監獄
五条アキタダ 死刑囚 彼はまだずいぶんと若い
おそろしく整った歯並びに、雪のような純白のはだは、
漆黒の黒髪をコントラストで また非の打ち所のない整った
顔立ちは もう見ているものをくるわせてしまいそうである。
死刑囚は周知のとおり おおかた模範囚であり、かれもまた
寡黙な性格もあって、みなから好感をもって迎え入れられている
その日もかれといつものメンバーは卓を囲み おだやかな談笑
をしていた。五条は好感を越えて どこかセクシャリティに
ひとを惹きつける さながら宿命のようなものを持っている
それは看守も例外ではない 一人を除いては。
五条はその看守とだけは 折り合わない。
その看守はややつらくあたってくる。もちろん五条はすべて、
理解のうえである。
いつもより時間を切り上げて 看守は独居に皆を促す
みな、かなしそうな目で五条をみつめる。ことばの外に
憐憫でいっぱいである。
全員が独居に戻った一時間後、5人の看守と一人の責任者が
五条の独居にはいり、文書をよみあげた。
そののち拘束具をはめにかかる。ほとんど五条は反応しない。
ちょうど一本のうでに一人の看守、一本の足にまた一人の看守
という具合にくる。抵抗などしないな、そう思われたとき、
五条は突然 あの折り合わない看守の首の後ろへ手をまわし、
床へねじふせようとする。むろん看守は抵抗するし、大声で
怒声をはりあげたが、まわりの看守はなにやら、紅潮したかおで
応答せず、そのまま ついに怒声をもう狂ったように叫ぶ
看守は拘束具をはめられかけている。迅速に五条は脱衣し
うまく、叫びつづける看守の服を脱がせる。
五条はその”看守”の死刑執行に立ち会ったのち、その
あとの、これからの己の人生をおもいながら、その場を
立ち去っていった。
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