明日を迎える前に
俺はあのホテルが一望出来るキャンプ場にテントを張り、様子を伺っていた。
いよいよボスがお出ましか。つってもただ出て来ただけ。脅しただけか。
ホテルには、海から上がって来た祟り神が、働いている人間や宿泊している人間を狂わせている最中だ。
「俺が居ただけで、かなりの牽制になっていたようだな」
俺が去りし後に猛威を奮う祟り神を見て、そう思った。
だが、クビになった今、俺が心配するのはお門違いってもんだ。
「死人が出なきゃいいがな」
それにしても喧しいな。
キャンプ場は多数の人で賑わっている。
「ちょっと!やめてください!」
「いいじゃんよ~!一緒に呑もうよ!」
「こんな所にたった一人なんて、出会い待ちでしょ?」
「私は用事があって、ここの管理人とお話していたんです!!」
酒を呑んで気が大きくなっている男共が、嫌がる女を口説いている様子だ。
仕方ない、助けてやるか。
俺は男共の前に歩を進めた。
「おい、やめねぇか。嫌がっているだろう」
男共は一斉に俺を睨んだ。
「カッコつけんなよお前?やんのか?ああ?」
かなり酔っているようだ。力量の差も解らないとはな。
本当に手加減し、軽く小突いてみる。
「くは!?」
アロハの男の鼻から血が出る。
「てめ…」
デニムの男が詰め寄るも、左手で軽くいなして脹ら脛に蹴りをぶち込む。
「がっ!!」
デニムの男がしゃがみ込む。
「お前等話にならねぇよ。気がデカくなるのは勝手だがな」
まだやるか?と一歩踏み出す。
男共は黙って走った。
「賢明な判断だ」
俺は女に目を向ける。
「大丈夫だったか…って?」
女は驚いた表情で俺を見ていたが、俺も驚きは隠せなかった。
「葛西…亨?」
絡まれていた女は、北嶋と一緒に居た女だったのだ。
「まぁ…助かったわ。ありがと」
礼を言ったが、流石に気付た。
「その気になれば、お前なら追い払えるだろう?」
「いちいちそんな真似していたら、ここら辺りは沢山男が転がって歩けなくなるわ」
たまげたな。こんなに自信過剰だったとはな。
俺が呆れているのを察知したのか、女が続ける。
「冗談よ。北嶋さんに良く言う冗談なの」
「そうか、テメェは北嶋の女だったな」
「北嶋さんの女ですってぇ!?」
夜なのにも関わらず、デカい声を上げた。
「おい、声がデカいぞ。近所迷惑だ。つっても家なんて無えが」
「ご、ごめんなさい」
すぐに謝罪を入れたのだが、キャンプ場の人間が俺達に視線を浴びせる。
俺達はいたたまれなくなり、その場を離れる事にした。
ちょうど良く、ビーチパラソルが設置してある休憩所を発見した俺達は、缶コーヒーを買い、そこに腰を下ろした。
「で、テメェは何でここに居る?」
「ああ、昼にあなたが集めた地元の人達に話を聞きに来ていたの。このキャンプ場の管理者もお昼に居たでしょう?」
女は缶コーヒーを一口飲み、溜め息をつく。
「だいたい予想通りだったけどね。だけど、敵が神ってのが…」
その巨大さにビビっていやがるようだ。
「北嶋じゃ、荷が重いか」
女はクスクスと笑う。
「北嶋さんなら、何とかするから心配無いわ。問題は、祟り神となった今でも、海神は信仰の対象だって事。ただ滅ぼすだけじゃ無意味」
俺なら喰らって終わりにする。信仰の対象だろうが、何だろうが。
しかし、北嶋が倒すだけなら祟り神も倒せるとも受け取れる発言だ。
あの霊感が全く無い野郎が、神を葬れるってのは俄かに信じがたい。
「そういや、テメェはホテルに開けられた霊道も北嶋なら塞げるみたいな事を言っていたな?」
挙げ句、俺には救う事が出来ないとまで抜かした筈だ。
「気になるなら後学の為に見学しに来てもいいのよ」
女は俺が昼間言った発言をそっくりそのまま返した。意趣返しか?
「水谷のババァの秘蔵っ子はかなりの能力があるようだな?」
女に嫌味を言われたようで、俺は語尾が強めになった。
「師匠の秘蔵っ子?誤解があるようだけど、北嶋さんは師匠に何も習っていないわよ?」
何も習っていない!?
そんな野郎が祟り神を倒し、霊道を塞いで、多数の亡者を成仏させると言うのか?
ハッタリにしちゃ、オーバー過ぎた。誰もそんな話は信じないだろう。
俺は鼻で笑った。
「ちなみに、北嶋さんがこの世界に入ったのは、ほんの一年前よ」
「そりゃそうだろう。北嶋なんて名は知らなかったんだからな。北嶋の名は都市伝説みたいな感じで知ったに過ぎない。霊能者としてじゃなくな」
さっき思い出したんだが、北嶋 勇の名は噂で聞いた事があった。
北嶋と言う全く霊能力が無い男が、稀代の錬金術師、サン・ジェルマン伯爵を倒した、と。
サン・ジェルマン伯爵は、人類の宝、賢者の石を水谷のババァに奪われ、執拗にババァを狙っていた。
ババァはこの世界じゃあ、知らない奴なんざ居ない程の有名人だ。
伯爵が賢者の石奪還が出来ないのは、ババァの力の証明でもある。
ババァと伯爵の駆け引きやら戦いの終止符を打ったのが、ババァがどこからか見つけて来た霊能力の無い北嶋って野郎だと、まぁ、この世界に住んでいる俺達には到底信じる事が出来ない、都市伝説くらいしか無い話だ。
「…やはりあなたは北嶋さんを見た方がいいかもね。知らない事は恥ずかしい事じゃない。知ろうとしない事が恥ずかしいのよ。そして北嶋さんを知れば、力では解決出来ない事も知る。そして…」
女は俺にフッと笑いかける。
「上には上の力があるのを知る事になる」
北嶋が、俺の羅刹を上回ると言う意味か!?
立ち上がった俺に、女も立ち上がる。
「コーヒーごちそうさま。どうせ気になるでしょ?支配人から正午まで電話なり使いなり来れば、私達はお昼にあのホテルに行くわ。気軽にどうぞ」
女は俺から踵を返し、そのまま立ち去った。
「…そりゃあ…来いって意味だな。見せて貰うぜ!!」
何だか楽しみになった。
大村支配人が北嶋の要求を飲む事を、ここで祈ろうかと思った程に。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
葛西と別れた私は、急いでホテルに戻ると、北嶋さんの部屋のドアをノックした。
「ふぁ~い…」
「…まさか、私に仕事させて寝てたとか言わないでしょうね?」
ビクッとした。絶対今ギクッとしたよね?
「ば、馬鹿言ってんじゃないよ。お、俺が神崎一人に押し付けて寝ている訳無い無い!」
シャツがシットリと濡れているのは、寝汗か冷や汗か。
「…まぁいいわ。地元の人達に話を聞いてきたよ」
言いながら北嶋さんの部屋にスタスタと入った。
ガチャリ
ドアが閉じると同時にオートロックが働いた。
「か、神崎!!」
二人っきりの密室に興奮し、北嶋さんが私に襲い掛かる。
私は右手を硬く握り締め北嶋さんの鼻っ柱に躊躇いもなく、叩き込んだ。
「ぷわっっっ!!」
北嶋さんが鼻血を噴射し、倒れる。
「毎度毎度…学習しなさいよっ!!」
握り締められた右手から、北嶋さんの返り血がポタポタと落ちる。
このホテルにチェックインしてから、北嶋さんは私が部屋に入る度、私に襲い掛かかり、鼻から尋常じゃない量の鼻血を噴射させていたのだ。
「…で、どんな内容だったのだ?」
鼻栓しながら格好付けて一応聞く北嶋さん。
「真剣な感じが全く出てないんだけど…」
「神崎がグーでぶん殴るからだろ!!」
「私のせい?私が悪い訳?ねぇ?本気でそう思っている訳?」
剣幕し、北嶋さんに詰め寄る。
「いや…まぁ…すいませんでした…」
北嶋さんが肩を縮める。
「よし。じゃあ話を…」
「その前に神崎、脇からブラが見えているのは俺を挑発する為ぷわあああああ!!」
再び北嶋さんにグーで鼻っ柱に叩き込んだ。やはり、鼻血が噴射する。よく血液が枯渇しないわね。
「いちいち見るんじゃないわよっ!そして話の腰を折らない!」
「わ、解ったが…ブラ見せてるのは神崎…はうっ!!」
北嶋さんがビクッとしながら背筋を伸ばす。
左手を握り締めたのを見たのだ。もう面倒臭いから本題を進めましょう。
「まぁ、話自体は大体予想した通りなんだけど…」
私は聞いた話を簡単に纏め、北嶋さんに伝えた。
昔、あの辺りは事故や海賊によって多数の死者が出ていた。
事故は仕方ないが、問題なのは海賊。
時の統治者が海賊退治の為に多数の兵士を出す。
海賊と兵士は戦い続け、一般の人達も巻き添えにしながらも、何とか海賊を殲滅させる事に成功した。
しかし、その日から、あの海から多数の亡者が現れ、人々を恐怖のどん底へ叩き込む。
元々、海流の関係で事故が多かった海だが、海賊殲滅後、溺死する人達が爆発的に増えた。
わざわざ海から上がって来た海賊の幽霊が、里の人達を操り(惑わし)わざわざ海まで連れて来て、溺死(海に引き摺り込む)ようになったのだ。
当時の権利者は、それに恐れ、海を見渡せる場所…小高い丘に神社を造り、それらの霊を供養するが如くに祀り上げたのだが、それでも海賊の幽霊が現れない日が無かった。
神社を建立した後も、海賊の幽霊が人々を惑わし、海で溺死させていたのだ。
権利者は神社建立時に相談した霊能者に訊ねた。
「何故あやつ等は鎮まらないのだ!?」
海賊達が一番怨みを持っているであろう人間は自分。
いつ自分が海に引き摺り込まれるか解らない。
霊能者が言った。
「見渡せる場所がよろしく無いのかもしれません。もっと近い…あやつ等の隣程に御神体を祀れば或いは…」
ならば、と、海賊が居るであろう場所を訊ねる。
「それは海の底…
霊能者が指示した場所は、最も事故が多かった場所。そこに神を祀りに行くとなれば、死は必至。
それでなくとも、海賊が暴れる前から、多数の事故死を出していた場所だったのだ。
権利者は考え、お触れを出した。
「この場所に神を祀りに言った者を、この神社の氏家とし、未来永劫の繁栄を約束しよう」
そのお触れに我よ我よと名乗り出た十人の男達が、神を祀る為に海に出る事になった。
霊能者が丘から海賊達の魂を牽制している間、丘から移動させて置いた御神体を小舟に乗せ、天然の祠付近に運んだ十人の男は、御神体を祠に納めるべく、海に入って行く。
移設は難航を極め、移設途中に海流に流された者、海賊に引き摺り込まれた者、仕事に従事し、そのまま力尽きた者…結果、生き残ったのはたった一人だった。
だが、無事に遷座した事が功を奏したか、海賊の幽霊はそれから現れなくなった。
里の人達は、喜び、だが、犠牲になった九人の男達を悲しんだ。
そして、もう一つ問題があった。
御神体を海中に移した事により、神を崇める場所が小高い丘の社から、海中に移ったのだが、海中に参拝が出来る訳が無い。
しかし、礼を尽くさねば海中の神のお怒りを買うやもしれない。せっかく海賊の幽霊が居なくなったと言うのにだ。
霊能者は一計を案じた。
「この場所に祠を建て、これを神の玄関先とし、皆はここから海を眺めて祈るように」
早速祠が建てられ、亡くなった九人の男もそこを慰霊碑とし、以前の社は、慰霊祭のみに使用する事となった。
祠は社そのものでもあり、男達の慰霊碑でもあったのだ。
「その祠をぶっ壊したから、バカホテルはおかしな事になったんだろ?」
北嶋さんは、以前聞いた、との様子で、さして興味も示さない。
「だからほぼ読み通りと言ったでしょ」
北嶋さんの部屋の冷蔵庫からビールを二本取り出し、一本を北嶋さんに向かって放る。
キャッチした北嶋さんが、プルトップを開けながらにやけた。
「そーか…恥ずかしいからアルコールの力を借りて…って訳か…」
そのイヤらしい笑みがムカついたので、もう一本のビールを北嶋さんの顔面に投げつける。
「ぐわあっ!!」
オデコに当たり、顔がグインと跳ね上がる。私の目からは、北嶋さんの下顎しか見えない状態だ。
「真面目に聞きなさいっての!!」
もう一本ビールを取り出し、プルトップを開ける。
「こああぁ~…超痛ぇ~…中身入りのビールの硬度と質量は侮れんな…」
北嶋さんは座り直し、取り敢えず真面目な顔を作った。
『話を続けろ』との合図なのだが、本当に頭に入れているのか常々疑問を感じる。
「要は、昔から知っている人や、漁業で生計を立てていた人にとっては、祟り神になろうが何だろうが、自分の信じる神様には変わらないの」
確かに、祠を潰す前までは普通に祠に参拝していたようだし、丘の神社では慰霊祭が執り行われていた。
「ホテル建設に大反対した氏家はたった一人。残りの氏家は喜んで迎えたそうよ」
北嶋さんの目がギラッと光った。怖い瞳だった。
一瞬ドキッとしたが、そのまま話を続けた。
「残りの氏家は、家族が重い病気や怪我をしたり、自身も体調を崩して働けなくなったり」
北嶋さんはフッと緊張を解いた。
「つまり死人は出てないんだな」
「ええ、今の所は…大小はあるけど、不幸事は重なり続けているみたいだけど…」
「ふ~ん…それは仕方ないだろ。自業自得ってヤツだ。無論、バカホテルもな。まぁ、明日の 正午まで何の連絡も無きゃ、俺も撤収するけど」
ビールを一気に飲み干し、缶をテーブルに置いた。
「連絡が無かったら?」
「勝手に滅びりゃいいさ」
私は一口ビールを飲み、思い出していた。
北嶋さんは例え無慈悲と思われようが、滅茶苦茶と思われようが、自分の決めたルールは決して曲げない。
例えどんなに惨い事になろうとも…
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
永きに渡り…この海を護って来た…
しかし…愚かな人間により、我は忘れ去られようとしていた。
海賊達の悪しき魂から里の者を護っていたにも関わらず、我を
我の入り口を壊す事に賛成した氏家共を不幸にし、箱に群がる人間共と、我が運んだ亡者達を一緒に生活をさせ、その他数々の忠告を発したにも関わらず、愚かな人間共は、我を忘れて繁栄しようと必死に頑張っている。愚の骨頂とは正にこの事。
あまつさえ、我を祓おうなど罰当たりな所行まで行い、鬼の力を借り、我を倒そうとまでしたのだ。
今まで命までは奪わなかったが、最早堪忍袋の緒が切れた。
箱に通した地獄の通路から、更に悪鬼を送り込み、箱の人間共を皆殺しにし、里の人間共を全て滅ぼすまで、我の怒りは鎮まらぬ。
人間共を護る為の鬼は、やはり人間共によって追い出された。
好機だ。
我は自ら、箱の中に出向いた。
箱の中は、以前に新築された時より、遥かに人間が居なくはなっていた。
仕方が無いので、今居る人間を全て狂わせようかと思う。
我は食事の支度をしている人間や、入り口で立っている人間を狂わせる事にした。
我の直の力ならば、狂わせるくらいならば直ぐに行える。
少し幻覚を見せただけで、人間共は狂った。
フハハハハ!!愉快愉快!!
狂わせた人間が、他の人間共にも狂気を伝染させる様を、我は高笑いしながら眺めている。
だが、まだだ。それは地獄の入り口にすらなっておらぬ。
天に唾した愚か者共は、地獄の底まで生きながら行って貰うつもりだ。
先ずは箱の人間共…次に里の人間共だ。
我だけではない。
我を遷座した九人の魂も、それを望んでいるのだ。
我は明け方まで、箱の人間を狂わせる事にした。
真綿で首を絞めるよう、じわりじわりと地獄に堕としてくれよう…
愉快愉快!ハァッハッハッハ!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
朝日が目蓋を刺激して目を開けた。
…ああ…生きている…まだ私は生きていた…
頭を振りながら立ち上がる。
「つっ!!」
頭が割れるように痛む。
脳みそを手で掻き回されたような…そんな痛みだ。
エレベーター前に移動した。
昨晩のように、各階で停止したり、動いたりはしていない。
だがエレベーターに乗る気は無かった。
痛む頭を押さえながら、私は階段でホールに向かう。
ホールに辿り着いた私が見たもの…ホールは立てていた花瓶や新聞が床に散らばっていた。
「……酷い状況だな…」
片付けながら、倒れている人間を発見した。
「田島…」
「ケヘヘヘヘヘヘヘヘヘ…」
フロントの田島が、床にへばり付きながら笑っていた。
目が虚ろで焦点が合っていない。
「田島……狂ったのか……」
私は田島をフロントの従業員休憩室に連れていき、椅子に座らせた。
「この調子だと、厨房も……」
私は田島をそのままにし、厨房へ向かった。
厨房への通り道も、花瓶や雑誌、コピー用紙などが床に散乱している。
「なんだ?酷い臭いだな…」
厨房も荒れ果てていた。想定内ではある。
目に付く食器を掴み取りながら、調理台の下に転がっている包丁に目が行く。
「危ないな」
包丁を取ろうと、手を伸ばしたその時、私の手を誰かが掴む。
「ひゃあああああ~!!って、長谷川…?」
長谷川は調理台の下で膝を抱えてケラケラと笑っていた。
「キャハハハハハハハハハハ…」
「お前も狂ったのか……」
愉快そうに笑う長谷川のズボンが濡れて、そこから嫌な臭いがしていた。
長谷川は失禁していたのだ。
「見ちゃいられん」
水を飲もうとした私の目に、すり潰した肉が、鍋に入っていたのが見えた。
調理途中か。そう思い、覗き込む。
「う!!うげえぇぇぇ!!!」
私は嘔吐した。鍋に入っていた肉は、大量のネズミがすり潰され、ミンチになっていたからだ
ホテルを完全休業にして、まともな従業員に掃除を命じた。
お客様も少しだけ居た筈だが、昨夜のうちに逃げ出したのか、誰一人として居なかった。
狂った従業員は、病院に内密で運んだ。
ホテルの送迎バスがあって助かった。
昨夜夜勤だったホテルに居なかった従業員も、外で笑いながら座っていたり、隅に隠れていたりしていた。
兎に角、昨夜で全て失う寸前まで追い込まれたのは事実。
携帯を取り、電話をかける。
プルルルル…プルルルル…プルルルル…
『はい』
「神崎さんですか?大村です……北嶋探偵の条件を全て飲みます…たすけてください……」
この歳になって泣くとは思わなかった。
怖かった……怖いのから逃れたい……声を殺して泣いた。
『今直ぐ伺います』
北嶋探偵が来てくれるようだ。
私は袖で涙を拭い、頭を振った。
北嶋探偵はちゃらんぽらんなイメージがあるが、その世界では実力は桁違いと言うらしい。
取り敢えず、助けて貰ってから、その後の事は考えようと思った……
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