いにしえJK!!
戸田 剣人
1 凄い能力を持った女子高生がいるらしいですよ
お犬様と私
「頼れるのは…、貴女だけなの…。どうかみんなを…、救ってほしい。」
「はい。この命に代えても…、必ず。」
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キーンコーンカーンコーン…
今日も始業のベルが鳴った。
「はぁ〜。毎日同じ事の繰り返しで、嫌になっちゃうなぁ…。」
私立輝山(かがやま)高校に通う2年生で16歳の古川琴葉(ことは)は、今日も時間に縛られた生活に嫌気が差していた。
彼女には、とんでもない秘密が隠されていた。しかし誰も、そのことを知る由もない。
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「こーとーはー!!帰りにファミレス寄ってかない?新しく出たパンケーキ、すっごく美味しそうだからさ!!」
「本当に!?花音が誘ってくれるなんて珍しいね!いつもは私が誘う側なのに…。ま、でも私も気になってたんだ〜。行こ行こ〜。」
「あ、ねぇ琴葉、美香も誘わない?」
「良いねぇ〜。たまには良いこと言うじゃん!誘お誘おっ。」
「ねぇ美香〜、この後用事ある?なかったらさ、ファミレスで新作のパンケーキ食べていこうよ。」
「あ、花音…。会話聞いてたよ。でもごめん、気持ちは嬉しいんだけど今日はダメなんだ。また今度誘って。それじゃあまた明日。」
「美香、一体どうしたんだろう?元気なかったね。」
その言葉に、琴葉も頷いた。
ファミレスには、2人で行くことにした。
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「ん〜、おいし〜。しあわせ〜。こんなに美味しいものが食べられて、私たちは幸せだねぇ。」
「あんまり一気に食べると琴葉も色んな所がたるんたるんになっちゃうよ?」
「はーい、気をつけまーす。」
2人が楽しく食事をしていると、窓の外に見たことのある人影を見つけた。
「ねぇ、あれ美香じゃない?」
「あ、本当だ。ねぇ、さっきよりもテンション低くない?大丈夫かなぁ…。」
「ちょうど食べ終わるし、ちょっと後をつけてみない?」
「あんまり下手に首を突っ込むのは悪趣味じゃない?貴女はまだ若いんだから、そんなうちから友人関係が壊れても大変だと思うよ。」
「え〜何それ変なの〜。同い年じゃん!でも気になるし、行こ?ちょっとだけだから!」
「本当にちょっとだけ?うーん…、仕方ないなぁ。ちょっとだけだよ?」
「ありがと!よし、尾行だぁ〜!」
「店の中で騒いじゃダメ!」
「ごめんなさい。」
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しばらく追跡していると、何か張り紙をしているのに気がついた。
2人はそこに駆け寄った。すると、
「愛犬を、探しています…?琴葉、これって…。」
「だから今日は元気がなかったんだ…。って、え!?花音!?」
花音はもどかしさを抑えられず、美香の元へ走った。そして、「美香!」と声を掛けた。美香は驚いたようにあっ。と声をあげ、その後
「花音?何で居るの?あ、琴葉ちゃんも??どうして?」
「いやぁ…。寂しそうに外を歩いてたから…。つい気になって。それよりこの張り紙どういうこと?」
しばらく美香は困惑した表情を浮かべていたが、ゆっくりと話し出した。
「実は、一昨日から飼ってる犬が居なくなってしまったの。あの子と行ったことのある場所は全部何度も回ったけと居なくて…。だからポスターを作れば何か情報があるかと思って。」
「ちなみに犬種を教えて?あ、あと名前。」
「柴犬だよ。多分一般的なものより少し大きめだと思う。名前はツナヨシだよ。もしかして探してくれるの?」
「勿論!私たちが協力するよ!!」
協力したい気持ちは山々だが、よくもまあ勝手に話を進めてくれたなぁと琴葉は思った。だかしかし断る理由も無いので一緒に探すことにした。
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2人はメールで送ってもらった写真を元に探していたが、なかなか見つからないので、1度美香と合流することにした。
3人が合流すると探した場所などを報告し合った。あーでもないこーでもないと話していると、美香のスマホに電話が掛かってきた。美香の知らない番号だった。
美香は恐る恐る電話に出た。
「こんばんは、はじめまして。吉野美香さんですよね。私は、吉野家が抱える借金の取り立てをしている者です。もしかしたら貴女は知らないかもしれませんが、お宅は多大なる借金を抱えているのです。可哀想に…、お父様は夜逃げされ、女手一つで育てていたお母様もそろそろ限界寸前なのではないですか?何度伺っても待ってくれと言うばかりで…、もうお母様では返せなさそうなので、代わりに貴女にお話をしておきたいと思ったのです。ですから、事務所に来ていただけませんか?」
美香は言葉を失った。
度々知らない人たちが家に来ているのは知っていたが、まさか借金取りだったとは知らなかった。涙が出てきた。父がいなくなった理由も、母の苦しみも知らずに生きていた自分に怒りを覚えて自然に溢れ出してきた。しかし、今は行ってはいけない気がした。
「ごめんなさい。今日は伺えません。愛犬を探しているんです。だから…」
「愛犬?もしかしてこれですか?」
そう言うと男は、一匹の犬にスマホを押し付けた。
「くぅぅ…」
「……。ツナヨシ!?どうしてツナヨシが。」
確かにそれは聞き慣れたツナヨシの鳴き声だった。
「きっと来てくれないと思いまして。事前の準備は万端なんですよ。来てくれますよね?」
「分かりました。今から向かいます。場所はどこですか?」
その時美香のスマホを花音が取り上げて言った。
「そんなの行く必要ないよ!危ないよ!愛犬なんかより美香の命の方が大事だよ!!」
言った瞬間、花音はしまったと思った。
「なんかって何よ!!もう知らない!!私1人で行く!!着いて来ないで!!」
2人は、あまりの殺気にぞっと悪寒がした。
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美香は、電話で聞いた住所のある事務所へと入っていった。そこには1人の男が座っており、その周りに取り巻きと思しき体格の良いスーツ姿の男が2人立っていた。
美香はあまりの恐ろしさに足が震えていたが、少しずつ近づいていった。
「ようこそ。ちゃんと1人で来たみたいだね。良い子だ。さて…」
「ツナヨシを返してください!!私はそのために来ました。」
「おっと、そんなもの簡単に返すわけないでしょう?ちゃんと代償は戴きますよ。お前ら、やれ。」
その合図を聞くと、周りの男たちが近づいてきた。そして、美香の衣類を脱がさんと手を伸ばしてきた。
美香は必死に抵抗するも男2人の力には到底及ばない。簡単に上着を剥ぎ取られた。
そしてスカートもあっさり脱がされ、シャツと下着だけになったその時、
バリンッ!!窓ガラスが割られる音がして、
「美ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そこから叫びながら勢いよく琴葉が入ってきた。
「美香、大丈夫!?あんたたち…、私の大切な学友に何してるの?」
「おまっ、お前誰だ!!いきなり何だよ!!くっ、あいつを追い出せ!!」
その声を聞いた美香を掴んでいた男の1人が琴葉に向かっていった。琴葉はその男の腕を掴み、思いっきり投げた。男は「ぐふぅ!」と声を上げで倒れた。
その直後もう1人の取り巻きが琴葉の元へ走ってきた。掴みかかろうとしてきたので、向かってきた手を両手で掴んだ。さっきは勢いで投げることが出来たが、流石に一対一では分が悪い。しかし、琴葉は意地を張って思いっきり投げ飛ばした。
2人が蹲るのを確認して美香の元に駆け寄ろうとしたその時。
「こいつがどうなっても良いのか!?」
いつの間にか座っていた男が美香にナイフを突きつけていた。
どうしようもない状況に琴葉は憤った。
「くっ、卑怯な…。」
「卑怯?僕はただ借金を返して欲しいだけです。邪魔はしないでいただきたい。」
「どうみても借金を取り立てようとしているようには見えないんだけど?」
会話をしながら打開策を考えていたが一向に解決しそうになかった。だんだん思考も回らなくなってきた。心も苦しくなってきた。
その状況を感じ取ったのか、男は言った。
「今すぐここを出て行け!そうすれば見逃してやる。さあ早くしろ!」
「美香を置いていけるわけないでしょ!!ふざけないで!!」
「ハハハハハ!!!どうすることもできんな!!威勢が良いのもここまでか!ざまあねぇな!!大人に逆らって良いと思うなよクソガキがァ!!」
ピクリ。琴葉の口角がかすかに動いた。と、その時、
「痛っ!!何なんだ!?」
男の頬にBB弾がぶつかった。頬を押さえ痛がり、美香を離したその隙に琴葉は男の顔面に拳を打ち込んだ。
男は鼻血を出しながら倒れていった。琴葉の背後に獣のような影を見た。
「お前!何者なんだよ!ふざけんなよ!ガキのくせに調子乗りやがって!!タダで済むと思うなよ!!」
琴葉はそのセリフを聞いて憤りを孕んだ声で叫んだ。
「ふざけんな!?こっちのセリフだ!!私の学友に手ぇ出しといてふざけんな?あんたみたいな若造ががこの世に生きてることが恥ずかしいわ!大人なら大人らしく真っ直ぐに生きなさいよ!!」
「はぁ!?何だババァみたいなこと言いやがって気持ち悪りぃんだよ!!」
「ババァで結構!!あんたみたいなやつにいちいちへこたれていたら、何百年も生きていられないわよ!!」
そう言うと琴葉は、背後にもう一度獣の影を浮かび上がらせた。
恐れおののいた男は、「覚えてろよ!」とダサい捨てゼリフを吐いて逃げていった。
琴葉はすぐさま美香に駆け寄った。
「大丈夫?怖くなかった?ごめんね、辛い思いさせて。もう心配ないからね。」
「琴葉ちゃん、後ろのやつは何?」
美香は怖がりながら尋ねた。
「ごめん、私、普通の人間じゃないんだ。年も1100歳を超えてるし…。これは私に取り憑いているものなの。黙っててごめん。」
「そっか、よく分からないけど、良いよ。だって琴葉ちゃんは私のことを助けてくれたもん。命の恩人が何者かなんて関係ない。さ、帰りましょう!」
琴葉は美香に服を着せ、立ち上がった。
「あ、扉が開いてる…。」
「あいつが出て行ったんだから当然じゃない?」
「違うの。出て行く前から空いていた気がするの。」
「え?」
「あー怖かったぁ…。」
1人の女性が2人に向かってきた。
「花音?」
その手には、エアガンが握られていた。
「もしかして、あいつを撃って私を助けてくれたのは花音なの?」
「そうだよ琴葉、急にいなくなっちゃったからびっくりした。探してる途中に美香のスマホが落ちててここが分かったわ。もしかしたらと思ってエアガン持ってきておいて正解だったわ。」
花音は笑って言った。それを聞いた琴葉は言った。
「昔、綱吉くんは生類憐みの令を出したけど、私にとっては2人を守れればそれで良いわ!」
二人は心底意味がわからないと思った。
「ま、愛犬の名前がツナヨシだったから頑張れたようなものよ。」
琴葉は言った。
「さっ、今度こそ帰りましょ!」
「うん!」
3人と1匹は笑いながら帰路に着いた。
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キーンコーンカーンコーン
「あー!今日も疲れたー!もう動けない!」
「琴葉、そんなこと言ってると身も心もダメになるよ?」
「酷い!」
「ねぇねぇ琴葉ちゃん、花音。この前行けなかったから一緒にパンケーキ食べに行こう!」
「良いねぇ!さ、花音立って!」
三人で行けることが、琴葉は心底嬉しかったのだ。
「はいはいわーかりましたー!」
花音も笑顔で立ち上がった。
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「えっ、店内改装のため臨時休業!?」
3人は、肩を落とした。
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