第9話 宿を探すは・・・
宿を探すこと幾数件
手持ちの懐具合から言って、綺麗な宿とかは高級すぎて無理だというのは、色々と当たって話を聞いて解った事でもあった。
なにせこの身体であり飲食店での狭さを体験すれば、とりあえず部屋は大きくとれる物にできるとかなんとかと説明したりされたりしたのだが、予算を伝えた途端に「何だ貧乏騎士か」と呟かれたかと思えば、手の平をクルーリと返して追い払いをしてくる始末という親切きわまりない洗礼を受けたからである。
ゲーム内でも銭の強さは確かにあった。リアルなんてそりゃ当たりまえ、少し考えればこの場所でも銭が必要という事は解るはずで・・・結局銭が全てなのは世界共通というところかとヒシヒシと経験するという。すべて貧乏が悪いんや…
そんなこんなで、今度は宿街ともいえる場所で、それなりな宿にはアタックをしかけてはお引き取りという探索すること数件目の宿から撤退戦を強いられていた時、
「あのぉ、もしかして宿を探してますか?」
宿から出た直後に手荷物と背負い荷物を持った一人の少女が声をかけてきた。確かにその通りだが、なぜその事に気づいたのだろうかと
「何度も宿に入っては、肩を落として出てくる所をみたので、もしかしてかなーと」
表現的に"エヘヘヘと笑う"その少女の姿があった。
まるで愛くるしいという表現が当てはまるかの様に少女であり、守ってあげたいとか思う人たちも出てくるのではないだろうか?と思えるその仕草である。
これはあれだな、"お巡りさん、この人です!"という、その手の人たちのハートを鷲掴みをしてくる程の物だろうと推測ができる。
だが、
自分にとっては、それ以上でもそれ以下でもない。
そういった点には、まったく気にする事もないので、先の問いに対して素直に返しておこう。ここは紳士的な行動が重要である。
「アア ソノトオリダ」
「なら、あたしが紹介してあげるからついてきてよ、安くて良い宿だから」
こちらの要望を全く聞かない少女、まったくもって非常識であるが、こっちこっちと自分を誘導され、何かあろうとも重装甲のこのキャラなら何があろうともインフレしたボス以外ならビクともしないだろうし、紹介されるというのなば、その宿へと向かうではないかと、後についていくことにする。
路地を曲がり、進み、先ほどの人通りが多い場所から離れた、寂れた場所というにはそれほどでもない場所に、三階建ての建築物へと到着すし、少女は、迷う事なくその建物の中へと入っていき
「おとうさーん!お客さんだよー!」
宿に入った早々、カウンターの奥に向かって大声でそう叫ぶ。
「客だと?」
「うん!お一人様!」
「一人か・・・」
と、奥から出てくる男性が一人。
いかつい顔で、頭髪が無い頑固おやじという存在が現れてくる。
それになかなかにデカイ。だが、自分よりも小さいが。
「うぉ・・・アイツよりデカイ奴なんて、久しぶりに見たぞ?」
「でしょでしょー、びっくりするでしょー」
というか、少女は父親を驚かせるために自分を連れてきたのか?
とりあえず、宿というのだから部屋があるかの確認だ。
「ヨコニ ナレル ヘヤハ アルカ?」
「面白い奴だな、話す時に目の部分が光るなんて」
そういいながら、その親父さんはこちらを上から下まで見渡すと
「結構重そうだな・・・それにタッパもあるか・・・なら、裏の馬房ぐらいしか無いな」
ほぅ、馬房といえば厩舎か・・・ふむ、動物の中にロボか。
牧歌的な雰囲気にロボ。某アニメのおかげで大いにアリになったシチュエーションではないか。というかおおアリである。
「ソレデ タノム」
「本当にいいのか?何だったら、1Fの部屋を」
「バボウ デ タノム」
ぐいっと顔を近づけて、そこを取付ける。
なにせ、動物とロボの親和性を経験する為に必須な事だ。
こればかりは実際に行わなければロボ道が廃れるというものだ。
「お、おぅ、わ、わかった・・・。おいシルビィ!馬房であいつの時みたいに大き目のシーツで部屋作って来い」
「はーい!」
結構なれた手つきともいえる指示で、荷物を置いたその後に素早く走り去っていく。
「たまに来るんだよ、昔なじみの巨人族の奴がな。だが、あんたはソイツよりも頭ひとつ飛びぬけてる。どうすりゃそんだけデカくなるんだよ」
すこし笑い顔でそうつげてくる宿の主人。そこからは、金額面を確認すると、とてもとてもお安いリーズナブルを通り越して本当に大丈夫かと思ってしまう価格を提示されてしまった。
「馬房だから予算は通常の半額でいい、だが、物取り云々の管理はしないからそのつもりで、そこらへんはそっちで何とかしてくれ。その分安くしておくからな。それと、安いからといっても寝具に関しては悪くないぜ?泊まりに来る巨人族の知人が身内びいきじゃなくて、お墨付きをつけてくれるくらいだからな。まぁ、準備が整うまで、宿帳に名前を書いてから、そこに座ってまってな」
そういって、カウンターに置かれてある荷物を以って、奥へと消えていった。
懐にも優しい状況になり、最初のいかつい親父という印象だったが、実はとても良い人であるという事で認識を更新する事にした。
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