第3話 測定されるは・・・

 一緒にいた人達と共に、召喚の儀式を行った部屋?もしくは間?みたいな場所を後にして案内されている間、状況確認として自身の記憶を思い出していたのだが、結局はゲームへとログインしたという記憶しか出てこない。


 あのログイン画面の転送される表現が終わった先が、アレだったという事を再確認するだけに終わるしかなく、先ほどの場所から連れ出されて通路を歩いている状況へと記憶が続いているという事以外には、これといった変化が見当たらない。


 正直にいえば"訳がわからないまま"という感情しか出てはこないのだが、場の空気の流れ的には、同じ様に召喚された人たちの最後尾に付いて移動するしかないよな?という疑問を抱きながらも、そう判断そて行動するしかなく、そうして行きついた先は豪華と表現するしかない一室であった。



 これ、本当に客間とでもいえるのか?えらく派手ともいうか‥‥大きなシャンデリアが余裕をもってぶら下がっている広さの中、それぞれの壁には立派な装飾が施された家具が並んでおり、その一角に日の光が差し込んでくる大元をみてみるは、これまたステンドグラスがその空間に神秘性を出してきており、何というか、客間というよりも広間という表現が正しいんじゃないか?と思えるぐらいの場所だった。



 それよりも、自分が知ってるVRMMOにこんな部屋なんて見たことがない。



 似た所でも、生物ナマモノフレンドの一人が、"僕の考えた中世貴族部屋"みたいなのを凝りに凝って再現していた時がこんな感じだったな、というのが記憶に引っかかるぐらいだが、あくまでも個室とも呼べる小さな部屋であり、この部屋の様な広間的な広さを兼ね備えてはいない。

 それどころか、この部屋に来る道中の建物の構造とか、ゲームの設定からは逸脱している様に見えて仕方が無かった。



 そんな広間に設置されている椅子へと各人が案内される中、自分としては場所を取りまくる体系の為、拒否的なジェスチャーをしつつも各人が座った椅子の後ろに立つ恰好にさせてもらっている。

 そういや、その"僕の考えた貴族部屋"の生物ナマモノフレンドの自慢の椅子に腰かけたら、ぶっ潰した事があるからなぁ‥‥。

 あの時は"弁償だ!"とかマヂ切れされたっけか。もちろん、弁償はしたが、今度は耐荷重に耐えるものにしてやると、どう見積もっても素材代金を数倍吹っ掛けられた気もしないでもなかったが、結局代金よりひと狩り行こうぜ!なノリのまま、素材で支払った懐かしい思い出がある。



 そんな過去の思い出に浸っていると、相手から事の事情が語りだされていった。



 のだが……、その内容というのが自分がプレイしようとしていたVRMMOのバージョンアップの前に公開されていた新章情報と、これっぽっちもひっかからない。

 というか、まったくの別物とでもいう内容であった。


 まず、説明されている世界の名前が、新バージョンアップで明らかになってる新しい惑星とか、そういう名前に微塵もかすりもしないし、探査船の名前すらも出てこない始末である。


 それに、話を聞けば聞くほど、どうみても中世世界を基準なよくある王道的なファンタジーRPGっぽいとしか思えない。


 なにせ、魔王が復活して云々とか出てきており、まさかそこまで王道というかテンプレというか、そういう話が出されてくるとは思いもよらなかった。

 そして、その勢力を拡大する魔王に対抗する為、歴代の方々は勇者召喚の儀を行って救世主ともなる"勇者"とよばれる存在を呼び出すとの事らしい。



 そんな中、自分と言えば"あれ‥‥?"という疑問だらけの状態で話を聞いてはいたが、"これもイベントなんだろ?そうだろ?"と、まるで願うように思いながら、"ありきたりのテンプレ設定、乙"と心の中でツッコミを開始していた。


 学生さん達の中からは「勇者と魔王ってゲームみたいだな」とか言ってるのだが、現在、無口系ロボRPプレイ状態の自分としては、”何言ってんだ?これゲーム世界だろ?常識的に考えて。”と心の中でさらにツッコミを入れていたりもした。



 一通りの説明という物が終わった時、



「それで、複数人が勇者となるのですか?」


 学生さんの一人が、この状況を理解したのか、はたまた流れを汲んだのか、質問をしていた。

 まぁ確かにそうだな。呼び出された人数は自分含めて総勢7名、全員が全員勇者様だったら、それはそれでスゴイ話だ。過剰戦力ともいえる内容で魔王軍に勝ち目なんて出てこなさそうではある。


 それよりも、これ新章の仕様と違う事を聞いた方が良いのではないのか?と思ったりはしたのだが…相手がNPCなら、そんな臨機応変な回答が返ってくる訳ないから無理か、っと、そんなこんなを思いながらも、先の返答が…



「過去にも複数人が召喚された事例はあります。

 複数の方が召喚に答えて頂いた場合、その中のお一人が、

 真の勇者様であり、一緒に召喚に応じられた方々も、

 それぞれが英雄になられている事が記されていました‥‥‥」



 最後の方、だんだんと言葉が小さくなってるが、この機械生命体の仕様だと聞き取れるんですけどね、その結果、聞き取れた内容は「もしくは、一般市民として扱わせてもらったいたと」と。

 えーっと、その内容から察するに、英雄になれずに余生を過ごした人もいるという事が伺えるのだが……ん?何かひっかかるというか……



「真の勇者?」

「はい、魔王を倒すために必要な神具、

 その神具を扱い、真価を発揮できる方を、そう呼んでおります。」



 そんな自身が何かに引っかかった疑惑を他所に、話は進んでいた。

 その進んだ話を要約すると、魔王を倒すためには専用の神具やらが必要で、その神具の真価を発揮できるのは召喚された勇者様でしか扱えないと。

 その神具が無いと、魔王の討伐、または封印する事も叶わないとかなんとか、まさに王道RPGだなと感心させられる。



「それで、その勇者というのはどうやってわかるのでしょうか?」

「はい、それは宣託の間においてわかります。これから案内させていただきます」



 そう言われるや否や、その場所へ向かう為に席をはずしていく面々。個人的に言えば、まさに王道テンプレって奴が続くのですね。といった印象でしかない。

 なにせ、判定する方法もあるとか、ご都合主義ここに極まれりですね。



 それにしても、これで自分がもしも勇者に選ばれたりたら、勇者がロボという‥‥これはあれだな?追加兵装と合体して大型ロボに変形しなきゃダメな奴だな。あと2ndマシンにも乗り換える形にしておかなければならないだろう‥‥最重要な点としては1stマシンと合体して名前にグレートなりつけて変えなきゃいけないって点だな。そこは譲れない重要なポイントだ。その点なくして勇者がロボという事は認められる訳がないだろう。もちろん、ロボキャラのお約束としては別キャラはそういう仕様で作ってあるしな。そういや、キャラチェンできたっけ?いや、それよりも次に重要な点として、そうなってくると支援メカともなる仲間ロボとかが欲しくなるな‥‥そういや、サポートユニットとして各キャラ人数分配置したユニットがあったな。ただ、サポートユニットの一部除いてほとんどは人型にしてないからなぁ‥‥獣姿をロボにするのもアリだろ?と、惑星がZとかいう所を模して、そいつらも機械生命体で作っちまったからなぁ‥‥あいつら3体合わせで1体の合体ロボができる様には設計仕様はしてあるし。よし、勇者がロボになったら、とりあえずの当面はそれで抑えておくとして‥‥って、おっと、もう到着か?



 などと、脳内で勇者がロボのRPプレイの妄想全開しながら、流されるままに選択の間に連れてこられた召喚された人たちと自分。

 道中、妄想全開しながら、自分以外の召喚人が話込んでいるのを何気に聞いていたのだが、ふと、ヴァーチャルな世界というか、現実味?みたいな感じがヒシヒシと感じ始めてはいた。


 召喚された学生さんたちは事故に遭遇してるらしいし、スーツ姿の女性の方も同じ。割烹着の兄さんも、これまた事故による巻き込まれでという‥‥


 アレ?それって数年前・・・に起きた火災による崩落事故の奴ですよね‥‥?アレ?


 たしか、一時ニュースで大々的にやってて、火災から逃げ遅れた人が倒壊に巻き込まれてお店ごとペチャンコという、防火装置の不備やら耐火性能の不備やらとかで連日ニュースなどで取り上げられていたぐらいの、現場はかなりひどい状況だったとかいう事故内容にそっくりすぎて、えっ?という内容を話していた。

 そして、なぜに連日ニュースになっていたかといえば、防犯カメラに写っていたはずの人数と、遺体の数が合わないという不思議な事が起きており、実際にはっきりと写っていたのにも関わらずにだ。

 そして、行方不明扱いになったとかで、ネットでも本当はいなかった説やカメラのゴミとか、日付間違った説とかいろいろと話題を呼んでいた為に、記憶に残っていた。

 そういえば、その行方不明になったと思われるのは、学生四人と大人二人とかだったはず……まっさかぁ……けど、状況は完全に一致というレベルではまり込むし、これじゃぁ、どこかの海と大地の間に飛ばされた的な状況とかになるのか?

 いや、それは無いやろ、いや、あったらあったで、そんな世界ならマシンがあったりして、それならもう最高なんだけどなぁと、勝手な妄想に走っていたのだが



 「あなたの場合は?」と…、その話の矛先が自分に向けられていた。



 何気にそういう話を、こんな空気の中で、"ゲームする為にログインしただけ"とか言っていいものか。

 いや、何もいわなくてもいいかと、ここはダンマリで通しておく。

 まぁ、ここまで一言も話していないのが功を奏してよかったのか、学生からは「何だよあいつ」と何も言わない事に文句を言われたりしたが、大人の二人からは、「言いたくない事もあるでしょう」と宥められていた。


 というか、これもうリアルな世界でいいんだろうか?目の前にいる6人は、よくある死亡事故的な内容からの転移とかいう、某テンプレ的な内容にそっくりであるし、そんな中、自分と言えばVRMMOのキャラの姿でここに存在しているという訳なのが、何とも確定材料としては乏しい。


 確認してみようと、頬をつね…れないから、ログアウトなどが無いかと、いつも通りの操作をしてみても、ログアウトの文字そのものすら存在すらしていないという。

 あるぇ?VRの世界に閉じ込められた的な要素があるなら、ログアウトの表示があるけど、選択できないってやつなんだろうけど、その項目すらない。

 これだと、この状況が現実なのか仮想なのかすら判断出来ない。


 周りの召喚された人物たちが本当にそうだとしたら、自身だって生身でという話になる訳で、そうなると実はガワだけで、中身生物ナマモノという代物という事だってあり得るわけだし‥…どういう状況なのかが判断がしづらさすぎる。



 そんな中、宣託の間に到着する。



 その間は、仰々しいといえた。

 なにせ、周囲には鎧甲冑の兵隊さんたちにダボダボな服を着ている人までスタンバってるとでもいう状況で、仰々しいというか物々しいというか、そんな中で先ほど案内していた女性から


「では、お一人づつ、あの水晶へと触れてください」


 そう促されるままに、まずは学生さんたちが一人一人水晶っぽい球へと触れていく。

 一人が触ると赤く光り、次の学生さんは青く光り、次は緑に光り、黄色に光りと、それぞれの色が違っていたりするのだが、なにかその宣託の間の水晶の傍にいる人がいうには「素晴らしい魔力の素養をお持ちです」という事らしい。


 けれど、どう聞いても勇者という言葉を聞くことはなかった。

 つまり勇者ではないけれど、かなりの実力者であるという事で良いのだろうか?


 そんな周囲の反応と自身の考えをしている中、今度はスーツ姿の女性の番になり、まるで恐る恐ると触れる格好で水晶へとその右手が触れると、今度は先ほどとは一転して、水晶が強い光を放ち始めた。それも純白に。


 周りの人たちもざわつき始め、「勇者様だ…」「勇者様がおられた」ざわつきが始まる。

 これは勇者様確定したか?と思いながら、続いて割烹着の兄さんがその推奨に触れると、先ほどと同じ様に、純白の強い光を放ち始めていた。



 周囲からも「おぉぉぉ!」「お二人もおられるのか!?」というどよめきまで上がっている始末だ。



「勇者様がお二人も‥‥」


 いや、小声で言われても聞こえてますから、自分の聴音機能ではっきりと。

 とりあえず、あの光が出れば勇者確定が明らかな様だ。

 そして、ついに最後となる自分の番が訪れ、周りが見守る中、その水晶球に触れてみると…




 触れて…


 ん?触れて……





 何も反応しやがらない。

 もうね、触れても撫でてもコロコロしようと思ったら止められたが、なにも反応しない。



 この水晶球の計測機?みたいなので各人の魔力というもの?を測定する器具っていうのは、勇者以外にも魔力の有無も測定するものらしいのだが、反応が一切ない、ということは‥‥魔力が無いという事にイコールでつながる。




 つまり、自分は"魔力無し"をたたき出したという事で‥‥





 よっしゃぁぁぁぁぁ!

 勇者とかはオマケ程度というかどうでいいわ!!

 ああぁ、ついに念願のモノホンの機械生命体になれたんだよな?と。

 もう心の中でガッツポーズまでして感動してしまった。

 現実でもヴァーチャルでもどっちでもいいよもう。

 生身の彼らに魔力があって、この姿の自分に魔力が無い。

 つまりこの瞬間、あのVRMMO世界観設定のまま、ちゃんと魔力無しの機械生命体としているって事が確定的に明らかになったわけだ!



 つまり、ロボだよ?ロボ!!

 念願だったんだよ?機械の身体になれるなんて最高じゃないか!

 しかも設定どおりに魔力無しとか、こりゃもうロボRPしてもいいんだよね?

 いいよね?


 ならば、ここまでついつい無口キャラでRPしてたし、このままでもアリかも?

 しかしそれではコミュニケーションがとりづらいだろう、やはり言葉は必要だ。

 そうなると、喋る時は目を光らせるべきだろうか?

 というか、発光方法ってどうやんだ?

 それが解るまでは人前で喋るのは禁止だな。うむ。



 などと、今の今迄一言も言葉を話さず、状況が状況で何もわからないままで、確信も得られていないままで、もしかしたら?もしかして?という疑心暗鬼な一面から一転し、自分の趣味爆発させて感動していたのだが、そんな自分の空気とは裏腹に、現地人の人達から、何か冷たい視線が投げかけられている事も知らずにいた。




 このとき、気づいていればよかったかもしれない‥‥




 お約束?なのか、魔力が無い=無能というか、役立たずというレッテルを貼られ、路銀ともいえる端金だけ渡され、さっさと放り出される始末であった。




 そして、一人寂しくポツンとたたずみながら




「ワァオ‥‥テンプレ オツ‥‥」



 と、このときボソッと放った初めての独り言が、機械音声と目が光るという事が発覚し、放り出された事よりも、そっちの方に感動した自分がいた。




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