第7話 組合にきてみれば・・・
リアルな世界でいうならば、職業安定所、別名ハローワーク。
賃金を稼ぐ為には、結局仕事を行わなければならない事には変わらないために訪れるのは、リアルでもバーチャルでも仕事を斡旋してくれる所が一緒という世知辛い世の中である。
VRMMOの時は、依頼斡旋所が設けられており、その依頼をこなす事で賃金を得るという社会的なシステムも存在している。
他にはファーム惑星にて各人が手塩にかけて育てた食材を販売するファームプレイというのをやってる人たちもいれば、同様に惑星一つを酪農特化にまで手掛けた大規模なファーマー惑星までもってるギルドまで存在していた。
で、いま自分がいる状況からいうと、ファンタジー色が強い世界っぽいので、お約束的な場所があるだろうと、探しに探していたのだが・・・
見つからない。
致し方ない、ここは人に聞いてみるとするか。
「スイマセン」
「はいっ!?」
「ギルド ドコデスカ?」
道行くヒュームタイプの
「えっ?えぇ・・・?」
ちらちらを横を見てから「ここですよ?」と、親切ご丁寧に教えてくれた。
その方向を見てみると、店・・・というよりも、倉庫?みたいな入り口の隣に、ポツンと民家の様な建物が存在していた。
看板もなーんもないでやんの。そりゃ見つからないわ。
「アリガトウ」
「い・・いえ・・」
とりあえず、礼はきちんとしておき、さっそくその建物の中へと入るべく扉にに手をかけて・・・ガタガタと何度も押しても引いても開かないでやんの。
こりゃ、どこか錆び付いてるのか?勢いよく開けてみようと思った時、
「あ!壊さないでください!!横です!横!!」
と、慌てた様子で中から聞こえてきた。というか、横って・・・取ってあるのにまさかの引き戸かい。
言われた通り、横にスライドさせると簡単に開いていく扉。
コロでも入ってるのか?という機械的興味が沸いてくるのだが、こういう世界でそういうのはどうなんだろうか。ううむ・・・気になる。
とりあえず、開いた扉から中にはいってみると・・・
狭くもなく、結構広めな受付らしき所が視界に入ってくる
「いらっしゃいませ!職案
その声を発した人物は、綺麗という言葉が一番ぴったりに当てはまる女性であり、その一挙手一投足までも洗練されている動きとでもいうのだろうか、その動きをみると、こいつぁプロだ。という認識が真っ先に出てきており、そういう趣向の方々は見惚れてしまうなり、お近づきになりたいと、別の声をかけるものではなかろうか。
だが、相手は
機械的なアプローチ面が完璧である故に、その
それよりも、あまりにも聞きなれた現代の言葉が混ざってる様に聞こえたのだが・・・?うーん・・・とりあえず、今は仕事にありつけるかどうかの問題がある訳で、疑問はいったん棚に上げておこう。
「シゴト サガシテイル」
「はい、お仕事ですね。失礼ですが、
「イヤ」
「はい、でしたら、まずはご登録の方からとなりますが、よろしいでしょうか?」
「トウロク シナイト?」
「そういう訳でもありませんが、ご登録していただければ、ご自身の職業履歴を管理させていただき、ご自身に見合った物を推薦するサービスを行っております。」
「フム」
まさにハローワークだな・・・
「また、年会費をお支払いいただければ、案内させていただいた仕事中に対して不慮の事故が発生しお怪我をなさった場合、治療費の一部と、治療期間で働けない時の生活資金の一部も
「フムフム」
「その為、
「ナルホド」
これはアレか、福利厚生的なアレも管理してくれているという認識でいいのか?
会社勤めに近い恰好になるというので構わないのだろうか?
それなら、
「ただし」
「ン?」
「こちらからの、ご指名依頼や強制招集には止む負えない場合以外は、かならず受諾していただくことになります」
まぁ、そりゃそうだな、そういったシステムだからそういう物だわな。
「いかがなさいますか?」
こういうのには、何かしらの制約があるが、守ってくれるという物があるとみたほうがよさげだろうが、先ほどのあった医療費云々とあるが、回復魔法が一切きかない機械生命体にとっては恩恵なんて微塵もない訳で。もう一つ言えば
斡旋仕事サービスも、自分で選んでしまえば問題は無いし・・・
「ヒカニュウ デハ マズイノカ?」
「はい、非加入の方になりますと、先ほどの治療費や生活費の補助は一切うけとれなくなります。また、達成時報酬からの手数料が割高となる形となります。その他に関しては、招集などの強制にも自由意志という形となり、
「ジョガイ サレル?」
「はい、何らかの問題が発生したさい、
「フム」
あー、これはあれか?
なら、いままでの内容を踏まえても、この身体での恩恵はそこだけとなるが、いまいちどういう力関係かがハッキリとわからんしなぁ・・・
ここは様子見も含めて
「フム、ヒカニュウ デ」
「はい、わかりました。非加入ですね?」
「アア」
「では
と、手渡されるは簡易的な用紙と筆記用具・・・というか、インクと羽ペン?マヂかよ・・・学校教材で使ったっきりだぞ?コレ・・・
まぁいい、えーっと何々・・・?名前か、これはどうするか、実名かそれともキャラ名か悩んでしまうが、やはりここはキャラ名だろう。実名でする必要はないな。生まれ変わった自分という奴でいればいいだけだしな、という事で、ここは"アーネスト"っと、これで良いだろ。次は出身地?んなもん・・・どうする?機械生命体の本星の大十三恒星群A802とか書けばいいのか?どうしようもなくかけないから白紙だ白紙。次に年齢っと・・・おいおい、この機械の身体の設定年齢書けばいいのか?まぁ、それでいくか、"3742才"と。
「コレデ」
「はい、確認します。えっ?3742‥‥才?これは?」
あー、周りをみれば、そんな年齢とかあるわけないよな、
「マチガイダ 37ガ タダシイ」
「あ、そういう事ですか、解りました訂正は此方で行っておきます。出身地は・・・不明というのは良くあるので未記入としておきます。あとは、力仕事・・・ですか。」
そういうと、受付嬢はこちらをちらりと見上げてから書類に目を戻し、
「たしかに、そういう力仕事は向いてそうですね。建築作業も行えそうですね」
まぁ、見た目そうだよな。そうとしか見えないわな。というか、建築だと?おおう、こなしてみせるぜ?まさにうってつけだしな!建機ロボ・・・ああ、何とも素晴らしい響きとシチュエーションではないか!そうなってくると、クレーンアームとか三つ爪型のマニピュレーターとかがあれば完璧か?あとはドリルはどうか、建築だとボーリングか?ああ、だがあれは地盤調査に使うだけだし、あとは有るとすればショベルユニットとドーザーユニットの方が必要か?ううむ、それなら黒と黄色のストライプ模様の塗装としていないのが悔やまれる・・・
「では、最後に本人認証用の記録を取りますので、こちらの魔道球を触れてください。」
おっと、いかんいかん、少し妄想の世界へダイブしていたが、受付の下から水晶球を受付テーブルの上へと・・・って、これどっかでみたような・・・まぁ、いい、とりあえず、触れてみてと・・・
「あれ?おかしいですね‥‥壊れてしまった?」
と、受付がふれると、こんどは水色に光りだす。
「壊れては‥‥ないですね。おかしいですね‥‥もう一度お願いできますか?」
と、再び水晶球にふれるもまったくもって反応なし。さっきからデジャヴを感じたが、これあれだろ、宣託の間においてあった奴の小型版みたいなやつだろ。
「あの‥‥申し訳ありませんが、魔力が無い方なのでしょうか?」
恐る恐るという形で小声で問いてくる受付嬢に対し、大きく首肯して答える。
「あぁ‥‥やっぱりそうですか‥‥少々お待ちください」
そういって受付嬢は裏の事務室?みたいな方へと急ぎ足で向かっていく。
そうして、こんどは小さな四角い受け皿のようなものを持ち込んでテーブルに置き、
「では、こちらに血液などを数滴お願いします」
と、伝えてくる
血液・・・?いや、そんなものないよ?これはアレか?どう説明すればよいのか。そうだ、など と言ってたし、これは変わりの物でも良いよな?そうなると、これでどうだろうか・・・
と、やや赤みがかった潤滑系オイルを垂らしてみる。
垂らしてみたが、何も反応みたいな物が起きない。
「あれ?これも、反応がありませんね‥‥」
なんだ?オイルではアカンのか?
「昔の機材ですから、放置している間に壊れてしまったかもしれませんね・・・困りましたね・・・」
おおう、なんか勝手に納得されてくれたぞ?
「アレを使うしかないかな・・・?けど、許可と準備が必要だし・・・」
受付嬢は、さっきからブツブツと独り言を唱えていたが、結論が出たのか
「すいません、他の方法があるのですが、機材の準備と確認を行うために時間をいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ドレクライ カカル?」
「明日には使える様にはなると思いますので」
明日か、明日までは無職のままという事か、まぁ、1日ぐらいは何とかなる懐具合でもあるし、それはそれで致し方ないか。
「リョウカイ シタ」
「ご理解いただけ、ありがとうございます。では、とりあえずは仮の証明札をお渡ししておきますので、明日までは其方で対応の程お願いいたします」
と、金属枠に木札という物を手渡される。
これが、一応の就労証明書(仮)という奴らしい。
「とりあえず、その札で職案
と、深々と頭を下げてくる受付嬢だったが、まぁ、この身体だし都合よくいくわけないかと割り切っている。
それに、これは仮免許みたいな物だが、クーポン券の役割もあるという事だろうか。まぁ、仕事探しで来ているわけだし、それぐらいのサービスはありますよといった所なのか、それとも店側の集客用の為なのか、とりあえず、今日のところはここまでといったところか。
「リョウカイシタ。デハ、アス」
「はい、明日、お待ちしております」
とりあえず、ここでの要件はこれ以上は無理だろうし、次は必要な事はなんだろうかと思案しながら、その
「あぁ・・・壊さないでください!!」
ドアノブ型だから、無意識で押してしまった。
というか、この丸ノブ型で引き戸ってなんという嫌がらせなのか
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