第5話 聞き込み調査

「さて、まずはどうしようか」

「聞き込みだな。俺たちはこの事件を知らなさすぎる」

 完全に部外者な上に現場は治安維持機構に取り押さえられてしまっている。これでは死因さえ分からない。

「うむ、では早速」

 積極的に行動してくれるのはありがたいが、彼女が聞き込みをしようとしたのは赤目の男性。

「おいおい、死神に聞こうとしてどうする⁉︎ リックが言ってたことを思い出せよ。どうせ何も教えてくれないぞ」

「しかし、死神と眷属の見分け方なんて知らないのでな」

「まさか教えてもらってないのか?」

「ああ、面倒臭いと断られてしまったよ」

 笑いながら答えるジャネット。

 俺は愛想はないが、やることはやってくれるゼロは意外と良心的なんじゃないかと思えてきた。それを笑って 済ますジャネットもジャネットだが。

「なら、俺が教えるけど目の色が赤いのが死神だ。それ以外の人、できればあの場にいた眷属に聞いてみよう」

「では任せてくれ。そういうのは得意だ」

 と意気揚々に街を駆け回り、聞き込みを開始したジャネットだがそれはまるで台風のようであともう少しで治安維持機構が動く騒動になりかけた。

 その間、俺が他人のフリをしていたのは言うまでもない。

「ただいまクラウン。喜んでくれ、なんと第一発見者を見つけたんだ。どうだ、流石だろ」

「ああ、凄い凄い。それでなんでわざわざ連れて来たんだ?」

「彼女が直接話をしたいというので連れて来た」

 ジャネットが無理を言って連れて来たと思ったが、それはないようだ。これは嬉しい誤算だ。

「そうか。それじゃあ知っていることを教えてくれ」

「はい。クロークさんとは商人仲間で昔から付き合いがあってその日は渡したいものがあってそれを届けようとしたら……」

「死体があったわけか。何か変わったことか気づいたことは? どんな些細なことでもいいから」

「特に……ないですね。けどクロークさんは自殺するような人じゃありません。きっと誰かに殺されたんです」

「誰かから恨まれてるとかは」

「いえ、それはないと思います。逆に慕われているくらいですから」

 確かにあの性格ならそうか。

「そう、ありがとう。きっと犯人は捕まえてみせるから」

 第一発見者は基本怪しいのだが話を聞いている限りだと彼女が犯人というのは考えにくい。

「今ので犯人が分かったというのかクラウン」

「いいや、ただし今回はやっぱりリックの言う通りで眷属の枷が原因の可能性が高いな」

「なるほど、では今度はそれを聞いて回れば良いのだな」

「待て待て、そんなの教えてくれるわけないだろ」

「む、どうしてだ? 教えてはいけないという規則があるのか」

「ないけど眷属の枷っていうのは自分の弱点みたいなものだから関係なくても教えてくれないよ」

 俺はまだ決まっていないが眷属にとって重要なことだというのは嫌でも伝わってくる。

「では犯人の特定は難しいか。ならばあの治安維持機構に直接聞くしかない!」

「いや、二人で乗り込んでも一蹴されるだけだろ」

 あそこには死神とその眷属がいる。

 いくらジャネットが騎士で戦闘能力が高くても複数を、しかも倒せないようにされている以上、勝ち目はない。

「ならば諦めるのか⁉︎ あの商人の無念を私たちで晴らそうと約束したではないか」

「勝手に変な約束させるな。でも、まあここまで諦めるわけないだろ。正面突破が無理なら裏からだ。とりあえず、俺が行ってくるからお前は待機していてくれ」

「水臭いことを言うな。私も一緒に行こう」

「やめとけ。お前は潜入には向いてない」

 それは先ほどの聞き込みで証明されている。

「ジッとしているのもだ。邪魔はしないから連れて行ってくれ」

 自信満々に言われてもなぁ……。けど確かに置いて行っても問題を起こすかもしれない。それなら一緒にいた方がいいかもだな。

「じゃあ、危なくなったら俺のことは気にせず一目散に逃げると約束してくれ」

「了解した。ではいざ治安維持機構へ!」

 街に響くほどの大声で聞かれてはいけないことを叫ぶジャネット。それはまるで勝ち鬨をあげる兵士のようで入ってすぐに有名人になるのも頷ける。

「これから潜入だよ、ジャネット」

 もう不安になってきたが、少し時間を空けて治安維持機構の本部への潜入を決行した。

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