The legend master thief
宗次郎は、男をinfodrop奥の事務所へと連れて行った。その間は接客ができないので、店の扉に緊急でいつもは夜から深夜にかけてしか出番がない「closed」というプレートを掛けておいた。
「お前、まずは名前を教えてもらおうか。」
「俺は、組織の中ではストールと呼ばれている。」
「そうか。ストールよ、単刀直入に問うが、お前は何故引っ手繰りを繰り返していたのだ?」
「俺は上に言われてやってただけだ。詳しいことは何も分からねぇ。だからこそさっき俺は「俺が消えても何もない」みたいなことを言ったんだよ。」
「むぅ…。振り出しに戻るか…。少しばかり何かが掴めるかと思ったのだが…。取り敢えずお前は警察に引き渡す。付いて行くから出頭するんだな。」
「へいへい。」
「そういえばお前、盗んだ物はもう無いのか?どこかに保管してあるとか。」
「あー、それならもう使われなくなった倉庫がある。第二倉庫って分かるか?あそこに保管してある。」
「ふむ、なるほど。今は信じるしかない。もし良かったら3人に見てきてほしいのだが。」
「やっと話振られた!任せて下さい!行こう、琴葉、美香!」
「う、うん。」
「ま、確かに暇だったもんね…。」
宗次郎は3人を見届けた後、ストールを警察署へ連れていくために車に乗せた。
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ギィィ…
「なんだか薄気味悪いところね。」
「確かに、なんか出そうだわ。」
「うん、何か恐ろしいことが起こる予感…。」
「何か落ちてきそうなくらい色んなところが傷んでるわね。」
「ごめん、抽象的すぎて何一つ分かんないよ。」
「そんなことより早く盗品を見つけましょ。」
「私のツッコミ流したな、おのれ花音め…。」
美香は静かに拳を震わせた。
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暫く探していると、何やら怪しく大きな箱を見つけた。そしてそこには固く錠がしてあった。
「なんか私たち毎回鍵に巡り合ってない?最早運命かしら。」
「花音そろそろ殴るよ?」
「み、美香さん?落ち着いて。ね?仲良ーく行きましょ?」
「そんな茶番劇は置いといて、」
「「置いとくんだ…。」」
「私に任せてくださいませ!!」
「誰!?」
そう言うと琴葉は腰のベルトから針金を取り出した。そして例の獣を具現化させた。
「琴葉嬢、お待たせ致しました。」
「「しゃ、喋った!?」」
「あ、どうも。いつも琴葉嬢がお世話になっております。私は琴葉嬢の専属精霊である、レボロバと申します。琴葉嬢からは親しみを込めて、レボと呼ばれています。是非皆様にもそう呼んで頂きたく思います。」
「は、はぁ…。」
花音たちが呆然とする中、それを全く気にせずに琴葉はレボロバに話しかけていた。
「レボ、あれ、出来るよね?」
「ええ勿論。私の聴力を舐めないで頂きたい。」
「じゃ、お願いね。」
琴葉は胸に手を当て、鍵穴に針金を差し込むと、少しずつ弄り始めた。その間レボロバは静かに耳を澄ましているようだった。
暫く弄っていると、レボロバは何かを感じ取ったのか目を見開いた。
「キタコレ!」
「キタコレ…?」
「キタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレキタコレ…!!!」
「レボロバ五月蝿い!」
「くぅ…。」
「でもありがとう。漸く開けられるわ。」
「では私はこれで。」
「待って、まだ何があるか分からないわ。もう少しだけ見守っていて。」
「温かい目というやつですな!」
「さぁ、開けるわよ。」
ギィィ…ガガガガガガ…
琴葉たちは、3人と精霊の力で扉を開けると、中を探索し始めた。
「へ…HERMES?これってもしかして!」
「花音どうかしたの??」
「ううん。これはこの前被害に遭った女の人の鞄かもしれないと思って。」
「えっ、そうなの?ということはここにあるもの全てが盗品ってことなのかなぁ。凄い量ね…、敵ながら天晴れだわ。」
「でもこんなに沢山どうやって運び出すの?また武田さんにトラック出してもらう?」
「確かにそうなるかなぁ。」
「流石の私の力でもこんなには運びきれないわ。」
「いや琴葉ちゃん何様だよ。」
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ブロロロ…
「ほら、早く降りるんだ。さっさと事情話して、さっさと捕まった方が気が楽になるだろう。タラタラして変に焦れてると緊張感が増すだけだぞ。」
「へいへい。そんなこと分かってますよーだ!ったく、五月蝿い爺さんだぜ。」
「爺さんって言うな!私はまだ56
だぞ!爺さんって言うな!」
ブロロロ…ゴォォォ…
「…居た。」
「!?上から何やら声が…!」
「おーい、ストールくーん!元気してた〜?迎えに来たよ〜♫」
「五右衛門様…。」
ストールと宗次郎が見上げると、背中にパラグライダーを装着した青年が笑いながらこちらを見ていた。手には何やらレバーのようなものを持っており、それで操縦するのだと思われる。肩には防具のようなものが付いていた。
「やあ、お爺ちゃん。ストールくんは返してもらうよ♫」
不気味なその微笑に恐ろしさを感じ、腰に付けた剣を抜いたその瞬間、青年はレバーに付いたスイッチを押した。すると、肩から弾丸が飛び出した。
それは宗次郎たちの周りに落ち、彼らを怯ませた。その隙に青年は急降下しストールを掴んで去って行った。
「ま、待て!」
宗次郎の呼びかけ虚しく彼方へと消えて行った。
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「武田さんに電話して来てもらおうよ。そろそろ連れていった頃だろうし。」
「じゃあ花音電話してよ。」
「私?じゃあ掛けるね。って、ここ圏外じゃん。」
「一旦外に出てみる?」
「そうしようか。」
スタスタと外へ出るために歩いていると、
「警察だ!通報があった。お前たちが最近の引っ手繰り犯だな!署まで来てもらおうか!」
「えっ、どういうこと…。」
「これは…、逃げる?」
「逃げちゃダメだよ!!」
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