第2話―王都とロリ少女
土砂降りのアホウドリ亭の前に、妙に立派な馬車が停車した。アホウドリ亭はY字路の股の部分に立地しているので、正面に止めると普段ならすぐに怒号が飛ぶのだが、こんな日なので通行量が少ないからか、特に誰にも文句を言われている様子は無い。
サイゾーは出入り口の隙間からそれを見ていた。てっきり例の釘様でもやってきたのかと思ったが、降りてきたのは妙にひらひらの沢山ついたドレスの少女だった。
少女に続いて慌ててメイドが馬車から飛び出し……コケた。
「……」
サイゾーは目を細めてその様子を観察する。どうやらピョン種族らしく、白く長い耳が確認出来た。……泥だらけではあったが。
この世界には珍しい傘を取り出して、少女に傘を差そうとするが、少女はとっくにアホウドリ亭の中に入っていた。馬車との距離は1m程度なのだから当たり前とも言える。
「ふむ……ここが噂の……」
妙にロリロリした少女が無い胸をふんぞり返らせてずんずんと奥に入ってくる。夜ならともかく、昼はデザートなども出すようになっていたので、それが目当てかも知れない。
「ほう……客もいないのに掃除とは関心じゃの! 褒美を取らす!」
ロリ少女が手招きをすると、泥だらけのメイドさんが慌てて財布取り出して硬貨を……ばらまいた。
「……」
無言で様子を伺っていたサイゾーに、泣きそうな表情で無言の助けを求めてくるコニータ。
「……コニー、タオルを持ってきてやれ」
「はあい! 親方!」
逃げるように事務所に飛んでいくコニータに苦笑してしまう。サイゾーはやれやれと立ち上がって、ロリ少女の横に行った。
「こんにちはお嬢さん。ご注文は何かな?」
給仕がいないのは問題だろうと動いたサイゾーだったが、ロリ少女は想定外の行動に出た。
「おお、ご苦労なのじゃ! たしか女性は無料で飲み物をもらえるんじゃったの! 妾は……」
妙にご機嫌にぺらぺらとしゃべり出すロリの口に、サイゾーはそっと指を当てた。
「ふええぇ?! なっ何を?!」
なぜか背後で慌てるウサメイドだったが、ロリが片手で制すと、大人しくなった。しかし反応がコニーと似てるな。キャラ被りだぞメイドさん。サイゾーは肩をすくめた。
「悪いなお嬢さん。飲み物のサービスには条件があるんだ。これは……」
「問題無い。掲示板利用の女性のみなのじゃろ?」
ロリは胸を張って答える。
「知ってるなら……」
「うむ。安心せよ。妾は掲示板を利用するからの!」
「……」
自信満々に答えるロリに、絶句するサイゾー。動けないサイゾーを横目に、掲示板の前に移動するロリ。
「ほう! これが恋愛掲示板か! 噂通り立派なのじゃ!」
恋愛じゃねーよと内心で突っ込んだが、言葉にはならなかった。
「ふむふむ。ほうほう。なるほどなのじゃ。男どもの欲望がよう出ておるのじゃ」
ロリは興奮した様子で男性の書き込みを斜め読みしている。そこでサイゾーは我に返る。
「あー、それは子供の見るものじゃねーよ……悪いが……」
「給仕! これの専用窓口があると聞いたのじゃが……それか?」
ロリ少女はサイゾーの言葉が聞こえないのか、完全に無視して受け付けカウンターに移動してしまう。
「ああもう! ちびっ子ってやつぁ!」
サイゾーは頭痛の始まった頭を押さえながらカウンターに入る。
「お嬢さん! ここは出会い掲示板のカウンターなんで、すまんが席を外してもらえないかな!」
サイゾーがやや声を荒げると、キョトンとロリが見上げてくる。そこで気がついたのだが、ロリのくせにビックリするほど美人(になる確率120%)だった。
「うむ。理解しているのじゃ」
「それじゃあ……」
「妾は掲示板に登録しにきたのじゃ!」
元気いっぱいに叫ぶ少女の声に、サイゾーはテーブルに崩れ落ちた。
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