」
「————いや、変なものは食ってないよ で、どう思う」
「よくわからないなぁ」
やはり神にも恋はわからないか
「じゃあ 神よ 愛ってなんだ?」
「それもよくわからないなぁ」
「じゃあ 恋愛は?」
「前者二つを合わせたもの?」
「神様って全知全能じゃねぇの?」
「——————ようやく神様って言ったと思ってたら失礼極まりないね
あと、僕は全知ではないよ、」
そう言って神は苦い顔をする
「全知じゃない? どういうことだ?」
「うーんとね、僕が知っていることは知っていることだけなんだ
何でもは知らないよ、全能だけど」
どこかの委員長様みたいなことをいう神
猫耳が頭に幻視できる―———けっこういいな
「ココノセ君は猫耳フェチなのかい?」
―———忘れてた......
「僕は思考を読めるんだよ
やろうと思えば猫耳にできるけどやる?」
「いやいい」
フェチではない
「なんだい?欲情しちゃうからかい?」
「ちげぇっていってるだろ」
思考が読めるんだからわかるだろ
「じゃあ 恋や愛について知らないのはそれを感じたことがないからか?」
「そうだね、僕には恋愛感情はないと思ってくれた方がいいや」
じゃあ こいつに恋愛感情を聞くのは間違いだったか
キャスティングミス
「あと詳しく言うと僕が知ってることは今現在から過去にかけてだよ
やろうと思えば、今から100年後までの事はわかるけどやらない」
「なんで?」
「ネタバレはしたくない主義なんだよ
今知ったら100年間は暇になるからねー
例えば来週のジャンプの内容とかはわからないんだ———」
そう言ってニヘーとした顔を見せてくる
「あ、あと僕は100年以内に限定されるけどタイムスリップできるよ」
さらっと、すごいことを言いやがった
全能だから何でもできるんだな
「それより君はあの子のところに行かなくてもいいのかい?」
「あの子?————あぁ澪のことか」
「澪?僕が知ってる限りあの子に名前はなかったはずだけど
君がつけてあげたのかい?」
「あぁ」
そう言って俺は首肯する
名前を聞いたら、そんなものはないというもんでな
『無』いから連想される『撫子』とも迷ったが
結局、零から連想される『澪』になった
ちなみに名字は雪椿 髪が白いから雪 椿はごろが良かったからだ
「澪————か、いい名前だね」
「だろ―—————でもそろそろ行かないとな」
この白い空間にはこの前まではなかった扉がある
そこをくぐるとあの部屋に続くという仕組みだ
俺の部屋に続く扉もある
どこでもドアみたいだ
「それでもさっさと行かないという事は何だい?
僕の猫耳を期待しているのかい?」
さっきの事を掘り返してきた
俺も嫌がらせし返さないと納得できんな
ならば————
「あぁそうだ!」
「えっ!?」
例にもなく取り乱す神
「お前の猫耳に期待しているんだよ
欲情しちまうかもしれないがほら早く見せてくれ
ほら早くお前の猫耳を思う存分モフらせてくれ
さぁ早く お前のフワフワでサラサラな耳を見せろ!
さぁさぁ!」
自分でも軽く引くぐらいに変態なことを言いながら神に近づく
「え ちょっ 待って待って!
僕が悪かったから謝るから!」
何だこいつ、押すのは得意だけど押されるのは苦手なのか?
そう、神が言っている間にも俺は「さぁさぁ!」と言いながら近づく
「ちょっと、待って!
あぁもう!、あっち行け――!」
そう言って俺の事をビンタする神
バチーンと心地いい音とともに俺の周りが光に包まれる
言い忘れていたが神の意思でも白い部屋に行くことはできる
「.......どうしたの?.....その顔」
「......猫耳にビンタされた」
「.....よくわからないけどたいへん......だったね.....」
「.....おう」
「....じゃ、今日.....もチェスしよっか」
今日も と、いう澪の言葉からもわかる通り
俺は毎日この部屋に来て、チェスをしている
だが、
「—————何で勝てないかなぁ.....」
本日も惨敗だった
一日目よりは善処したものの8割壊滅させられて負けた
勿論一日目と同じ条件でだ
「......やっぱすごいや」
「なんか言ったか?」
「いや.....なんでもないよ」
澪はぼそぼそとしゃべるから聞き取りづらい時がある
でも澪がなんでもないっていう事は、本当に何でもないのであろう
「そういや、昨日俺に話あるって言っていたけど何なんだ?」
「......いや、暦が行きたくない......って言ったら別にいいんだけど」
「そんなことはない、聞かせてくれ」
「....じゃあ、言うね」
「おう」
こいつがここまで覚悟を決めた顔で言うのだ
よほど大事なことなのだろう
―————だが、俺にもできないことはあるのだ
それ以外なら―———
「......わたしと、でーとしてください.......」
「もちろん喜んで!」
一瞬で食いついた
「で、そんなことがあったのに何で君はこっちに戻ってきてるんだい
へタレたの?」
みなさんお分かり通り、白い空間である
そして俺と神は黒いテーブルをはさみ対面する形で座っているが、
神は先ほどからなにかが気にいらないのか、耳のあたりを気にしている
「いやへタレたわけではないけど、ちょっとな」
「頼みごとかい?」
「あぁ」
そう言って首肯する
「デートしてくれって言ったはいいけど、どこに行くかは決めてくれってさ」
「まぁ それは男の義務みたいなもだからね」
神はうんうんとうなずきながら言う
「それでなんだが、澪が住んでいる場所がよくわからない以上
あいつが住む場所の近くはやめておいた方がいいと思ってな」
二日目にここはどこかを澪を聞いたら、よくわからない と返ってきたのだ
「それで聞きたいんだが、俺があの部屋に行けるってことは、
澪も俺の部屋に来れるのか?」
「勿論できるよー」
そう言って神は緊張感のかけらもない顔を向けてくる
「ならよかった―——」
「どうしたんだい?」
そう言って神は耳元の髪を気にしながら聞いてくる
―————カマかけてみるか
「いや、なんで耳元そんなに気にしてるの?」
「えっ!? そんなに気にしてる?」
「やっぱりか.......」
「あ!」
今頃気づいたってもう遅い
俺が澪のところに言ってる間に猫耳を試してみたら意外と良くて、
そうしようかどうか迷ってるところなんだろう
「そ、そんなんじゃないよ!」
心を読まれたようだが今回は好都合だ
「いいよ、いいよ、お前が新しい扉を開こうが俺には関係ないことだ
まぁ 長話もなんだしそろそろお暇するとしますか」
そう言って席を離れ
「デートの準備もあるしな
じゃあな 猫耳の神様」
笑いを含めて言いながら場を後にする
さて、今日は夏らしいイベント事もあるしそれに澪を連れて行ってやろう
―—そんなことを考えている九瀬の後ろで神は初めて羞恥というものを感じていた
pm,6:30
俺の部屋にある神の部屋に続く扉が開かれる
勿論開いたのは澪だ
「う....わぁ......!」
すると何故か可愛い声で、喜んだ声を上げる
「どうかしたのか?」
「.......はじめてこんな場所に来たから」
「こんな場所?」
「うん!」
そう言ってテコテコと俺のフィギュアの方へと向かい
じろじろと舐めるように観察を始める
「触るなよ」
澪はそんなこと当たり前だといったかのように首肯する
―———先ほど言ったフィギュアというところからわかる通り
俺はオタクである
だからこそこんな異常な事態にもすぐ対応できたのだな
二次元慣れって恐ろしい
―———そんなことはともかく
「デートするんだろ」
すると澪は、はっ とした表情をしてから
「うん!」
と元気よく返事してきた
ドン!ドン!ドン!と、大きな太鼓の音が周りに響き
ザワザワという人々の喧騒がそれに共鳴する
普通の日だったら、ただうるさいだけの不協和音に成り下がる二つの音が
今はこの上ない最高の音楽に聞こえるのは、
祭りというものが持つ一つの魔力なのだろうか
「......暦!これ買ってもいい!」
そう言って澪が俺に差し出してくるのは、祭りの露店によく打っている
ピカピカ光る玩具だ
「それは.....ダメかな?」
「え~何で?」
「いや要らないし.......後でうまいもの食わせてやるから......な?」
「......ならいい!」
目をキラキラと輝かせて食べ物に思いをはせる澪
それにしても今日は澪よくしゃべるな
いつもこれくらい話してほしいものだが
その後たこ焼きを買った
道のわきの縁石に座り人通りを眺める
俺のわきでは澪がはふはふと音を立てながら、たこ焼きを冷ましほおばっている
「ちゃんと冷まさないとやけどするぞ」
「だいじょーぶ」
そう言って本日二個目のたこ焼きを口へと運ぶ澪
そして、ニヘーと、いう緊張感のかけらもない笑顔を見せてくる
―———こんな風に描写してたら俺も食いたくなってきた
「一個もらうぞ」
そう言って澪が持っていた八個入りのたこ焼きを一つつまみ
口へと放り込む
「—————あっつ!」
だが、予想以上に熱かったので素直な感想が出てくる
「だいじょうぶ!?」
あまりの熱さに涙が出ていたのか心配される
「だ、大丈夫大丈夫 火傷はしてないっぽいから」
虚勢を張る
実際はめっちゃ痛い、口の裏の皮ベリベリに剥けてんじゃねぇのか
自分でも思うがすごく下手な演技だ
「ならいいけど......」
だが澪は俺の精一杯の虚勢には気づかない
「でも......急にとるのはやめて.....ね?」
「お、おう、それはすまなかった」
一個でも多く食べたかったのか注意される
目がマジだった
「ふぅ」
たこ焼きも無事食べ終わり、縁石で休むという名目の人間観察を始める
祭りという事もあってか本当に様々な人がいる
学生もいれば、浴衣を着たカップル、コスプレをしている人もいる
勿論じいさんやばあさんもいるわけであって
老若男女入り乱れるとはこういう事なのだと実感させられる
「————暦か?」
「あん?」
後ろから澪のものとは程遠い男の声が聞こえる
「げ」
「げ、とは何だ げ、とは」
後ろにいたのは、花菱 葉月 俺の親友であり、腐れ縁の持ち主である
こいつの紹介をしろと言われても、一言でいうなれば
ラブコメによくいる親友と厄介者を足して二で割った感じだ
右手はどこかで買って食べたのか、フランフルトの棒らしきものを持っている
「いや、いやな奴に会っちまったなぁって」
「何?俺は害虫か何かなのか?」
「うん」
「否定して!?」
まぁ、こんな奴だ
「—————なんだ一人で祭りか? 寂しい奴だな」
―———一人?
あぁ、こいつの立ち位置じゃ、うまい具合に澪が見えないのか
今は好都合だが
「そういうお前はどうなんだよ」
「俺か? マイリトルシスター のお守りだよ」
「あぁ 香織ちゃんか」
「そ」
「今はどこに?」
「神輿が見たいとか言って本殿に行ったよ」
「そうか—————
―——で、お前は一人になったから、知り合いを探していたと」
「否定はしない」
そう、何気ない話をする俺達の横で居心地が悪そうに澪がもじもじする
『悪い、もうすぐ終わる』
『.....うん』
澪と俺にしか聞こえない声で話す
やはり、人見知りをする澪にはきつかったか
―————まさか、注文もできないとは思わなかったが
「じゃあ、いつまでもここにいてもなんだしな、お暇するよ」
「あぁ」
そう言って花菱は今来た道を戻って
「へくちっ」
行かなかった
気まずい沈黙が俺と花菱(+澪)の間に流れる
「————暦、今のって」
「ゴホッ!ゴホッゴホッ!やばいなー風引いちゃったのかなー」
「いや、今のって」
「なになに、風邪がうつると悪いから離れるって?
どうぞどうぞ」
「嘘つくな」
やはり俺の三文芝居で騙せるのは澪だけのようだ
「そっちに誰かいるんだな」
「頼むから帰ってくれ」
「————」
黙ったまま花菱は俺の方に来て、俺の横を覗き込む
―———澪の方だ
「————っ!」
息を詰まらせ軽くのけぞる花菱
それも仕方ない 澪は普通に美少女なのだから
普通で慣れてしまった俺たちにとっては刺激が強すぎる
「————暦、このことお前の関係は?」
「——————従妹みたいな?」
「血のつながりが疑われるな」
「黙っとけ」
澪が「えっ!」と、声を出して驚いているが
そういうことにしてくれ、とアイコンタクトを送る
すると、不満そうだが、分かった....という感じで見てくる
「じゃあ口説いてもいいよな」
「あ!?」
「お嬢さん、お名前は?」
そう言って突然イケボになる花菱
「ちょ、お前やめろ」
「シャァァァァァラッァァァァップッ!
俺は今この女性に聞いてるんだ!」
そしてまたも変貌する親友
―———親友やめようたい
そう考えている間に澪の方を見るとアワアワしていた
『あたり触らずの返答を頼む』
ぼそっと澪に話す
すると澪は グッ! と力強い合図を俺にしか見えない位置から送る
花菱―——こいつには、あの事さえ言わなければいいのだ
澪は軽く深呼吸し、いう
「初めまして、雪椿 澪です
九瀬さんの従妹で彼女です」
「ギルティ」
断罪判決を受けた
ビュオッ!と、音を立て棒を振り下ろす花菱
だが、ぶつかる寸前で横によける
「あぶねぇぇぇぇ!」
「何が危ないのだ、リア充よ、
リア充ならばこの程度の非リアの攻撃ぐらい受け止めろ」
こいつのキャラがブレブレで意味わかんねぇ!
―———めんどくさいから逃げるか
「あっ! おい!逃げる気か!」
「うるせぇ! 三十六計逃げるに如かずって言葉があるだろ!」
澪の手を引っ張りながら逃げる
「はぁはぁ」と、息を切らしながら本堂へと逃げる
「やっとまけたかな」
「暦...はやい....」
そう澪はがくがくと足を震わせながら言ってくる
「あ、すまん」
やはりあの部屋にずっといたからか体力がないのだろうか
「じゃあ、ちょっと休むか」
運のいいことにこの本堂は、石の段のようなもので囲まれており
そしてそこに座る
「「はぁ」」
二人そろって力が抜ける
「————今のところどれくらいクリアした?」
「800くらい」
「ペースいいな」
「ここからが本番」
「おう」
やはりあまり特別なものが必要なものはないので
澪が言う『お願い事』は、サクサク消費できる
―——だが、今日は疲れた
「神輿来るまでここにいるか」
「うん」
神輿がどんなものかわからないか。と、言った後に気づいたが杞憂だったようだ
二人で、人たちの波を眺める
こんな田舎町でも、祭りなのだ
町のほとんどの人が来てると思えるくらいの大賑わいだ
―———今、銀髪で長髪の人いたな
そういう人とはあまり関わりたくないので目を違う場所に移すと
ザ・マツリ! と、言った感じの祭りを全力で楽しんでいる人がいた
頭には仮面をつけ、右手には、戦国バサラの正宗のようにジャンクフードを持ち
左手も右手に倣ったように、綿菓子やリンゴ飴を持っている
と、いうか神だった
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