喪失のプロローグ
「ねぇ琴葉、最近小学生だけを狙った誘拐事件が多発してるんだって。」
「あー、知ってるよ。ニュースでやってたもん。」
「ちょっと調べてみない?」
「また首を突っ込もうとして…、この前みたいに身内だけってわけじゃないんだから…。」
「美香はどう思う?」
「わ、私は…、この前2人に助けてもらったから、誰かのためになることは、進んで協力していきたいと思う。」
「だってさ!決まりだね!ねぇ琴葉!」
「仕方ないなぁ。」
2人だけにやらせるのは危険だと、琴葉は思っていた。それは、あまり良い予感がしなかったからである。
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「1度帰ったらニュースを録画しておいてくれない?何度も見れば、手がかりがつかめるかもしれないから。」
「うん、わかった。」
花音の頼みに、2人は賛同した。
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琴葉には、不安しかなかった。前のように身内の問題ではないので、簡単に足を踏み入れるべきではないのではないかと考えていた。
しかし、彼女たちは意気込んでおり、多分聞き入れてくれそうになかった。
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その頃花音は聞き込み調査をしていた。
単純に知らないという人は仕方がないのだが、問答無用で厳しい言葉を投げかけてくる人、何か知っているような素振り見せるも語ってくれない人などを見て、花音は世の中の厳しさや、自分の拙さを思い知った。
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美香はというと、インターネットを漁りに漁り、情報を集めていた。
各種サイトのニュースを読み資料としてまとめ、様々な掲示板を訪問してネット住民の考察を調べた。面白半分で語り合っているものもあったが、中には納得できそうな意見もあった。
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「警察も手間取ってるみたいね…。未だ犯人がどこにいるのかすら分かってないみたい。なかなか尻尾が掴めないから、神隠しだと騒いでいる人もいるわ。」
「美香、ありがとう。琴葉の方はどう?」
「あ、えーっ…と。被害がこれ以上広がらないうちに、なんとかしたいわね。」
「主観!」
「あ、うん。ごめん。」
「いや、良いの、これからもっと調べていけば。ね。それでね、私なりに聞き込み調査をした結果なんだけど、隣町に大滑り公園と呼ばれているところがあるんだけど、そこの近辺に住んでいる子供たちが立て続けに行方不明になっているそうなの。だからもしかしたら、そこに手掛かりがあるかもしれないわ。」
「あ、それ私も掲示板で見たわ。結構みんなそのような考察をしていたわ。」
「うん!そうと決まれば早速行きましょう!2人とも、準備して!」
「いや、何も決めてないよね…。」
「美香の冷静なツッコミ怖いわ。」
琴葉は思わず声に出した。
「それじゃあ、行っくぞー!」
「なんでそんなワクワクしてるの…。あはは。」
2人は妙にテンションが高くなった花音が心配になった。
「大丈夫なのかなぁ…。」
「安心して、美香が気になってるように、私も気になってるから。」
「同志!!」
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「ここが、大滑り公園…。いかにもって感じね。」
花音が目を輝かせている。ここはそれなりの広さがあり、子供がたくさん遊びに来るのだが、人通りはさほど多くなく、周りには高さ数メートルの木が生い茂り死角にもなりやすい。誘拐するにはうってつけなのだろう。ここ数日は誘拐の噂が立ち、あまり人は近づいていないようである。
ふと見ると、小学校3年生ほどに見える子供がブランコをして遊んでいた。
「あの子、1人で遊んでいて危ないわね…。全く…こんなところに1人だなんて、誰そ見るべけんや…。」
「いや、琴葉ちゃん何て?」
「あ、ごめんごめん。つい癖で。」
「琴葉って時々喋り方おかしくなるときあるよね〜。」
「花音、それは言わないでほしいです…。」
琴葉は、少し不貞腐れてしまったように見えた。
「ねぇ、2人ともあれ見て!!」
美香がブランコを指差し言った。
「あ、あれは…。」
見ると、1人の男が少年を連れ去ろうとしているようだった。
「あ、待ちなさい!!」
花音の叫びも虚しく少年を乗せた車は走り去っていった。
叫んでしまった手前、後に引けない気持ちと遣る瀬無い気持ちになってしまい、悔しさに拳を震わせた。
「4289っと。」
「美香、どうしたの?」
「あ、さっき一瞬車体が見えて、その時ナンバーが確か4289だったと思うの。あんまり自信は無いけど…。」
「よくやった!!でかしたぞお主!!」
「いや、琴葉落ち着いて。」
「でも完全に見失ってて追いかける術が無いよ。」
「うふふ、そこはお姉さんに任せなさい☆」
そういうと琴葉は、体に力を入れ始めた。琴葉の体に見えないエネルギーが漲っていくようだった。
「これで車を見つけられる!」
「どういうことなの?」
「まあまあ、兎に角付いてきてよ!行くよっ!」
「琴葉がそう言うのなら…、ね?美香。」
「うん。付いて行く。」
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「ふぅ。」
琴葉は、込めていた力を抜いて言った。
「ここよ。」
琴葉は、目の前にある大きめの一軒家を見た。その一帯は、とても活気付いていて、怪しさなど微塵もなく感じた。
「なんか私がナンバー覚えてたのって意味無かったね。よく分かんないけど。」
そんなことを話していると、
ドンドンドン!ドンドンドン!
「!?」
「い、今のって…?」
「誰かが壁を叩く音?」
「しかも1人ではないような感じね。」
「なんか急に恐ろしくなってきたわ。」
家に踏み入れようとしたその瞬間…
ドォォォォオオオン!!!と大きな音を立てて家の敷地内にある倉庫が爆発した。
「助…けて…。」
子供たちの声がしたのは、その直後だった。
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